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クラウドに興味ありな開発者なら、3ステップで楽々Azureに移行 第2回

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.NET on Windows Azure でクラウド・アプリケーション開発

2010年11月25日 15時00分更新

文● 飯島進仁/ふむふむソフト

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Silverlight 4開発環境も整えてしまおう

 実は同様の手順でSilverlight 4の開発環境も実現できる。SilverlightもWindows Azure Platformと同じく開発者にとってはぜひチャレンジしたいプラットフォームなので、この際一緒に開発環境を整えてしまおう。

 Silverlightは、Webブラウザーにプラグインをインストールすることで、従来のHTMLでは不可能なリッチUIを実現するプラットフォームだ。バージョンを重ねるごとに機能が追加、強化されており、現在の最新版Silverlight 4では多くの新機能が追加されている。

 詳細はこちらのページをご覧いただきたいが、Webカメラのサポートやドラッグ&ドロップ操作の実現、印刷サポートやブラウザー外実行など、一般的なWebアプリケーションの限界を超える、見逃せない機能が多数実現されている。

 ではSilverlight 4の開発環境のインストールについて説明しよう。

「Silverlight 開発者向けランタイム」のインストール

Silverlight開発者向けランタイムのダウンロード用ダイアログ

Silverlight開発者向けランタイムのダウンロード用ダイアログ

 Windows Azure クラウド サービスと同じく、Visual Web Developer 2010 Expressを起動し、「Visual Basic」あるいは「Visual C#」を選択し、今度は「Silverlight」を選択する。続いてとりあえず「Silverlightアプリケーション」を選択しよう。

 すると、以下のようなダイアログ画面が表示されるので、リンクをクリックすると、「Silverlight開発者ランタイム」のインストーラーのダウンロードが開始されるので、ダウンロードして実行しよう。

 すでにVisual Studioをお使いの方は、こちらから「Silverlight開発者ランタイム」をインストールしよう

 無事インストールが完了すれば、Silverlightのプロジェクトが作成可能となる。

Silverlight開発者向けランタイムのプロジェクト選択

Silverlight開発者向けランタイムのプロジェクト選択

「Windows Azure Platform」+「Silverlight 4」で
どんなものが開発できる?

 以上の手順でWindows Azure Platformを使ったクラウドサービス、そしてSilverlight 4を使ったアプリケーションが開発可能となった。この開発環境を使って、どのようなアプリケーションあるいはサービスが作れるのだろうか?

 Silverlight 4について考えてみると、例えばブラウザー外実行やドラッグ&ドロップ機能を生かして、あたかもオンプレミスな(従来のインストール型の)Windowsアプリケーションのようにふるまうデスクトップツールを作ったり、あるいはWebカメラを使ったコミュニケーションツールを作ったり、といったことが考えられるだろう。

 また、印刷もサポートもされているので、帳票等を扱う業務アプリケーションも作成可能だ。

Silverlight 4のさまざまな新機能

Silverlight 4のさまざまな新機能

 しかし、Silverlightはあくまでもクライアント側のテクノロジーであり、Webサービスとしてユーザーの認証やデータの保存といったバックエンド側の機能を実現するには、CGI等のサーバー側プログラムも必要となる。

 このサーバー側のプラットフォームとして、Windows Azure Platformを使ってみたい。

なぜ「Windows Azure Platform」なのか?

 Windows Azure Platformを使うことによって、さまざまなメリットが考えられる。どのような状況で、またどのようなものを作るかで変わってくるだろうが、筆者が考えるメリットは以下のようなものだ。

1. ASP.NETでの開発経験が活用できる

 ASP.NETとは、.NET Frameworkに対応したマイクロソフトのWebテクノロジーのいわば“基礎”に当たる開発環境だが、Windows Azureもまた同様にASP.NETを基本としている。


 したがって、ASP.NETでのアプリケーション開発を経験していれば、Windows Azure Platformでの開発も容易に理解できる。今回の記事ではASP.NETそのものの開発についての解説は割愛させていただくが、Visual Studioを利用したASP.NETによるWeb開発は極めて効率的なので、その手法がそのままクラウド環境でも活かせるメリットは大きい。

2. Silverlight、Windows Azure、どちらも同じ言語(VB、C#)で開発できる

 通常のWebアプリケーションでは、例えばサーバー側がPHPやPerlによるCGIで、ブラウザー側がAJAX(JavaScript)、といったように、それぞれ違う言語で開発を行なう必要があり、開発環境もそれぞれ別になる。

 その点、「Silverlight+Windows Azure」なら、どちらもC#やVB、さらには統合開発環境であるVisual Studioで開発が可能なので、これから始める方でもマスターしやすいと言えるだろう。

3. クライアント(Silverlight)とサーバー(Windows Azure、ASP.NET)間の通信が容易

 やや細かい話になるが、一般的にAJAXやFlash等のクライアント側と、サーバー側の通信はそれぞれ独自に実装する必要があり、さらに前述のように開発言語も異なるため、すり合わせに苦労するケースが多い。

 しかし、ASP.NET、Silverlight、Windows Azure Platformの基礎テクノロジーである.NET FrameworkにはWCF(Windows Communication Foundation)という機能が用意されている。これを利用することによって、すべての通信ロジックを共通化することも可能になるため、開発が容易になる。

 通信内容が複雑化するような場合、特にありがたいメリットだと言えるだろう。

4. クラウド環境ならWeb公開の敷居が低い

 Webサービスを公開する場合、例えばサーバー業者でレンタルサーバーを借りる、あるいは自前でサーバーを用意する必要があるが、いずれも想定されるPV(アクセス頻度)等によってサーバーの規模や、ハードウェアの選定にも一苦労、ということが多い。

 その点、クラウドであるWindows Azure Platformなら、まずは最低限の規模でサービスを開始し、その後にPVの増大などでサーバー負荷が上がった場合には、サーバーのリソース配分を上げていく、という柔軟な対応が可能だ。

 ――このように、サーバー側の開発プラットフォームとしてWindows Azure Platformを使うメリットは多く存在するので、もし導入するサーバー環境について検討しているのなら、これを機にぜひ候補のひとつとして考えてみてはいかがだろうか?

次回、こんなアプリケーション開発に挑戦する!

 今回は開発環境の説明や、Windows Azure PlatformやSilverlight 4の基本的な部分についての説明に終始してしまったが、次回いよいよ実際のアプリケーション開発を行なっていく。

 本稿で作成する予定のアプリケーションは、「Web対応のメモ帳」だ。

 基本的な機能としては、データをWindows Azure上に保存することで、Webサイトに繋がるマシンからなら、いつでもそのデータを参照できるサービスだが、さらにSilverlight 4のRichTextBoxを使って書式を指定できたり、ドラッグ&ドロップで画像の貼り込みもできるような機能を持たせるつもりだ。

筆者が構想中のサンプル画面

筆者が構想中のサンプル画面

 Silverlight 4ならではの、そしてWindows Azure Platformのメリットを生かしたマルチデバイス対応のアプリケーションに仕上げるつもりなのでお楽しみに!


著者:飯島進仁(いいじま しんじ)

shinji iijima

株式会社 ふむふむソフト代表取締役。 業務委託でのソフトウェアやWeb開発をメインとして、企画、制作、執筆、開発と全然関係ない講演や制作など、さまざまな依頼にお応えする業務を行なっている。Silverlightなどを使った地味な研究や、一部の方々に好評なガジェットなどをブログにて公開中。

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