マイクロソフトが同社製品を扱うパートナーに対して実施中のプログラムが、10月に大きく変更される。この連載では、マイクロソフトのパートナーや開発者支援の体制を取材しつつ、今年のマイクロソフトの動向を明らかにしていく。今回はパートナー戦略本部シニアマーケティングスペシャリストの草賀章宏氏に話を聞いた。
今回のパートナー制度改革の目玉のひとつが、マイクロソフトのソフトウェア開発支援プログラムである「Microsoft Platform Ready」(略称:MPR)だ。これは、通常の開発者支援とは異なり、マイクロソフトのパートナーを前提にしたソフトウェア開発支援プログラムという特徴を持つ。具体的なプログラムの内容を解説するまえに、新しいパートナー制度を先に解説しておくことにしよう。というのもこのMPRは、新しいパートナー制度である「Microsoft Partner Network」(略称:MPN)に対応して生まれたプログラムだからだ。
Azureでビジネスするなら、入り口はMPN
――そしてPinPointへ
従来のマイクロソフトのパートナー制度は、同社の製品を扱う企業がマイクロソフトと契約し、その実績(パートナーポイント)に応じて、「認定パートナー」「認定ゴールドパートナー」など、上位の有償プログラムに参加できるというものだった。しかし、新しいパートナー制度は、参加企業の得意分野や専門性などを登録し、分野ごとに他の参加企業と差別化する形へと変更された(図1)。
新しいパートナー制度では、マイクロソフトが定めた分野(コンピテンシーと呼ぶ)ごとに条件が設定される。パートナーは自社の得意(専門的)なビジネス範囲などに応じて、各コンピテンシーを取得する。コンピテンシーを取得することは、つまり該当分野でビジネスを行なう企業として認識されるわけだ。
こうした構造に変更したのは、日本でも「PinPoint」と呼ばれるパートナー向けサービスが開始されるからだ(図2)。すでに米国では開始されているPinPointは、マイクロソフトのパートナーを企業間やユーザー向けに紹介するマッチングサービスだ。例えば、システム構築やシステム開発などを必要とする企業が、このPinPointから地域や特徴をベースに企業を検索できる。
そのために必要になるのは、各パートナーの得意ビジネス分野とそれが一定の水準に達しているかどうかの見極めだ。そこで作られたのがコンピテンシーである。コンピテンシーには、以下のようなものがある(表1)。簡単に言うとコンピテンシーとは、ユーザーから確認できる専門性の証明である。
このパートナーネットワークは、基本的にどんな企業でも参加することができる。特にマイクロソフト製品の再販売権を持っている必要もない。ただし、個人の参加は認められず、企業としての参加のみ可能だ。企業はまず、“コミュニティパートナー”と呼ばれる無料のメンバーとして参加する。一定の条件を満たしてコンピテンシーを取得すると、“コンピテンシーパートナー”となる。コミュニティパートナーには、情報提供などのベーシックなサービスが提供される。コンピテンシーを取得することで、パートナー向けのさまざまなサービスや特典(例えば、無償ソフトウェアライセンスやMSDN Premium Subscription)が受けられるわけだ。
なお、パートナーネットワークにはこのほかに、有償の“サブスクリプションパートナー”という制度も用意されており、コミュニティパートナーでは利用できないサービスをコンピテンシーパートナーになる前に利用することも可能だ。
コンピテンシーは主に以下の条件で取得できるようになっている。
- 対象マイクロソフト製品の認定技術者資格の取得人数
- 対象マイクロソフト製品に対応したアプリケーション(ソフトウェア製品)を保有し、マイクロソフトが提供する検証ツールをクリアすること
- 顧客事例
それぞれのコンピテンシーにSilverとGoldが用意され、そのコンピテンシーの重み付けで上位のパートナーシップ(Gold)が設定されている。なお、細かい条件はコンピテンシーごとに定められているので、詳細は同社サイトでご確認いただきたい。
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