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シトリックスがデスクトップ仮想化市場に新製品投入

シトリックスの「XenClient」でデスクトップは変わる?

2010年09月28日 06時00分更新

文● 渡邉利和

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9月27日、シトリックス・システムズ・ジャパンはデスクトップ仮想化製品の新バージョン「Citrix XenDesktop 4 Feature Pack 2」を発表した。発売開始は9月末の予定。以前から予告されていたクライアントハイパーバイザ「XenClient」が正式搭載される。

仮想化技術+アプリケーション配信=?

 XenDesktopは、シトリックスが長年熟成を重ねてきたアプリケーション配信技術を活用したデスクトップ環境の仮想化プラットフォーム製品で、デスクトップ/アプリケーションを仮想化するための多彩な機能を実装する。そして、今回加わったXenClientは、オープンソース版「Xen」および同社製品として提供される「XenServer」の技術に基づくクライアント向けハイパーバイザとなる。XenDesktopと組み合わせることで、ユーザーのPC上に仮想OS環境を配信することができる。また、ユーザーのPC上で複数の異なるOS環境を切り替えて利用できるなど、仮想化技術のメリットをクライアント上で享受できる。

シトリックス・システムズ・ジャパン 副社長 木村 裕之氏

 また、同時に「XenVault」の提供も開始される。XenVaultは個人所有のノートPCなどを業務利用する際に活用することが想定されるプラグインソフトウェアで、クライアントPC上に暗号化された安全なストレージ領域を確保し、業務データ等をそこに保存することでデータを保護し、情報漏えいなどを防ぐことに役立つ。同社の副社長の木村 裕之氏はXenVaultの機能を端的に「多くの企業で課題となっていた“PCの社外持ち出し禁止”という制約をXenClientで解決できる」とした。

 同氏は今回のCitrix XenDesktop 4 Feature Pack 2(FP2)の発表について、「従来、MetaFrameからPresentation Server、XenAppと受け継がれてきたターミナルサービス型のシン・クライアント・ソリューション、仮想デスクトップ環境を実現するホスト側でのVDI(仮想PC型ソリューション)を実現するXenDesktopを提供していた。今回新たにオフラインでも使用可能な仮想化ソリューションであるXenClientが加わったことで、シトリックスのフルラインナップが完成した」と述べた。

XenClientとXenVaultはどこが違う?

 続いて登壇した同社のマーケティング本部 担当部長の北瀬 公彦氏は、XenClientおよびXenVaultの詳細について説明した。

シトリックス・システムズ・ジャパン マーケティング本部 担当部長 北瀬 公彦氏

 同氏はまず、「ワールドワイドで全クライアントPCの72%がノートPC」というデータを紹介し、日本ではオフィススペースの制約等もあってもっと高率ではないかと指摘した。その上で、「モバイル性は生産性を向上させるための戦略的な急務であると見なされている」という見解を述べた上で、ノートPCを持ち出すことにはさまざまなリスクが伴うことを指摘した。

 今回新たに追加されたXenClientとXenVaultという2つのコンポーネントは、大きく「企業資産としてのノートPC向け」(XenClient)と「ユーザー所有のノートPC向け」(XenVault)として性格分けが行なわれているという。XenClientはクライアントPC向けのベアメタルハイパーバイザだが、まずはインテルのvProに対応したノートPCを対象環境としている。一方、XenVaultではノートPC向けの情報漏えい対策と位置づけられ、Citrix Recieverのプラグインとして提供される。

XenDesktopで提供されるXenClientとXenValut

 XenClientは、サーバー側で動作するコンポーネントである「Synchronizer for XenClient」と連携することで、ローカルで稼働している仮想OSイメージに対する変更を自動的にサーバ側にバックアップすることが可能。最新のイメージがサーバ側で保存されているので、ユーザーはサーバ側の仮想OS環境(VMイメージ)をダウンロードすることでいつでも自身の作業環境を復旧でき、クライアントPCのハードウェア障害やソフトウェア的な環境破壊などの際にも迅速に作業環境を復旧できる。

 また、クライアントPC上でWindows XPとWindows 7のように異なるバージョンのOSを混在利用することもできるようになる。ホットキー操作で瞬時に画面を切り替えて複数のOS環境を自由に作業できることに加え、一方のOS環境で起動したアプリケーションの画面を他方のOS上に表示させるといったことも可能になる。これを利用すれば、たとえばWindows 7に未対応のアプリケーションをWindows XP上で動作させつつ、作業自体はWindows 7環境上で行なう、といった柔軟な作業環境が構築できるという。

 一方、XenVaultは暗号化ストレージ機能なのだが、XenDesktopの管理体系と連携することでIT担当者がサーバ側から集中管理できる点が特徴となる。XenDesktopの機能を使ってサーバ側から配信された業務アプリケーションがローカルにデータを保存する場合には、管理者の設定によってXenVaultが確保した暗号化領域にのみデータの書き出しを許可する、といった制限を加えることが可能だ。また、暗号化領域のデータをリモートからロックしたり、あらかじめ定めた有効期限を越えたらアクセスできなくするといった機能も備える。XenVaultが稼働するクライアントPCでは、ユーザーがWindowsにログインした際にXenVaultのパスワード入力を求められるようになり、ここで正しいパスワードを入力しないとXenVaultが保護するデータにはアクセスできなくなるので、業務データを保存したノートPCを紛失した場合でも情報漏えいを防ぐことができる。

(次ページ、対応ハードウェアの拡大が今後の課題?)


 

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