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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第121回

アナログ放送終了まであと1年 電波は止められるのか

2010年07月21日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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電波を止めるならホワイトスペースの開放を

 このように2011年7月の段階では、どう楽観的にみても500万世帯以上にアナログテレビが残り、大量に「地デジ難民」が出ることが予想される。この状態で電波を止めるべきだろうか? 世界各国にも500万世帯も残したまま放送サービスを打ち切った前例はなく、アメリカではアナログ放送終了を2度にわたって延期した。拙著『新・電波利権』でも書いたように、7月24日という日付は郵政省と大蔵省の取引によって決まったもので、技術的な必然性はない。

 このため日本でも専門家が、アナログ放送停止の延期を求める提言を発表した。彼らはアナログ放送の「跡地」となるVHF帯を利用する「マルチメディア放送」はビジネスとして見込みがないので、アナログ停波を急ぐ必要がないと主張している。たしかに現状のまま停波を強行することには問題が多いが、そのメリットは小さくない。

 重要なのはVHF帯ではなく、UHF帯のホワイトスペースが使えるようになることだ。現在のアナログ放送の電波は干渉に弱いため、チャンネルが空いていても、ほかの用途に使えない。アナログ放送が止まると、デジタル放送の中継局は干渉に強いので、空いているチャンネルを無線LANなどに使うことができ、最大200MHzの周波数が利用可能になる。これによって開放される帯域は700MHz帯も含めると300MHz以上にのぼる。

 これは今、UHF帯で携帯電話の使っている帯域を上回り、時価3兆円以上の価値がある。これを次世代携帯(LTE)や無線LAN(関連記事)などに開放すれば、今の携帯電話に匹敵する新たな産業が生まれる可能性もある。その帯域の一部を周波数オークションにかければ、500万世帯に配るチューナーの費用300億円も楽に捻出できる。

 地方民放の延命のために数千億円の国費を投入して行なわれた地デジは、日本の歴史に残る愚かな公共事業であり、テレビ離れを促進して瀕死の放送業者の死を早めるだけだろう。地デジには何の意味もないが、アナログ放送の終了には大きな意味がある。500万世帯以上に犠牲を強いるなら、放送業者がわずか7チャンネルのために50チャンネルもふさいできた貴重な電波を開放し、放送局からネットビジネスへの新陳代謝を進めることが、アナログ停波の絶対条件である。

筆者紹介──池田信夫


1953年、京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退社後、学術博士(慶應義塾大学)。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は株式会社アゴラブックス代表取締役、上武大学経営情報学部教授。著書に『使える経済書100冊』『希望を捨てる勇気』など。「池田信夫blog」のほか、言論サイト「アゴラ」を主宰。

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