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池田信夫の「サイバーリバタリアン」第124回

電波開放から始まる「日本的合意」の崩壊

2010年09月01日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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やっと周波数オークションに動き始めた総務省

 総務省は「次期電波利用料の見直しに関する基本方針」についての研究会で、周波数オークションの導入を検討する方針を打ち出した。また「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ(WG)」では、移動通信などに1.5GHzを確保する方針を出し、総務省はこれを受けて11月に新たな「周波数再編の実施方針(アクションプラン)」を策定する予定だ。

総務省の資料から。「電波の公平かつ能率的な利用、免許手続きの透明性確保等の観点から、市場原理を活用するオークション導入は十分検討に値するもの」とオークションについて、肯定的に表現されている

 これは地味なニュースだが、今後の日本の情報通信業界を大きく左右するだろう。通信の主流が有線から無線に移る中で、ボトルネックはきわめて非効率に使われている電波であり、これを新しい企業に開放することによって、日本経済も活性化する。周波数オークションは「電波の経済的価値を適切に反映する」ためではなく、裁量的な審査によって既存企業に免許を与えるバイアスをなくし、新規参入を促進するために行なうのである。

 しかし各論になると、まだまだ裁量行政が残っている。VHF帯の「携帯向けマルチメディア放送」について、電波監理審議会は答申を出せず、また「ヒアリング」を行なうことになった。これについての民主党の勉強会での総務省情報流通行政局の大橋秀行総務課長の答は正直でおもしろい:

審議会に対して諮問し答申をいただきますけれども、これは私どもの評価ということを審議会にお諮りして答申をいただくということでありますから、要するに評価は私どもの方でいたします。そのうえで第三者的な立場の方々にも専門的な何がしかの立ち位置・立場からご意見をいただくということであります……

 審議会の答申は形式だけのことで、実際には諮問する官僚が決めるのだ――これは霞ヶ関の常識だが、それを当の事務方が公言するのは珍しい。それなら審議会を開くのは税金と時間の無駄づかいだし、何も決めない審議会のためにヒアリングを開くのは、さらに無駄づかいである。

 このように審議会を隠れ蓑にして、官僚の裁量によって特定の業者に便宜供与し、それと交換に天下りポストを確保するのが、霞ヶ関の伝統的な手法だ。ところが今回のVHF帯では、クアルコムがアメリカ政府の政治的圧力を背景に粘り、途中で政権交代して民主党が周波数オークションを主張したため、総務省の筋書きが狂ってしまった。

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