「誰か俺を紹介しろ!」と思ったので自分で紹介
―― ところで初代のVOCALOIDアンダーグランドカタログの編者はヒッキーPだと聞いているのですが。
ヒッキーP 最初に「エヘヘ、僕の自演だよ」※って言ってれば良かったんですけどね。上げはじめたころは完全にひとりっきりで、バラしたところで「お前は誰?」という状況だったので。今となっては影響力を持っているので、言い出すチャンスもなかったんですが。ただ、知り合いがまったくいなかったからこそ、作りやすかったという面はあります。
※ 僕の自演 : アンダーグラウンド・カタログPART1の中で自分の曲も紹介
―― ボカロ作品を投稿しつつ、アンダーグラウンドカタログを作り始めたのは19歳ですよね? それはすごいバイタリティだと思うんですよ。
ヒッキーP いろんな動画を探していたら、こんなおもろい人たちがいるのに、再生数が偏っていてもったいないなあと。それに僕自身の作品を紹介してくれる動画がまったくなかったので、そういう動画があったらいいと妄想していたんです。「誰か俺を紹介しろ!」と。
―― それは正しいアプローチですよ。今みんなに足りないものを考えて、それが自分のプラスにもなるという。
ヒッキーP 自己満足なんだけど、「自己プラス誰か満足」になっていて欲しいと思っていました。ただ「アングラ」コミュニティを作りたいとは思っていなかったわけですよ。そういうふうにくくられちゃうのかと思うと残念なんです。今ならそのアングラなくくりにも入らない、誰も知らない面白い曲もあるはずなのに。
―― アングラと言われると僕らおっさんは、すぐに天井桟敷とか山海塾とか想像しちゃうから……すみません。
ヒッキーP 表に出てきていない人で、面白い人を見つけられたらいいかな、くらいの意味でつけたんですけど、甘かったんですかね。当時はひねくれてて、どこか変な倒錯がある人、こだわりがある人の割合を今より高く感じたんですね。その伸びない動画の中に、とてつもない可能性があるんじゃないかと思っていた。わかりやすい記号がないと、伸びなかった時期だったんで。
―― アンダーグラウンド・カタログはどういうポリシーで編集していたんですか?
ヒッキーP ある意味自分の音楽をつくるとき以上にポリシーは明確にあるんです。どの曲をどのタイミングで何秒切り出せば、惰性に陥らないで済むかなとか。いつも聴いている人が途中で動画を閉じてしまわないように意識してつくったんです。その曲順にしっくりハマらないと、たとえどんなに紹介したい曲でも外すこともありました。だからアンダーグラウンドカタログに入らなかったことで傷ついている人がいたら不本意なので、ここは言っておきたいところなんです。
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