3月10日、リバーベッドテクノロジー(以下、リバーベッドは、WAN高速化装置「Steelhead 7500」とパフォーマンス分析ソリューション「Cascade 8.4」の発表会を開催した。より速く、より深くをパフォーマンスをきわめるリバーベッドの本気度が伺えた
パフォーマンスにフォーカスする
リバーベッドの立ち位置
「リバーベッドはITのパフォーマンス企業です」。リバーベッドテクノロジーのマーケティングマネージャー 伊藤信氏は、WAN高速化装置の専業ベンダーから若干変わった同社の立ち位置をこう表現し、WAN高速化の技術をベースにした同社の製品の幅広い効能を説明した。アプリケーションのレスポンスを向上させ、仮想化やシステム統合化のメリットを最大化させ、社員の生産性向上やコスト削減を図る。さらに新たに加わったCascadeにより、アプリケーションパフォーマンスの可視化と最適化まで実現化する。昨今では、クラウドとユーザー間のパフォーマンスギャップを埋めるべく、データセンター戦略にも力を入れている。確かに、ここまでパフォーマンスにフォーカスしているベンダーは、なかなかいないだろう。
そんな同社が今回発表したのが、Steelhead 7050とCascade 8.4になる。発表会では、Steelhead 7500についてはシニアテクニカルコンサルタントの寺前滋人氏、Cascade 8.4については同じくシニアテクニカルコンサルタントの石井勝徳氏がそれぞれ説明を行なった。
潤沢なハードウェアで
高スループットを実現する
まずSteelhead 7050は、同社のWAN高速化装置としてはハイエンドとなるモデルで、データセンター間のディザスタリカバリに完全にフォーカスしている。ギガバイトクラスのデータで一対一でやり取りする用途を想定しており、ディザスタリカバリにかかる時間の短縮を図る。
モデルはLとMの2つがあり、ともに3U筐体ながら、搭載するストレージやメモリー容量が異なる。
Steelhead 7050では、高速化や信頼性強化のための工夫をいくつも施している。システムとしては、12コアのCPUや大容量のメモリ(32GB/48GB)などかなり潤沢なハードウェアを採用した。また、ストレージは3.5インチだったドライブベイを2.5インチに変更し、HDDではなく160GBのSSDを14/28個搭載。SSDの採用により、信頼性やパフォーマンスは大きく向上した。
また、キャッシュのデータ保護に関しては、「Fault Tolerant Segstore」というデータ保護技術を導入した。今までデータ保護のためにはRAID10を用いていたが、複数HDDの障害には対応できず、リビルドにも時間がかかっていた。Steelhead 7500ではFTSを用いることで、複数のHDD障害でもデータを保護することが可能になり、障害時も2分程度でオンライン状態にできるという。「利用開始時にはすでにキャッシュが有効な状態(ウォームキャッシュ)で利用したいというユーザーさんは多い。こうしたユーザーさんの場合は、キャッシュであっても確実に保護する必要性がある」(寺前氏)とのこと。
さらにストレージやCPU、メモリの利用をダイナミックに変更する「Adaptive-SDR」、フローごとの「SDR-M」といったRiOSの機能もディザスタリカバリに有効だという。たとえばスループットを得たい場合はメモリのみを利用し、大きなデータ削減効果を得たい場合はHDDを用いるといった最適化を動的に行なう。
こうした各種の工夫の結果、「下位のSteelhead 6050に比べてパフォーマンスは3倍以上、接続数も倍に向上している」(寺前氏)とのこと。さらに専用ロードバランサーの「Interceptor」でクラスタ化することで、最大12Gbpsのスループットを実現するという。
パフォーマンスの可視化を提供する
Cascade 8.4
一方のCascadeはパフォーマンスの分析と可視化を実現する製品で、マズー・ネットワークの買収により、同社のラインナップに加わったもの。「多くの顧客は、WAN高速化装置で、どれくらい速くなっているかわからないとおっしゃいます。これに対して性能をアプリケーションレベルで評価し、ユーザーの使用感が把握できるのが、Cascadeの強み」(伊藤氏)とのことで、WAN上での遅延を削減するSteelheadを補完する位置づけとなる。
Cascadeはレポーティングだけではなく、パフォーマンスの劣化に対して事前にアラートを上げたり、障害の予兆を検知することができる。「単にグラフを表示するだけではなく、プロファイリングまで行なう」(石井氏)のもCascadeのメリットといえる。
このCascadeはトラフィックの挙動を動的に学習する点が特徴的だ。従来の「アプリケーションの性能を監視するのに固定のしきい値は有効ではない。誤検知を「通常の状態」がなにかを管理者が判断しなければならない」(石井氏)ということで、敷居が高い。これに対して、Cascadeでは、通常と異なる状態遷移を自動的に検出し、それをトリガーに警告を上げるという。
さらにCascadeは、パフォーマンス劣化等の原因をアプリケーションやサーバー、ユーザーのレベルまで深掘りできる「ネットワークドリルダウン」機能や、エージェントソフトなしにアプリケーションやサーバー、クライアントの依存関係を明示する「エンドツーエンド ディペンデンシー マッピング」なども搭載している。
新バージョンの8.4では、アプリケーションパフォーマンスの評価指標を強化し、エンドユーザーの使用感を表すユーザー接続スループットやアプリケーションスループット、接続時間などが追加された。また、Steelheadアプライアンスの仮想パーティションであるRSP(Riverbed Services Platform)上で動作する仮想イメージ「Cascade Sensor-VE」の提供も開始した。
Cascade製品はゲートウェイとセンサー、プロファイラなどの製品群から構成される。ゲートウェイはsFlowやNetFlowなどをベースに各種の統計情報を収集し、センサーはアプリケーションの挙動を調べる。ゲートウェイとセンサーが収集した情報はプロファイラに集約され、分析や可視化の処理が行なわれる。
日本では、Cascadeを使ったモニタリングサービスをSIerと協業し、展開する予定。今後はサービスプロバイダのメニューに組み込まれてくる可能性もある。