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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第64回

ブログのネタを地方FM局で発信 「がらくたGallery」の挑戦

2010年01月25日 12時00分更新

文● 古田雄介

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大手サイトやラジオへの配慮もしながら自分色を醸し出す

―― あとは選ぶネタとそれを紹介する文章のテイストによっても個性が出ますよね。個人的に、がらくらGalleryはあんまりエグすぎない、かつシニカルとユーモアの視点もしっかり持ったカラーが魅力だと思います。人を選ぶ激辛カレーでも、お子様向けの甘口カレーでもなく、誰にでも勧められる中辛カレーという感じで。このテイストは狙って作ったんですか?

オノ ありがとうございます。狙いといいますか、コミュニティ放送局で扱うことも前提にしているため、自然とそういうカラーになったのはありますね。

 ブログだったら好きな人が能動的にアクセスしてくれますけど、ラジオだと不特定多数の街の人の耳に半分受動的なかたちで届くじゃないですか。だから、あまりにエグいネタは拾えないというふうになってくるんですよね。前にも、ネタ紹介のなかで「マスターベーション」とつい言ってしまって、ハガキで怒られたことがあったりして。

英語圏のニュースの中でも、イギリスのネタがツボにはまることが多いという。「牧場に泥棒が入ると有刺鉄線を張ったら『侵入者が怪我したらどうするんだ』と怒られた、みたいな。そういうお堅い笑いがイギリス人ぽくて好きなんですよね」と笑う

―― なるほど。ブログ運営とは別の配慮も必要になってくるわけですね。

オノ やっぱり、犯罪がらみで衝撃的なもの、かつ写真が付いている記事は面白くていいなーと思うんですよ。だけど、凄惨すぎるとコメントしようと思った場合に皮肉を入れづらいっていう部分が出ます。それで笑える方向に持っていけないから、わりと平温なネタを探すことが増えていますね。

―― そうなると、自分のブログなのに自分が自由にできない、みたいなジレンマは発生しませんか?

オノ そこまでじゃないということですかね。元から単純に過激なものというのはそれほど惹かれないんです。あんまり凄惨なものが続くと胸焼けするみたいな。なので、基本的には自分の好みに近いテイストになっているのかなと思います。

 僕はブログの記事を書きながら、頭の中でバーチャルに会話するんですよ。「この人絶対変態だよねー」みたいなことを雑談して、ネタになる方向を決めるという。そういうふうに自分的にネタにできるニュースを選ぶので、「センセーショナルじゃないけどクスッという笑いが来そうな感じがしたら拾う」というのがベースにあるんです。そこは崩れていないから、ジレンマみたいなものは感じないんですよね。

―― 具体的には、どんなネタが好きなんでしょう。

オノ 人の滑稽さがすごく好きなんですよ。たとえば強盗の際キャッシャーの女性に一目惚れ、後日デートを申込に戻ってきたところ案の定逮捕された犯人や、強盗するときにマスクを下げ忘れて素顔がバレた犯人みたいに、バカな強盗ネタはハマりますね。人間くさいミスというか間抜けな部分が遺憾なく発揮されちゃっているという。

 あとは、人のおかしな暮らしぶりや日常が見える記事もつい反応しちゃいます。コミュニティ放送局を通して思ったのは、普通の人の普通の暮らしがけっこう面白いということです。その面白さを引き出すシニカルな切り口を考えるのが、また面白いんですよ。

 そういう記事は、ネット上でもリアルでも反応がいいんですよね。

「強盗の際キャッシャーの女性に一目惚れ、後日デートを申込に戻ってきたところ案の定逮捕された犯人」。個人的には一番のお気に入り記事とのこと

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