ニコニコ動画は「ライバル」ではない
――オフィシャルコンテンツのみで編成、つまり、MADなどの著作権侵害・グレーな動画が存在しないという点についてはいかがですか? 他の動画投稿サイトではそれらが人気コンテンツでもあるわけですが。
川邉 「違法なものは1つもない」ということを目指して調達・編成・運営を行なっています。そのことが権利元のビジネスを守るという私たちの明確なメッセージでもありますし、広告主に対しても安心感を与えることにつながっています。
――先日の四半期決算でも公表されたように、不況下でもYahoo! JAPANの広告販売は好調ですね。
川邉 その理由の一つとなった、行動ターゲティング※6もすでにGyaO!に取り込んでいます。旧GyaOでもエリア・属性などに基づいた広告表示システムは備えていたのですが、やはりYahoo! JAPANの数百億という商流の中で鍛え上げられた仕組みを利用できるのは大きいですね。Yahoo! JAPANとの統合メリットの1つと言えるでしょう。
※6 行動ターゲティング : ユーザーのYahoo!内での行動履歴に応じた広告を表示する仕組み
――動画広告は、広告視聴者の態度変容※7をもたらすことも期待されていますね。
川邉 現在、我々はCTR※8からの脱却をもくろんでいます。動画を視聴するにあたっては、視聴者はあくまでもその動画を見ているのであって、その画面から別の画面に遷移したいとは思わないはずです。
私たちは視聴画面の中で、広告への接触からある程度の経験・コミュニケーションまでを完結できるような仕組みを目指して目下開発を進めています。
もちろん、既存の指標での判断を求める広告主さんもおられますので、CTRもリポートするようにしていますが、実は軒並み良い成績を残しているんですよ。
※7 態度変容 : 広告視聴後に購入意欲や行動が変化すること
※8 CTR : クリックスルーレート=広告のクリック率
――動画を視聴するサービスという括りでは、ユーザーの「可処分時間」を奪い合うニコニコ動画などの動画投稿サイトも、コンテンツは違えど競合として捉えることもできると思います。競争戦略、あるいは棲み分けといった想定はあるのでしょうか?
川邉 ニコニコ動画やYouTube、GyaO!といった動画サービス同士でだけで時間の奪い合いが起こっているわけではないととらえています。ソーシャルメディア、例えばmixiで日々生み出されるユーザーコンテンツが、何億という予算をかけて制作された映像よりも多く消費されることもあるわけです。
ニコニコ動画は本当にすごいですよ。Yahoo! JAPANでは2007年からオープン化を進めていますが、彼らとも2008年にパートナーシップを結んでいますし、お互いにメリットのある関係を築けると考えています。
――では、ライバルはずばりどこになりますか?
川邉 大手広告主やコンテンツプロバイダーの課題解決を行なうことで、私たち自身も含めたビジネスも最大化するという観点からは、mixiや、それこそYahoo! JAPANのようなポータルサイトが本当の意味でのライバルだと捉えています。
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