グーグルによるYouTubeの買収、ニコニコ動画、GyaOの開始などが相次ぎ、「動画サイト元年」と言われた2006年からの3年間。動画サイトを運営する各社はいまだ「黒字化」への模索のさなかにある。
2009年4月、Yahoo! JAPANはUSENからGyaOを買収した。連載第1回は、その新会社の社長となった川邊健太郎氏(35)に話を聞く。目指すはいわゆるCGM(カスタマー・ジェネレイテッド・メディア。ユーザー投稿によるメディア)とは一線を画し、オフィシャルコンテンツだけでのサービスの収益化だ。
旧GyaOが苦戦したこの戦略を、ポータルサイトとの連携でどのように立て直し、成長を目指していくのだろうか?
Yahoo! JAPANによる買収で何が変わったのか?
――昨年4月のGyaO!買収は、コンテンツ業界にはインパクトのある出来事でした。その発表から約5ヵ月後に「GyaO! presented by Yahoo! JAPAN」(以下、GyaO!)としてリニューアルしたわけですが、何が最も変わったと考えていますか?
川邉 「Yahoo! JAPAN全体」の映像化を担っている、というのが大きな違いですね。Yahoo! JAPANには100個以上のサービスがありますが、GyaO!を核としてそれらのコンテンツを映像でよりリッチにしていく、という役割を担っていると考えています。
Yahoo! JAPANはインターネット初心者ユーザーも多いので、映像配信サービスにまだ親しんだ経験がないという方も大勢います。そういったお客さんにも安心して一定の品質が担保された映像作品を提供していくことを目指しています。
――リニューアル直後の9月には、ニコニコ動画よりも利用者数が上回ったと報じられましたが、その勢いは現在も続いていますか?
川邉 続いています。12月の広告枠は満稿※1に近い状態で、むしろ映像作品の数・ストリーム数の確保が課題となっている状況です。
――Yahoo! JAPANの配下に入ったことで、広告営業がしやすくなった、つまり、Yahoo! JAPANの他の広告枠とのパッケージ販売で広告を獲得している、といったことはあるのでしょうか?
川邉 それはありません。我々新GyaO!は単体で広告営業を行ない、広告枠を販売しています。むしろライバル「Yahoo! JAPAN」に負けるな、と営業のお尻をたたくこともあるくらいです(笑)。もちろんYahoo! JAPAN側の営業部隊が売ることもあるのですが、ほとんどは私たちが「映像広告」として獲得しているものです。パッケージ広告メニューも実際用意されていません。
――なるほど。いずれにしても、売り上げの面では好調ということですね。黒字化も近い?
川邉 来年度には達成したいと思っています。一方で、支出の面ではYahoo! JAPANとの統合でスケールメリットは出ているものの、当然回線代がかかってきますし、旧GyaO時代から継続しているMG※2の支払いも残っています。これらの支出をいかに圧縮するのかというのは大きな経営課題です。
※1 満稿 : 用意した広告枠が埋まっている状態。逆に広告枠が埋まらないと自社広(メディア運営会社の自社商品に関する広告)が配信される状況になる。
※2 MG : ミニマム・ギャランティーの略。最低保証金。コンテンツがあまり利用されなくても一定の売上げが権利者に支払われる。
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