連載「動画サイトってどうなの? 儲かるの?」では、動画配信サービスを追ってきた。業界の動きは長らく止まっていたが、ここに来てふたたび熱量を増している。先月、アニメ番組を配信するバンダイチャンネルが月額1000円での定額見放題サービスを開始した。そして今月2日、米国で定評あるTV番組配信サービス「Hulu」(フールー)が、やはり定額サービス(月額1480円)で日本進出を果たした。
今回はその“日本版Hulu”のビジネスモデルについて考えてみたい。
バンダイチャンネルもHuluも、特にシリーズ作品を連続して視聴する場合、レンタルビデオや従来の都度課金型のサービスに比べても明らかに割安。ユーザーへのインパクトは十分だ。Twitterでの反応などを見るに好意的に受け止められている。特にHuluは9月いっぱい期間限定で無料ということもあり、試用しているユーザーが相当数いるようだ。定額サービスがここに来て連続で登場し、このような反応を得ている背景を探ってみよう。
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まずは動画サービスの全体像を俯瞰する
のっけから情報量の多い図で恐縮だが、説明していこう。まず現在、日本で使える動画配信サービスは「プロコンテンツ系」と「UGC(ユーザー生成型コンテンツ)系」の2つに大きく分類できる。“動画ファイルをアップロード→サーバーでエンコード(動画形式の最適化)→公開→視聴者の評価やコメントを受け付ける”という技術的な仕組みは、いずれにしてもほぼ同じ。だが、ビジネス面で見てみると、似て非なる特徴を持っていることがこの図からおわかりいただけるはずだ。
振り返ると、2010年はUGC系のサービスが成熟した年と言える。
ニコニコ動画は黒字化を果たし、他の投稿型サービスが軒並み終了する中、ユーザー投稿型のメディアとして国内では比類ない地位を築き上げた。YouTubeの黒字化の報はまだもたらされていないが、停止・休止など見直しも相次ぐGoogleサービス群の中にあっては安定的だ。また同年はUstreamがブレイクした年でもあった。
一方、プロコンテンツ系は大きな動きがなく、サービス終了が相次いだ。1月には松竹オンライン、STB型のDMM TVが終了、ケータイ(とりわけガラケー)向けサービスもあわせて見ると、瀕死のものも含め死屍累々という状況だった。
しかし、図にも示したように、テレビ番組や映画などのプロコンテンツは集客のポテンシャルが非常に高い。予算をかけて作られ、また多くの場合多額の宣伝費をかけて公開されるため、認知度ではUGCの比ではない。それがなぜここまで苦戦を強いられてきたのか? バンダイチャンネルの定額制やHuluの進出の背景を探るにはまずその点を振り返る必要があるだろう。
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