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プロだけが知っている、CMS選定の表ワザ・裏ワザ (2/3)

2009年10月16日 21時15分更新

文●諏訪光洋/株式会社ロフトワーク代表取締役社長、清水 誠/楽天株式会社編成部

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「大切なのは、自分たちの組織にどのCMSの哲学が合っているか」(ロフトワーク・諏訪氏)


――CMS製品ごとの違いに「テンプレート」があります。テンプレートに関して、どのように考えたらよいのでしょうか。

清水 テンプレートって、CMSの考え方がもっとも濃く反映されますよね。そもそもなぜ、テンプレートが必要なのか?

諏訪 先ほどのオープンソースの質問にもあった思想に関わってくる問題ですよね。僕はCMSにはそれぞれ哲学がある、と言っています。Webサイトはそもそもいかようにも作り方があるし作り手もさまざま、できあがるサイトも千差万別、業種も規模も機能もさまざまです。CMSの開発者は、CMSで「何を実現してあげたいか」を考えます。中堅企業の5人くらいのWeb担当者の運営負荷を下げるのか、大企業の世界中のブランチサイトの情報統制を実現するのか。想定する用途によって開発の「哲学」が生まれ、哲学によってテンプレートの考え方も変わってきます。

 たとえばMovable Type(MT)など小規模なCMSの場合、デザイナーでもテンプレートが作成できますが、エンタープライズクラスのCMSの多くはプログラマーでないとできません。さらに業務設計まで踏み込んだコンサルタントの力も借りなければ、完全なテンプレートができないものもあります。これはどちらが良い悪いという問題ではありません。大切なのは、自分たちの組織にどのCMSの哲学が合っているか、ということだと思います。

清水 商用CMSのベンダーには、その哲学をもっと明確にアピールしてもらいたいですね。機能でも価格でも実績でもなく、誰がどんなコンテンツをどう管理する時のどのような課題を、どう解決すべきだと考えているのか?

 僕がCMS(に限らず制作・開発支援のソフトウェアやサービス)に15年間こだわってきたのは、この哲学の探求のためのようなものです。CMS製品を評価することで、製品を作った企画者や開発者とWebコンテンツ管理のあり方について間接的に議論できます。「なるほど!」と感動して、ベンダー以上に惚れ込んだCMSもありますよ(笑)。


――では、CMS選定をする上で特に重要なこととは何でしょうか?

諏訪 CMSを導入し、何を実現するのか。自分たちの要件をきちんと決めていることが一番大切です。そのとき、あまり先を考えない方がいいでしょう。5年後のWebがどうなるかなんて誰もわかりません(笑)。よくある失敗は、先々のことを考えすぎたり、ヒアリングを鵜呑みにして全員の要望を実現するためのCMSを探したり、組織に合っていないCMSを選んでしまうことです。CMS導入が目的になってしまいます。

 もう1つ、CMSを導入するにあたって、構築パートナーと運用する(自社の)スタッフの存在を忘れてはいけません。実際に構築を担う会社を考えないと「技術は優れているけど日本には構築パートナーがほとんどいない」というCMSもありますし、機能は優れているけど運用スタッフには合っていないこともあります。あるレコード会社の事例なのですが、所属アーティストのマネージャーもコンテンツの更新をする必要がある。場合によってはアーティスト自身も更新する。結局、組織は大きかったのですがMTをベースに構築しました。情報設計や構造化は大変でしたが、「業務」っぽいCMSではアーティストも更新してくれません。

清水 とはいえ、最初から的確な要件を定義するのが難しい場合もあります。CMSを初めて導入する場合は、自分たちの仕事がどう変わるのかを想像しながらヒアリングに答えたりRFPを作ることになるので、事実の中に「想像」や「想定」という不確定要素がどうしても混ざってしまいます。

 だから、要件定義が不十分だったことが分かった場合は、分からなかったことが分かるようになったと前向きに考えて、柔軟に対応できるようにしておくことが重要です。たとえば、しばらく運用してみて分かったことを反映するためのプロジェクトを最初からプランしておく。

 もちろん、構築パートナーも重要ですね(笑)。僕はCMSと構築パートナーはペアで同時に選ぶべきだと思っています。ノウハウがあるパートナーは、適切に製品を選定できます。さらに重要なのが、パートナーが慣れた製品を使いこないつつ最高のシステムとプロセスを設計・構築できる状態にすることです。


「システムは引っ越しと同じで柔軟に変更するもの。使い捨てる覚悟で導入してしまえばいい」(楽天・清水氏)

――CMS選定というと、どうしても「あれもこれも」となりがちです。将来的なサイトの拡張性をどこまで考慮すべきなのでしょうか?

清水 システムは使い捨てるくらいの覚悟で導入してしまえばいいのでは? 投資したシステムに囚われて守りに入るよりも、コンテンツやWebサイトをよい状態で保つこと、貯めていくこと、コンテンツをうまく扱える組織を作ること――に力を入れた方がいいと思います。大事なのは中身としてのコンテンツと、その管理プロセス。成長に合わせてシステムは柔軟に変更していくべきでしょう。

 以前、2年かけてCMSを選定しながら、その間に別のCMSを短期導入したことがあります。あとでコンテンツをきれいに(構造を保ったままメタデータ付きで)取り出せることさえ確認しておけば、「無いよりは良い」「評価や学習にもなるだろう」と。家族構成や仕事の都合に合わせて住む場所を引っ越すのにも似ています。

諏訪 僕も同じ意見で「そんなに考えない方がいいです」と言いたい。清水さんのように潤沢に予算を使えるケースは少ないかもしれませんが(笑)、だいたい、「拡張性」を考え始めると機能が豊富なエンタープライズCMSかオープンソースCMSを選びたくなってしまいます。

 エンタープライズCMSは導入が大変ですし、オープンソースは正直数年後にどうなるか分からない。オープンソースを支持したり協力している会社からは怒られてしまいますが(笑)、壮大な夢を見ながら数年で止まってしまったCMSプロジェクトはたくさんあります。

 たとえば、以前はCMSの少なからずが動的なDB型で、「DBに入れておけばどんな形にも再利用ができます」という口上で採用されていた。ところがいまのサイトはどんどんXML化しつつあって、スキーマーが固定化してしまっているRDB型のCMSは困るケースが増えていたりもします。Twitterが企業のニュース発信の標準プラットフォームになれば企業サイトやCMSも影響を受ける部分もあるかもしれません。

 いずれにしても、あまり考えすぎないこと、詰め込みすぎないことが大切だと思います。

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