気持ち悪さがつきまとってしまう?
パーソナル情報を利用したサービス
ライフログ関連のサービスには、技術以上にユーザーの心理的なハードルが存在しているように考えている。
先日ドコモが取り組んでいる「マイ・ライフ・アシストサービス」に関して話を聞いた。この実験的なサービスは、専用アプリで位置情報の履歴を記録・蓄積していくと、ユーザーの行動を先読みし、レコメンド情報や公共情報を先回りしてユーザーに届けられるようにするものだ。
ここで興味深い話をうかがった。すでにサービスインしているドコモの「iコンシェル」について、実験の一環としてヒヤリングをすると「監視されているようで心地悪い」「なぜ自分の情報がわかるのか」といったユーザーからのフィードバックがあるというのだ。
ユーザー自身がサービスに申し込んでいながら、それでも気持ち悪さを感じる可能性が生じてしまう。いくら「ひつじのしつじくん」というキャラクターがいても、なかなか払拭できない「心のハードル」が存在するようだ。これがライフログのようなユーザーの情報を活用する際に存在している難しさである。
いち早く安売りの情報にリーチできる、自分にぴったりのランチをすぐに見つけられるなど、ユーザーに対するメリットが明確だからといって、このような難しさを軽視することは避けるべきだ。サービスや企業に対するユーザーの反感を買うことになる。
ユーザーが積極的に情報を提供することで
反応がまったく変わってくる?
ウェザーニューズで聞いた話にもそれに関連した内容があった。
ウェザーニューズは会員から月額課金をしながら、会員に「ウェザーリポーター」として動いてもらい、空の写真やその日の天気・気象条件を投稿することをつうじて、これまでにない細かい密度で気象予報の情報作りをしている。
気象庁の技術でも捕捉不可能だったゲリラ雷雨も、的中率7割を超えるほどの成果を見せ、ウェザーニューズは「ケータイによるユーザー参加で作り出した、世界最高精度を誇る気象予報が日本で実現できた」と胸を張る。
ゲリラ雷雨が起きそうなとき、「ゲリラ雷雨防衛隊」の「隊長」から会員にメールが流れ、観測を指令。見事的中させたら、そのエリアの会員にお礼のメールでねぎらいの言葉をかける。自分の情報が役に立ったという経験が細かく繰り返されており、ユーザーは自分の情報が使われることに対して積極的になり、自然と投稿も増える。
マイ・ライフ・アシストサービスとウェザーニューズでは、ユーザーの情報を勝手に取得するか、ユーザーが自分で作った情報を投稿するか、という差はある。しかし後者はユーザーがサービスに情報を投げて、その情報がどのように役に立ったのか、というフィードバックを得ることで、心地よく積極的な情報活用と流通ができあがっている。
情報の種類、作られ方、使われ方について、まだまだ事例を見ていきたいと思うし、ユーザーが心地よく使うために何が必要か、何に気をつけるべきかを考えなければならない段階だと思う。ただ、ここで重要なのは、自分の情報がどう使われたか、自分や他人にとってどういう形で役に立ったか、というフィードバックの有無と納得感がポイントになってくるのではないだろうか。
動き回るPolarisのデモ
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