Windows Server 2008 R2で強化された機能の1つがリモートデスクトップだ。リモートデスクトップで何ができるのか、6月10日に行なわれた説明会の資料を見ながら、機能を探っていこう。
ターミナルからリモートへ
リモートデスクトップは、サーバ上で実行しているWindowsのデスクトップにネットワーク経由でアクセスする機能だ。接続する側のクライアントはWindowsに標準で付属しており、接続を受け付ける側のサーバはWindows XP ProfessionalやVistaの企業向けエディションとWindows Serverに搭載されている。Windows Server 2008まで、Windows Server版のサーバ機能は「ターミナルサービス」と呼ばれてきたが、Windows Server 2008 R2では「リモートデスクトップサービス」と名称変更される。
名称変更だけでなく、利用するプロトコルである「RDP(Remote Desktop Protocol)」も「RDP 7.0」にバージョンアップし、機能の強化や新機能の追加などが行なわれる。
描画処理をクライアントに
リモートデスクトップは、サーバ上で生成した画面データをクライアントに送信する機能だ。画面上で変更(書き換え)があった部分だけを送信する機能があるため、オフィススイートなど動きの少ないアプリケーションであれば、かなりスムーズに描画される。一方で難しいのが、動画のような画面書き換えがひんぱんに生じるアプリケーションや、ビデオカードの処理機能をフルに利用する3Dアプリケーションの表示だ。
Windows XPまでは、動画再生や3Dは主にエンタテインメントに使う機能であり、企業用途では不要な機能であった。しかし、Vistaにはデスクトップ描画に3D機能を使う「Aero Glass」が搭載されたほか、ビデオ会議など企業で動画を使う機会が増えてきた。
こうした状況に対応すべく、Windows Server 2008 R2のリモートデスクトップサービスでは、動画再生の処理などをクライアント側で行なう「マルチメディアリダイレクト」機能を搭載する。これにより、Direct2DやGDIといった2次元の描画作業、Windows Vistaや7が対応する3D機能であるDirect3D 10.1を使った描画作業などは、クライアント側での処理が可能になる。ただし、アドビのFlashやWindows XPが搭載するDirect3D 9などの描画処理はマルチメディアリダイレクトに対応しないため、サーバ側での処理となる。
サーバの負荷や帯域を大幅減少
マルチメディアリダイレクトは、クライアント側での動画再生をスムースにするだけでなく、サーバ側のCPU負荷の軽減や帯域の節約にも貢献する。プレス説明会での解説によると、これまでCPU負荷が60%かかっていた320×180ドットの動画再生が数%までに低下するという。また、10Mbps以上消費していたネットワークの帯域も、5Mbps程度で済んでしまう。帯域に関しては、35Mbps近く消費していた960×540ドットの動画も、5Mbps程度にまで低下しており、複数の動画を再生しても問題なさそうだ。
10台のモニタでRDPが利用可能に
ディスプレイの低価格化などに伴い、1台のPCに複数のディスプレイを接続するマルチモニタ(マルチディスプレイ)環境を使う企業も増えてきた。ローカルの環境では、Windows 2000の頃からマルチモニタに対応しており、CADやデザイン、株取引、さらに大きなExcelのワークシートの表示が必要な場合などに活用されているようだ。一方、リモートデスクトップ環境での対応は、Windows VistaのRDP6.0からであり、それも2台までのデュアルモニタ(デュアルディスプレイ)までという制限があった。これがRDP7.0でやっと10台のマルチモニタにまで拡張される。
また、細かい点では、マイクデバイスのサポートが加わった。クライアント側に接続したマイクデバイスをリモートデスクトップ上で使えるようにする機能だ。おもにPCに接続したヘッドセットで顧客と通話を行なうコールセンターでの利用を想定しているようである。しかし、SkypeやIP電話ソフトウェアなど、一般の業務であってもPCのマイクを使うケースは増えてきているため、用途は広そうだ。
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