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4~5割のロボットを無視するAnalyticsの解析方式 (2/6)

2009年06月15日 19時16分更新

文●中野克平/デジタルコンテンツ部編成課

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アクセス解析の2つの目的――サーバー負荷とコンバージョン

「Google Analyticsの目的は、サイトを改善してマーケティングの投資収益率を向上することだ、とGoogle Analyticsのログイン画面に書いてありますよ。それ以外の目的がアクセス解析にあるんでしょうか?」――確かにGoogle Analyticsの目的はマーケティングの投資収益率を向上することですが、アクセス解析の目的にはもう1つ、ITインフラの投資効率を向上させることもあるのです。

 アクセス解析はもともと、サーバーなど、ITインフラの負荷を調査するのが目的でした。サーバーやネットワークインフラの価格が低くなったのは1990年代後半以降のことで、それ以前はサーバーもネットワークも、最低限必要な性能を割り出し、予算との兼ね合いでどれだけマージンをとるか決めるのが一般的でした。Google Analyticsのように、「マーケティングの投資収益率を向上すること」を目的にWebアクセスを解析するのは、ECが盛んになった近年のことです。


ITインフラの負荷を調査するのが目的のアクセス解析

 ITインフラの負荷を調査するのが目的のアクセス解析は、「ログ解析」とも呼ばれます。ApacheやIISなどのWebサーバーがログファイルに記録しているサーバーへのアクセスを解析することで、サーバーの最大負荷を調べたり、存在しないファイルへのアクセスを調べて、本来存在するはずのファイルか誤って削除されていたり、壊れていたりしないか確認するのがITインフラの負荷を調査するのが目的のアクセス解析です。人間もロボットも、アクセスすればサーバーの負荷になるので、Urchin 6のように、ITインフラの負荷を調査することが目的のアクセス解析ツールは、ロボットを無視せずに指標を算出するのです。


※Urchin 6には、HTTPヘッダーのUser-Agent:フィールドにより、ロボットを識別する機能があります。Googleのクローラーであれば「Googlebot/2.1」、Yahoo Pipes のフィードリーダーであれば「Yahoo Pipes 1.0」のように付いているUser-Agent:フィールドを読み取り、ロボットのアクセスのみを集計できるのです。


コンバージョン率を計測するのが目的のアクセス解析

 一方、Google Analyticsはコンバージョン率を計測し、ビジネスを改善するためのアクセス解析ツールなので、ロボットを無視し、人間によるアクセスを対象にして指標を算出します。

 コンバージョン率を計測するのが目的のアクセス解析は、PDCAサイクルのうちの「Check」プロセスの手段だ、ともいえます。たとえば月商1000万円という目標を掲げ、トップページから買い物かごページへの到達率を2%に設定し、トップページに着地するリスティング広告を5つのキーワードで出稿する、という対策をとったとしましょう。このとき、トップページに何セッションあり、買い物かごページへの到達が多いのはどのキーワードからなのかを把握し、コンバージョン率を計測するのが目的のアクセス解析です。

「うーん、アクセス解析の目的が2つあるのは分かりましたが、その論理だと、ロボットの有無でまったく異なる値になってしまうページビューなどの指標は、指標といえるんでしょうか?」――コンバージョン率を計測するのが目的のアクセス解析で、ロボットを無視しなければいけない、ということはありません。たとえばWebのアクセス解析を専門とする人々の団体であるWAA(Web Analytics Association)の用語集では、「Webサーバーの応答コードが200(成功を表す)のとき、Webブラウザーに表示されたら1回と数える」(かなり意訳ですので、正確な定義は「Web Analytics Definitions」をご覧ください)としか定義されていません。

 とはいえ、これではどちらの指標を使えばいいのかわからない、という意見ももっともです。そこで、どちらの指標を使った方がいいのか、もう一度整理しましょう。


(次ページ)Google Analyticsの指標を使うべき場合

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