米デル社とデル(株)は27日、東京・恵比寿のウェスティンホテル東京にプレス関係者を集め、米デルの社長兼新CEO(最高経営責任者)のケビン・ロリンズ(Kevin Rollins)氏の来日記者会見を開催した。ロリンズ氏は、今年3月の取締役会で可決、今月16日の今月16日の年次株主総会で承認されて、創業者である前CEOのマイケル・デル(Michael S.Dell)氏に変わって新CEOに就任した。1952年生まれ、51歳。
米デルの社長兼新CEO(最高経営責任者)のケビン・ロリンズ氏(左)とデル(株)の代表取締役社長の浜田 宏氏 |
会見にはデル(株)の代表取締役社長の浜田 宏氏も出席し、ロリンズ氏の挨拶に先立って、日本における同社の実績や市場概況などを説明した。
浜田氏は、「7月末で(デルの会計年度における)第2四半期が終わるが、いい結果が残せそうだ。法人、個人ともに好調。(カレンダーイヤーの)第1四半期(1~3月)はマーケットシェアで10.5%という好成績を収め、第2四半期は直近の集計で12.2%となり(デルにおける)日本での最高シェアを記録しそうだ。あくまでも速報値であり最終集計はまだだが、3ヵ月間に2ポイントを伸ばすのは記録的なことだ」と日本市場での好調ぶりをアピールした。
個別の事業分野については、「80%以上が官公庁/法人向けのビジネスで、引き続きこれをコア事業にしていくのは変わりない。(規模の変更に柔軟に対応する)“スケーラブルエンタープライズコンピューティング”を、パートナー企業/プロフェッショナルサービスチーム/ビジネスモデル/マーケティングモデルなどと組み合わせて提供することで、顧客の標準化技術へのマイグレーション(UNIXベースの専用サーバーからIAサーバー&Windows/Linuxベースのサーバーへの移行)を進めていく」「コンシューマー(一般ユーザー向け市場)については、“デル・リアル・サイト”が国内で90弱に増えた。ここで新しい顧客を獲得するとともに、生の声を聞いて市場のニーズを直接確認することも重要視している。ここ数年は周辺機器ビジネスの拡大を進めてきたが、いずれのデバイスも順調。特にプリンターは予想をはるかに上回る推移で、インクがなくなる前に警告を出したり、ウェブサイトを通じて手軽に補充インクが注文・配達できる“インクマネージメントシステム”“デリバリーシステム”が顧客のニーズに応えて好評だと思う。日本のプリンターマーケットは、国産メーカーが大きな数字を抱える世界でも極めてユニークな市場だが、堅実にシェア拡大を目指していきたい」と語った。
壇上に立つケビン・ロリンズ氏 |
続いてケビン・ロリンズ氏が壇上に立ち、「4つの戦略的重点項目を持ってビジネスを進めていく」と切り出した。4つの重点項目とは、
- グローバリゼーション
- 製品リーダーシップ
- カスタマー・エクスペリエンス(顧客の満足経験)
- Winning Culture(勝利する文化)
を指す。グローバリゼーションとは、世界各国あらゆる地域で高いシェア、高収益を達成することを示す。「日本では現在11%程度だが、世界平均の18%(シェアNo.3)を目指して今後も着実な歩みを進めていく。ただし、いつまでにというゴールは設定しない。無理にシェア獲得を図ることなく、高い顧客満足の提供や価値の高いテクノロジーの導入を続けていけば、いずれ目標に到達できると考えている」「中国にも5年前に進出したが、いまやNo.3の位置を占めている。中国や日本は戦略的に重要な国である。特に中国の市場は急成長している。いずれ市場規模はアメリカや日本を上回るだろう。中国をフォーカスしない企業は乗り遅れることになる」と、日本や中国などを重要拠点としながら世界全体でシェア拡大、市場規模の成長を図る同社の姿勢を明らかにした。
デルの世界戦略について、各地域への参入から現在までのシェア獲得の推移をグラフで示した |
製品リーダーシップについては、“Dell Effect(デル効果)”という独特の言い回しで標準化技術の重要性を語った。これは、マイケル・デル氏も啓蒙を続けてきた、“メインフレームやUNIXシステムからIAサーバー&Windows/Linuxシステムへのマイグレーション”を具体的な顧客のメリットとして示す言葉で、「スタンダードベースのシステム(IAサーバー&Windows/Linux)を利用することで、顧客は導入/運用コストを下げ、効率を上げるという恩恵が受けられる」と語る。その流れを裏付けるものとして、サーバー市場/ストレージ市場の製品単価が4~6年前に比べて大きく下がっているのに対して、デルの収益は向上していること、世界全体のサーバー市場のシェアは26%に達し、成長率は全世界で24%増(日本を含むアジア地域では33%増)、ストレージやサービスでも高い成長を記録していることを示した。
デルが記者説明会で何回か示している図。特定技術に秀でた専用機より出荷台数の多い汎用機/スタンダード製品を使うほど、価格性能比が上がり顧客において高い価値を産むという | コンシューマー向け周辺機器市場のシェアを示したグラフ(米国市場) |
顧客体験については、「週次/月次で顧客の声をフィードバックし、情報の共有を図っている。製品/サービス/サポート/支払いのすべての面でベストな体験を得られるように努力しており、その成果として各社の顧客満足度調査でも高い評価を得ている」と自信を見せた。
Winning Culture(勝利する文化)については、「世界全体を見渡し、マルチカルチャー/マルチリージョンで勝つには、コアとなるビジョンを共有する必要がある。(製品の)価値や戦略/意思を共有すること。単に株主に利益で報いるだけでなく、ユーザーコミュニティーや従業員に対しても報いることが重要であり、正当な方法で勝利を収めること、倫理観を持った行動を続けることが企業にとって最も求められることだ」と語った。これをロリンズ氏は“グローバルシチズンシップ”(企業の世界市民意識)という単語で語り、社会への企業責任として、リサイクルの徹底や鉛排出の抑制といった社会貢献を重視・実践していることをアピールした。
サーバー/ストレージ市場での収益性のシュリンクとデルの成長の推移を示したグラフ | 過去20年間での成長率を比較したグラフ。マイクロソフトの4倍近い高成長を果たしたと鼻息を荒くする |
最後に「この20年でデルは“最高の成功”を収めてきた。しかし、これに満足せず、より使いやすいテクノロジー、効率のいいテクノロジーを提供していきたい。これからの20年は過去よりもシッカリとした実績と達成方法(社会/倫理的に正当な手順)で成功を収めていきたい。これこそがデルにおける勝利である」と述べて締めくくった。
会見後のロリンズ氏に対する記者からの質問で、「今後5年で生き残れるパソコンメーカー/サーバーメーカーはどこと考えるか?」と聞かれると、「どの製品/企業が撤退し、どこが生き残るとは言えないが、ヒューレット・パッカードとコンパックが合併し、どちらも巨大な企業だったがそのひとつがなくなった。企業同士の淘汰が始まり、過渡期が進んでいるのは事実だ。独自仕様からオープンスタンダードへと移行が進んでおり、デルはこれを積極的に進めている」と、厳しい市場の現状と自社の方向性の正当さを強調した。
別の記者から、「WindowsとLinuxのどちらを望む顧客が多いのか、どちらがより顧客のコストを下げるのか?」という質問には、「デルとしてはソフトで利益を上げているわけではない。顧客が望むものを提供したいと考えている。現在はクライアント/サーバーともにマイクロソフト製品の需要が多いが、サーバーではLinuxを求める声も増えてきたている。といっても、割合ではLinuxサーバーはまだ1桁台で、マイクロソフト製品のほうがそうとう多いのが現状だ」と答えた。