このページの本文へ

エンタープライズLinux導入事例─ツタヤ オンラインの場合

2002年12月29日 07時52分更新

文● 阿蘇直樹

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
[編集部] 昨年の夏くらいからLinuxサーバの導入を開始されたとのことですが、導入に際してはなにか問題はなかったのでしょうか。
[兼安氏] そもそもLinuxに踏み切れなかったというのがありました。といいますのも、まずSIの方々がちょっと自信がなかったのかな、というところがあります。エンジニアも、Linuxのコマンドとか、アプリケーションの信頼性に関して十分な知識がなかったり、経験も足りませんでした。そういう状態では、意志決定する人たちも普通は責任をとりたくないから、安全な方向にいこうとしますよね。
それからもう1つは、以前はLinuxにしたところでハードウェアの性能がそれほど高くなかったというのがあります。結局速度を測ってみると、IAサーバ+LinuxのシステムよりもSPARC+Solarisのシステムの方が速かったということがありました。
あとは当時、Solaris上でミドルウェアを使ってWebアプリケーションを動かしていたのですが、それを全部書き換えないとLinuxに移行できなかったんです。これが一番大きな問題だったかも知れません。ただ、今回のデータベース移行については、『Oracle9i Real Application Clusters』を採用するのですが、テーブルなどを特に書き換えることはしないので、現在利用しているSolaris上のOracle8iからそのままエキスポート・インポートするだけですので、移行といいながら移行プログラムの作成はほとんどないんです。
[編集部] まず、今お話にありましたSIの方々についてですが、今回のLinuxデータベース導入にあたっては、“踏み切れる”ようにするためにどういった体制を用意されたのでしょうか。
[兼安氏] 今回はTIS(株)におまかせしているのですが、これまでにない試みだということもありまして、昨年末くらいから、ハードウェアベンダーのデルコンピュータ(株)、OSベンダーのミラクル・リナックス(株)、データベースベンダーの日本オラクル(株)、CPUベンダーのインテル(株)にご協力頂いて、十分なサポート体制を整えて頂きました。当然、実稼働以上の負荷をかけた上でパフォーマンスや信頼性を検証するテストも行ないまして、パフォーマンスに関しては、既存のSolarisベースのものとなんら遜色ないことを確かめていますし、信頼性に関しても、まあ1年間稼働させて、というわけにはいきませんが、問題ないことを確認しています。本当はもっと混乱するのではないかと思っていたのですが、おかげですんなりといっていますね(笑)。今回一番大変だったのはこの体制を作られた、TISさんをはじめとするみなさんだったでしょう。
[編集部] エンジニアの方々がLinuxをよく知らないというお話がありましたが、社内で何らかの研修制度などを設けられたのでしょうか。
[兼安氏] 習って覚えるというより、自分で新しいことにチャレンジしていく人を採用していますので、研修という形では特に行なっていません。私たちの場合は、自分たちでエンジニアを持つようにしまして、社内に“ラボ”を設けて自由に実験できるようにしました。そこで自分たちで実験することで、ある程度安定して稼働できる、という自信をつけることができました。
[編集部] “ラボ”では具体的にどういった実験をされるのでしょうか。
[兼安氏] たとえばいろいろなバージョンのLinuxをインストールして、その上にいろいろなアプリケーションをのせてうまく予想通りに動くかどうかですとか、最近はシリコンディスクを利用した場合のパフォーマンス計測なども行なっています。サービスインする前のテストを行なうというよりは、自由にいろいろいじくり回すという感じでしょうか(笑)。そうしないと、最先端のことはできませんから。こちらで実験環境を用意しまして、当然テーマも与えまして、いろいろと失敗を繰り返しながらやっています。自分たちでテストしていると、Linuxだから落ちやすいとか、そういう感じではありませんね。これはもう体験してみないと分からないことだと思います。
[編集部] 最近はIA-64やx86-64なども話題になっていますが、そちらもテストされたりしていらっしゃるんですか。
[兼安氏] いや、そこまではまだやっていません。64ビット対応のLinux自体がまだベータ版くらいのものと認識しています。ただ、64ビット化というのは私たちもにらんでいまして、特にデータベースなのですが、integerのデータを64ビットで扱えるようになるだけで、たとえばこれまでは文字列として処理していたものを整数で扱えるようになれば、相当速くなるのではないかと思っています。

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード