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Domino for Linux徹底紹介

1999年10月21日 00時00分更新

文● 吉川

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 今年1月のLotusphere'99では、一部のロータスドミノユーザー待望のLinux版が正式発表された。現在はSneak Preview版が発表され、興味のある誰もが、その動作を確かめることが可能になった。さらに国内では、Linux World/Conference Tokyo'99において、英語版ながら無償でSneak Preview版を収録したCD-ROMが配布され、会場ではデモンストレーションも行なわれた。

今後のLotus Domino R5 for Linuxについて、ロータス(株)マーケティング本部戦略企画部の柳下鋼利氏にお話を聞いたので、その模様をお伝えする。

 聞き手は、ASCII Network Pro(旧アスキーNT)で長年ノーツ関連の記事執筆をしてきた(株)ローカスの新妻正夫氏だ。

[新妻] まず、Linux版のドミノの進行状況などお聞かせいただきますでしょうか。
[ロータス 柳下] まず最初にお伝えしなければならないことは、1999年6月に、SanFranciscoでDevelopers Conferenceというものをやりました。その場で明言したのが、「現在開発を続けています」ということでした。Domino R5のバージョンとしては、「5.03」という数字まで明確に言いました。米国ではDomino R5.03は年末にリリースする予定なのですが、そのバージョンでLinux版も出しますと明言しています。場合によっては R5.0.2 の段階でリリースできるかも知れません。
 いま、2つの角度から開発を行なっています。1つはLinuxはほかのUNIX系OSと違う部分、たとえばスレッドの管理などがあります。実は、Domino R5では「thread pooling」などを行なっているので、その部分で調整しています。
 それから、Domino R5自身が5.03までに進化しますので、いろいろ機能強化を行なっています。その両方ですね。安定性と機能強化という点で現在作業しています。
 たぶん日本での製品出荷というのは、来年早々ということになるのではないかと考えています。今年のLotusphereで告知を行なったことについて、「きちんとやっています」ということを、SanFranciscoで明言したということです。
 “NTキラー”というわけではないのですが、当社のマルチプラットフォーム戦略ということで、Linuxをきちんと扱っていくということを進めています。
[新妻] Linuxへの移植ということで、特にロータスさんが苦労されている点はあるのでしょうか。
[ロータス 柳下] やはり、一番問題にしているのは、カーネルとして見たときに、POSIXとのcomplianceというのがとれていない場合がある、といった点で苦労しています。それから、thread poolingというのがR5の内部的な処理の中で一番キーになっていまして、その部分でいろいろ苦労しているということです。実はほかのOSもスレッドの部分がキーになっているんですけども。
 実際、Domino R5 for Linuxというのは、SanFranciscoの会場で見せたんですけれども、サーバのコンソールが動いているのを見ても、誰も納得しないんですよ(笑)。「確かに画面的にはそうだよね」というのは分かるのですが。
[新妻] ロータスさんの対Linux戦略という点でお話をうかがえますか。
[ロータス 柳下] 当社のLinuxに対する戦略となると、やはり基本は、「Domino Application server」に代表される、サーバープラットフォームに力をかけていきますと。
 たとえばLotus 1-2-3や、などのような、どちらかというとクライアントサイドで使えるようなものというのは、まだ検討中の段階で、まだまだポーティングするということすら決めていないのです。やはり最大のポイントというのは ―これは企業の方もそうだと思うんですが― サーバに使われますよね、ということです。Dominoや、Notes Pumpだとか、そういうバックグラウンド系で、かつNTと比較して、ITの方から見て信頼性の高いUNIX系のプラットフォームを使いたいというニーズを先にキャッチアップするということですね。ただ、Linuxバージョンが出るときには、R5には「DECS(Domino Enterprise Connection Service)」という機能が付いていますので、たとえばOracleやIBM(日本アイ・ビー・エム)さんのDB2だとか、Linuxにポートしている製品との連係というのは、少なくともチェックして出すことになります。
[新妻] 対応するディストリビューションについて確認したいのですが。
[ロータス 柳下] いろいろ問題になっているのは、米国でポピュラーなディストリビューションと、日本でポピュラーなディストリビューションが若干違っているということです。
 たとえば、向こうだとRed Hat Linuxは間違いなく標準なのでそれはやりますと。次は? といったときに、米国では案外Calderaが使われているので、やっぱりCalderaは無視できないよといっているんですね。
 ですが、日本ではTurboLinuxがありますので、基本的にはTurboもやりますという形で考えています。日本でディストリビューションを考えていったときにキーになるのは、ウチだけがやっているのではなくて、たとえばIBMさんとか富士通さんのようなPCサーバのハードウェアを出されているところがサポートするディストリビューションと同じものしかないだろうな、と思っています。
 その点で言うと、日本ではまだ最終的には決定してませんが、Red Hat LinuxとTurboLinuxが濃厚だと考えています。ほかにもいろいろありますれけどもね。
[新妻] SMP対応はどういう感じになるんですか?
[ロータス 柳下] コード的にはSMP対応しているのでその時のOSの状況で判断すると思うんですが、ただ、ライセンス的に考えてみますと、最初からSMPを意識していますので、間に合えばやるよということでしょう。ただ、Windows NTなみにやれるのかどうか ―スケーラビリティといった面で― やはり課題はあると思いますので、最初のリリースではキツかったとしても、3カ月に1回メンテナンスしていますので、そのメンテナンスの中で出していくことになると思いますね。
 そういうところで見ると、来年の4月でしょうね。日本でLinuxベースでシステムを導入してくるのは4月以降になるのではないかと思いますよ。遊んでやるという人はいるでしょうけど。
[新妻] Red Hat Linuxなどのディストリビューションでインストールすると、大体sednmailとApacheくらいは簡単に入りますが、ああいったものと、Dominoの連携をとるようなことは考えてらっしゃらないのですか?
[ロータス 柳下] OSに付随しているメッセージングだとかWebの機能との連携ということでいいますと、間違いなくApacheとの連携はやると思いますよ。というのは、Domino R5では、新しい機能として、Windows NTのISAP経由でDomino R5のアプリケーションを利用できるのですが、Developer Conferenceに来ていた方々には、この機能が魅力として写っているんですね。
 「やはり次はApacheでしょう」というご意見が大きいので、ApacheのAPIでどこまでできるのか分かりませんが、同じようなことは考えていると。まあ、最大のメリットはApacheだと思っています。
 sendmailというところで考えてみると、メッセージングのシステムというところで、どちらでも(Domino R5でも、sendmailでも)使ってくださいという話はあると思うんですね。単なるメッセージルーティングというところで話をすれば。Domino R5の使われ方というと、やはりメッセージング系では、ディレクトリを使ってLDAP経由でアクセスできるだとか、ディレクトリ情報を使ってさまざまなWebアプリケーションをコントロールできるだとか、そういうところにフォーカスされていって、HTTPやSMTPという素の部分というのは、OSに付いているものを使っていただいても同じように処理できます、という話になるのではないかと思います。
 ただ、Domino R5のSMTPサービスを使う最大のメリットというのは、いったん処理して、ふつうPOPだったら単純にディレクトリに保管されてしまいますよね。普通のメッセージングシステムの場合はディレクトリ内に単に置かれているメッセージが、Notesのデータベースに入っています。HTTP系も単にディレクトリに入っているのではなくて、Notesのデータベースに入っています。ですから、コンテンツの管理という部分を考えたときに、ウチのものを使いましょうという選択になると思うんですね。今後日本のお客さまは、POPというよりも、IMAPでサーバにメッセージをずっと置いておいて、どこからでもアクセスしたいという話になると思うので、コンテンツ管理という面からDomino R5のほうを使ってくださいとご提案することになると思います。
 お客さまによってシステムの組み方が変わってくると思いますので、そういった柔軟性を与えつつ、ウチの良さというのをご理解いただくということになると思います。やはり、コンテンツの管理というところでアドバンテージがあるだろうと思っています。
[新妻] Linux版の価格はどうなるんでしょうか?
[ロータス 柳下] 当社の価格の戦略は、確かにR5のリリース時点で変えているのですが、根本的にいうと、パフォーマンスだとかサーバの機能だとかを合わせた形で、サーバのライセンスを何段階か用意しているんですね。たぶんその考え方は変えないと思います。
 同じライセンスだった場合には、プラットフォーム別での価格差はないんですね。たとえばWindows NTであっても、AS/400であってもAIX、Solaris、Linuxであっても、全部価格は同じなんですよね。ただ、その価格がやりたい事やパフォーマンスといったことによって、変わってきますと。たとえば1万人の人が同じマシンにアクセスする時には、そのマシンのパフォーマンスはすごい高いものになるでしょうし、それなりの金額になるでしょう。よってライセンスもそれなりの形にすると思うんですよ。ですから、価格はたぶんほかのプラットフォームと同じ、ライセンスはいまと同じようにスキームで行くということになります。
[新妻] ありがとうございました。

(株式会社ローカス 新妻正夫)

文中敬称略

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