9月29日から30日に、東京ファッションタウンで行なわれたLinuxWolrd Expo/Tokyo '99では、(株)ロータスによる「ロータス ノーツドミノとLinux」と題したワークショップが行なわれた。
説明を行なった、Lotus Development Corporation Worldwide Brand Manager Don Harbison氏 |
このワークショップは110席の会場がほぼ埋まるほどの盛況となった。全体の流れとしては、Lotus Notes、Lotus Domino(現在for Linuxは英語版のみのため、アルファベットで表記する)の特徴や事例の紹介をし、後半はLinuxビジネスの現在までの流れとLotus Domino for Linuxの紹介、最後に質疑応答という形で進んでいった。
Lotus Dominoは、メッセージング分野から発展してきたWebアプリケーションサーバ。メールやディスカッション、文書共有といった、いわゆるグループウェア的機能を下敷きに、現在ではORB(Object Request Broker)を装備しJavaに対応するなど、Webアプリケーションサーバとしての展開がなされている。
Lotus Dominoの紹介では、2000年のシドニーオリンピックのWebページでも同製品が使用されることなどをあげ、いかにLotus Dominoが信頼され、市場を獲得しているかを語るとともに、スポーツ競技のスコア中継のような、ダイナミックに内容が変わるデータこそ、Dominoで扱うのに適している、とした。
さらに、Lotus DominoがIBMのAIXをはじめ、Soralis、HP-UX、Windows NTなどに対応するマルチプラットホーム製品であること、そしてまた、POPやIMAP4といったインターネット上のサービスプロトコルのほとんどを実装していることも紹介した。こうしたLotus Dominoの能力により、グループ間の情報共有や情報交換を行ない、物理的時間的な境界線をまたがってコラボレーションが行なえること、共有する情報は非構造化された文書のみならず、画像や音声も含まれること、経費承認や出張申請などのプロセスを自動化できることもあげた。そしてこれからは、Knowledge Managementアプリケーションのための基盤を提供する、とした。
Lotus DominoのLinuxプラン
Linux関連の話題に入ると、Linuxのインタラクティブなコラボレーション用途に関して、率先してリーダーシップを発揮していきたい、と語った。Lotus Domino for Linuxの開発に当たっては、AIX版やSoralis版のLotus Dominoを手がけたチームが作業を行なっており、現在最終テスト段階に入っているとのことだ。対応するディストリビューションは、Caldera Open Linux、Red Hat Linux、SuSE、TurboLinuxなど。また、Linuxに対しては、カーネルの詳細部分までサポートするとしている。そして、Harbison氏は、Lotus Domino for Linuxの開発チームを、Linus B. Torvalds氏に紹介することに成功し、Lotus Domino for Linuxをテスト用に渡したというエピソードも語った。
現在、米Lotus DevelopmentのLotus Notes/DominoのWebサイトで、Lotus Domino for Linux Sneak Previewを公開中だが、こうした行動を通して好意的なコメントが返ってきたという。たとえば、インストールの簡単さ、Lotus Dominoの起動の速さなどについてである。
さらに今後のスケジュールを発表し、年末までにはLotus Domino R5 for Linuxを米国内で提供し、日本市場には2000年Q1(第一四半期)に日本語版として投入したいという。
最後に質疑応答に入ったのだが、概要は以下のとおり。
Linuxに対してどう考えているのか、ということであれば、基本的にはOSを選択するのはお客様だ。我々は「このOSを選択してください」という指針は出していない。そして、お客様がLinuxを選択されたなら、Linuxの上でベストなシステムを提供していきたい。AIXで提供されているもの、Windows NTで提供されているものは、Linuxでも提供していく。
さらに追加説明すると、米国の自動車パーツメーカーでは、Lotus Dominoによってデータなどを全米的に蓄積できるような計画をしている。このような場合、在庫データの管理などで、店舗にもLotus Dominoが必要になってくる。そこで、本社ではAIXベースのLotus Dominoが稼働し、それぞれの店舗サーバはLinuxを採用することになった。Linux採用の理由は、コスト、リモート管理、信頼性といった面からだ。
質問の内容から見ても分かるとおり、このワークショップには、いままでほかのプラットホームでロータス ドミノに関わってきたSI関係者が多数詰めかけてきたと思われる。企業の情報システム分野で高いシェアを誇るロータス ドミノの関係者にも、Linuxプラットホームの関心が高まっているといえるだろう。
※1 Lotus Domino Designer Lotus Domino上のアプリケーション開発は、バージョンR5から登場したLotus Domino Designerというビジュアル環境を使うことができる。これはWindows上で動作するツールだが、サイト構築からコーディングまでを統合的に行なうことができ、他の開発環境(たとえばCold Fusionなど)を呼びだして使うことが可能となっている※2 Lotus Notes Lotus Dominoはサーバであり、そのクライアントがLotus Notes。
とはいえ、今やLotus NotesはWebのブラウズからメーラ、スケジューリングまでをこなす、汎用的なインターネットクライアントソフトウェア(Lotus Dominoがサーバでなくてもよい)となっている。また、Lotus Domino R5も、主にJava技術の採用によって、Webブラウザをクライアントとして使用可能。DominoとNotesは、それぞれがインターネット標準技術への対応を果たした結果、独立して動作できるようになり、それぞれインターネットサーバ/インターネットクライアントとしての発展を遂げているというわけだ。ただし、Lotus DominoとLotus Notesを組み合わせて使用すれば、データのレプリケーションといった便利な使い方も可能になる。