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(株)ロータスによる「ロータス ノーツドミノとLinux」ワークショップ概要

1999年10月01日 23時40分更新

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 9月29日から30日に、東京ファッションタウンで行なわれたLinuxWolrd Expo/Tokyo '99では、(株)ロータスによる「ロータス ノーツドミノとLinux」と題したワークショップが行なわれた。

説明を行なった、Lotus Development Corporation Worldwide Brand Manager Don Harbison氏

 このワークショップは110席の会場がほぼ埋まるほどの盛況となった。全体の流れとしては、Lotus Notes、Lotus Domino(現在for Linuxは英語版のみのため、アルファベットで表記する)の特徴や事例の紹介をし、後半はLinuxビジネスの現在までの流れとLotus Domino for Linuxの紹介、最後に質疑応答という形で進んでいった。

 Lotus Dominoは、メッセージング分野から発展してきたWebアプリケーションサーバ。メールやディスカッション、文書共有といった、いわゆるグループウェア的機能を下敷きに、現在ではORB(Object Request Broker)を装備しJavaに対応するなど、Webアプリケーションサーバとしての展開がなされている。

 Lotus Dominoの紹介では、2000年のシドニーオリンピックのWebページでも同製品が使用されることなどをあげ、いかにLotus Dominoが信頼され、市場を獲得しているかを語るとともに、スポーツ競技のスコア中継のような、ダイナミックに内容が変わるデータこそ、Dominoで扱うのに適している、とした。

 さらに、Lotus DominoがIBMのAIXをはじめ、Soralis、HP-UX、Windows NTなどに対応するマルチプラットホーム製品であること、そしてまた、POPやIMAP4といったインターネット上のサービスプロトコルのほとんどを実装していることも紹介した。こうしたLotus Dominoの能力により、グループ間の情報共有や情報交換を行ない、物理的時間的な境界線をまたがってコラボレーションが行なえること、共有する情報は非構造化された文書のみならず、画像や音声も含まれること、経費承認や出張申請などのプロセスを自動化できることもあげた。そしてこれからは、Knowledge Managementアプリケーションのための基盤を提供する、とした。

Lotus DominoのLinuxプラン

 Linux関連の話題に入ると、Linuxのインタラクティブなコラボレーション用途に関して、率先してリーダーシップを発揮していきたい、と語った。Lotus Domino for Linuxの開発に当たっては、AIX版やSoralis版のLotus Dominoを手がけたチームが作業を行なっており、現在最終テスト段階に入っているとのことだ。対応するディストリビューションは、Caldera Open Linux、Red Hat Linux、SuSE、TurboLinuxなど。また、Linuxに対しては、カーネルの詳細部分までサポートするとしている。そして、Harbison氏は、Lotus Domino for Linuxの開発チームを、Linus B. Torvalds氏に紹介することに成功し、Lotus Domino for Linuxをテスト用に渡したというエピソードも語った。

 現在、米Lotus DevelopmentのLotus Notes/DominoのWebサイトで、Lotus Domino for Linux Sneak Previewを公開中だが、こうした行動を通して好意的なコメントが返ってきたという。たとえば、インストールの簡単さ、Lotus Dominoの起動の速さなどについてである。

 さらに今後のスケジュールを発表し、年末までにはLotus Domino R5 for Linuxを米国内で提供し、日本市場には2000年Q1(第一四半期)に日本語版として投入したいという。

 最後に質疑応答に入ったのだが、概要は以下のとおり。

[Q] Lotus Domino Designer(※1)は、Lotus Notes(※2)で動作するアプリケーションだが、Dominoアプリケーションの開発はWindowsなど、Notesがある環境で行なうことになるのか
[A] Yes。補足として、今のところクライアントであるLotus Notesについては移植の計画はないが、KDEやGNOMEなどの存在もあるため、GUIについては戦略を練っている段階である。
[Q] Lotus DominoのLinux対応は、ただ単にDominoの選択肢の1つにLinuxが加わったという、それだけのことなのか。Linuxならではのメリットは?
[A] 日本の場合はPCサーバ環境はWindows NTかOS2限定だったが、Linuxというプラットホームが加わることにより、リモートメンテナンスの部分にメリットがあるだろう。大きいシステムの支点に入れていただけば、管理コストの低減になる。我々も、TCOに関してはもっとコミットしていきたい。
 Linuxに対してどう考えているのか、ということであれば、基本的にはOSを選択するのはお客様だ。我々は「このOSを選択してください」という指針は出していない。そして、お客様がLinuxを選択されたなら、Linuxの上でベストなシステムを提供していきたい。AIXで提供されているもの、Windows NTで提供されているものは、Linuxでも提供していく。
 さらに追加説明すると、米国の自動車パーツメーカーでは、Lotus Dominoによってデータなどを全米的に蓄積できるような計画をしている。このような場合、在庫データの管理などで、店舗にもLotus Dominoが必要になってくる。そこで、本社ではAIXベースのLotus Dominoが稼働し、それぞれの店舗サーバはLinuxを採用することになった。Linux採用の理由は、コスト、リモート管理、信頼性といった面からだ。
[Q] 米国ではNotes.net(Lotus Domino/Notes R5の情報サイト)などでLotus DominoのLinux情報を公開しているとのことだが、日本語での質問は大丈夫なのか
[A] (Webサイトの機能としては)日本語は通るが、答えるのが米国のスタッフなので、実質英語によるディスカッションになる。しかし、国内においても、ロータス ドミノのLinux関連ディスカッションページもしくはメーリングリストを立ち上げる計画がある。

質問の内容から見ても分かるとおり、このワークショップには、いままでほかのプラットホームでロータス ドミノに関わってきたSI関係者が多数詰めかけてきたと思われる。企業の情報システム分野で高いシェアを誇るロータス ドミノの関係者にも、Linuxプラットホームの関心が高まっているといえるだろう。

※1 Lotus Domino Designer Lotus Domino上のアプリケーション開発は、バージョンR5から登場したLotus Domino Designerというビジュアル環境を使うことができる。これはWindows上で動作するツールだが、サイト構築からコーディングまでを統合的に行なうことができ、他の開発環境(たとえばCold Fusionなど)を呼びだして使うことが可能となっている

※2 Lotus Notes Lotus Dominoはサーバであり、そのクライアントがLotus Notes。
とはいえ、今やLotus NotesはWebのブラウズからメーラ、スケジューリングまでをこなす、汎用的なインターネットクライアントソフトウェア(Lotus Dominoがサーバでなくてもよい)となっている。また、Lotus Domino R5も、主にJava技術の採用によって、Webブラウザをクライアントとして使用可能。DominoとNotesは、それぞれがインターネット標準技術への対応を果たした結果、独立して動作できるようになり、それぞれインターネットサーバ/インターネットクライアントとしての発展を遂げているというわけだ。ただし、Lotus DominoとLotus Notesを組み合わせて使用すれば、データのレプリケーションといった便利な使い方も可能になる。

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