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「スゴすばらしい」完成度の「Fable II」制作秘話を聞いてきた!

2009年02月18日 20時00分更新

文● 内田幸二

ローカライズチームへの伝令
「日本語化するときは、±0.2秒以内で!」

――50万ワードのフルボイス、そして作業時間はあまりないという状態で、どのように進めていったのですか?

吉田:とにかく膨大だったので、「やりたかったけどできなかった」という後悔を残さないためにも「いちばん重要な部分」、「時間があればできるところ」といった形で、作業の重要性をまず最初にキッチリと区分けしていきました。

――ちなみに、一番重要な部分とはどこだと考えましたか?

吉田:RPGですので、物語の部分はしっかり伝えるべきだと考え、音声の部分とクエストのストーリー部分を最重要項目と考えました。ストーリーに関する部分は特に力を入れています。なので、私自身の中でやり残したことはありませんね。ただ、時間があればもっと深くやれた部分はあります。

もちろん、音声部分だけでなく字幕部分も100%ローカライズされている

――では、実作業で苦労された点などありますか?

吉田:たくさんあります(笑) 特に音声データですね。音声は、仕様がしっかり決まっていて、メインのストーリー部分は「英語版の音声±0.2秒以内」に収めるようにという制約があったんです。仕様通りに収録しないとディスクに収まらないという問題もあるので、±0.2秒の単位をキッチリ計って音声を収録しています。なので、ミキサーさんにはだいぶご苦労をかけました。

――収録は、相当なご苦労だったんですね……。

山沢:本当に大変でした。最初に上がってきた日本語訳は、英語の音声が完成する前に翻訳されたものが多かったので、大幅に手を入れる必要がありました。収録時のリテイクをできるだけ減らせるようセリフをひとつひとつ読み上げて調整していきましたが、やはり収録の現場でも微調整が頻繁にあり、最後の最後まで大変でした。
吉田:ただ、意識的に仕様の基準値よりも少ない時間で収録していったこともあって、結果的には容量をオーバーするようなこともなく、データ的にはすんなりと終わった感じです。

多くのセリフがオリジナルから±0.2秒の再生時間。そう聞くと2度目のプレイの見方も変わるかも!

バーナム語録も
メイド・イン・ジャパン!

――尺以外にも、ご苦労されたことがありそうですが、ほかにもありましたか?

吉田:メインストーリー部分は、台本から場面もみえるため、声優さんも感情が入れやすいと思うのですが、、町の人や通りすがりの人などは場面が見えにくいため、指示する方も演じる方も大変でした。というのも、町の人の受け答えは、英雄側の好感度によって、「やぁ!」の同じ台詞でも演じ分けなければならないので、使い分けの指示にも非常に苦労しました。

序盤から終盤まで、行く先々で出会うことになる実業家のバーナム。商人から購入したボキャブラリウムを使って「スゴすばらしい」や「スバラ美しい」など序盤からプレイヤーの心に印象を残す。声を担当しているのは機動武闘伝Gガンダムで東方不敗を演じた秋元羊介氏

山沢:翻訳の観点で言えば、笑いの部分にはだいぶ悩まされました。「Fable II」は、台詞に笑いの要素をたくさん含むタイトルだと思うのですが、英語だとおもしろくても日本語に訳すと意味の分からないセリフも多かったんです。ダジャレや言葉遊びなどは特にその良い例かと思います。

 バーナムの独特な言い回しは、オリジナル版にもあったものなんですね。他言語の開発チームも開発元に「この言葉はどういう意味なんだ?」などと質問していましたが、あの言い回しは英語でも辞書などには載っていない造語なんです。「オリジナルが造語なら日本語でも新たに作らないと」と思って作ったのが、日本語版の言い回しです。
 「スゴすばらしい」の場合、最初は「ワンダホー」と訳されていました。でも、これではおもしろさが出ないなと感じていたんです。英語版のバーナムは2つの言葉を掛け合わせた造語だったので、そのニュアンスを活かそうと思って考えてできたのが「スゴすばらしい」などの言い回しでした。

吉田:日本人的感覚では、アメリカンジョークの笑いにはズレを感じると思うのですが、オリジナルにもそういったニュアンスがたくさんありました。その部分はそのまま訳しても意味がないので、ユーモアは残しつつ日本人が面白いと思うような内容に変更するようお願いしました。そのせいで彼女にはだいぶ苦労させたかも知れませんね(笑)

クエストをクリアすることで、バーナムは愛用したボキャブラリウムを英雄に手渡すことになる。しかし、次に会う時は……

山沢:作る方としては、台詞回しで笑わせる部分も多いので、「オリジナルの笑いを崩してはいけない」という気持ちでいっぱいでした。

(次ページへ続く)

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