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企業・業界レポート 第3回

中小企業と大学を繋ぐ都立産業技術研究センターとは?

目的がハッキリしていれば産学公連携は成功する

2008年12月09日 18時37分更新

文● 秋山文野

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 ものづくりの重要性が盛んに説かれている昨今だが中小企業においては、その基盤となる技術開発への投資は必ずしも容易ではない。そこで、東京都産業技術研究所と都内の中小企業振興センターの技術部門を統合して2006年に設立されたのが、地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センターである。

 東京都立産業技術研究センターは、技術の事業化支援の一環として、中小企業(産)と大学(学)、公的研究所(公)とが結びついて新たなビジネスを興せるよう「産学公コーディネート」事業を行っている。環境・繊維、電機・電子、機械・金属、情報・通信、化学・バイオと5分野の専門コーディネーターが中小企業からの相談(技術ニーズ)を受け付け、大学や公的研究機関に存在する技術シーズ(種)に結びつける。ちなみに2007年度の成約実績は全分野で19件にもおよぶ。

瀧山森雄氏

東京都立産業技術研究センター 産学公連携コーディネート窓口 情報・通信分野、サービス業分野担当コーディネーター。日本電気、日本システム建設、日本メカトロニクスを経て、現在、有限会社イーアイイーを設立し、中小企業の経営指導およびIT導入支援、環境経営支援等を行っている。保有資格は、技術士(情報工学)、中小企業診断士、ITコーディネーター他。


3とおりある産学連携の手法

―― 産学連携はどういった形態で行われるのですか?

 企業が新しい製品・サービスを自社だけで開発できない場合に、大まかに3つの方法があります。1つ目は共同研究ですね。契約に基づき、企業は研究費用を負担し、大学と企業、両方から人が出て研究を進めていく。2つ目は委託研究です。開発目標と開発費用を明確にして、、企業が開発費用を負担し、大学からの研究成果の提供を受けます。3つ目は寄付金。企業が大学に寄付をして、その寄付金の中で大学がいろいろ研究するという形です。

 研究内容は原則的に自由ですが、大学側は企業のニーズに合わせていくという形です。現時点で一番多いのは共同研究ですね。その次に委託研究。寄付については私自身は経験がないですがコーディネートの形はその3つを対象としています。

―― 産業技術研究センターのコーディネート事業は、その中でどういった役割になるのでしょうか

 東京都の産業労働局の商工部が、東京都産学公連携事業ということをやっております。原則的に東京都に拠点のある中小企業が新しい製品やサービスを開発したいが自社の技術だけでは足りないというときに、大学や東京、神奈川・筑波などの産業技術センターなどの技術も導入して、新しい製品やサービスの開発を進められるようにするわけです。大学や公的研究機関が持っている技術シーズを産業界のニーズにコーディネートするというのが役割です。

―― 企業からの引き合いがあってスタートするのが一般的でしょうか?

 中小企業の中でもベンチャーとか、技術開発志向の強い企業さんから「こういうことがやりたいんだけど、いい大学の研究室はありませんか」と相談を受けてスタートします。ただモヤモヤと「何かものを作りたい」ということではなく、「こういうものを開発しようとしている」と、やりたいこと、いつ頃までにどうしたいという部分がはっきりしている場合です。

―― 企業側は何に気をつけるべきですか

 まずは、テーマと内容が市場性、マーケティング、どういう顧客を狙って、どういった物あるいはサービスを提供するか、売れる見込みがあるかという部分がはっきりしていないといけないでしょうね。

 うまく大学や研究者とコーディネートできて、開発が進む案件というのは、そこがハッキリしていますね。いいものを作ったと自分では思っても自己満足ということはよくあります。作ったものが売れるかどうかはにらんでおかないと。  あとは、うまく助成金を使うといいです。東京都にもありますし、それ以外にもJST(独立行政法人科学技術振興機構)の助成金は大きいですよ。うまく利用すれば、たとえば本来は3000万円掛かる開発費が1000万円、1500万円で済むこともありますから。

次ページ「産学連携の中での企業エンジニアの役割とは?」に続く

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