PDC2008の2日目の話題は「Windows 7」である。前日は「Windows Azure」で今日は7と、今回のPDCはWindowsネタばかりだが、実のところセッションなどを見ていると、両者に対する来場者の熱意の差を感じる。
Windows Azureは概要のセッションで、部屋をあふれてしまうぐらい人が入っていた。それに対してWindows 7は、具体的なプログラミングを除くと、概要のセッションはガラガラなのである。たぶん現状では、ASP.NETなどを使ってウェブサービスに関わる開発に関わる技術者のほうが多いのであろう。これに対してWindows 7のアプリケーションに興味があるのは、パッケージソフトウェアやそれに近いビジネスを行なうソフトメーカーの技術者のみだ。それが、実際のセッションの人数の違いに影響しているのだろう。
そう考えると、Windows Azureは特に米国では大きく「ウケる」ような気がする。だいたい日本と違って米国では、「メールサーバーといえばExchange」というように、基幹システムをマイクロソフト製品で固めてしまう企業が少なくない。一方日本では、クライアントやファイルサーバーにマイクロソフト製品を使っても、メールサーバーにはLinuxや専用マシンなどを使うところが少なくない。
社内のシステムがマイクロソフト製品で固められているとすると、これをAzureに移行するのはそんなに難しくない。最近では、社内のシステムであってもウェブベースにするものがあるし、こうしたシステムを含めてAzureに移してしまえば、少なくともハードウェア運用の手間はなくなる。そういうわけで、多くの開発者はAzureに興味があるのだと思われる。
とはいえ、PDC2008の来場者がこれまでよりも少ない……というわけではない。「Longhorn(Windows Vistaのコード名)のプレビューが出る!」と事前に伝えられたために、事前登録がストップしてしまった2003年ほどではないが、これまでのPDCよりは来場者が多いように思う。来場者が多いのは、Windows 7のβ版が160GBのポータブルHDDで配布されることが、事前に宣伝されていたからからもしれない。実はこの件に関して、マイナーながらマイクロソフトは、コマーシャルを作っていて、Youtubeにビデオがある。
HDDで配布が行なわれるのは、「もうDVD 1枚には入りきらないし、Blu-rayディスクも普及していないからだ」などと言われていたが、実際にはHDDとは別にDVDもあり、HDDは単なるプレゼントというかオマケなのである。とはいえ、PDCは無料のイベントではなく、参加費の中からHDDの代金が出ている。その代わりなのかどうかはわからないが、来場者に配布されるバッグが、なんだか安物のエコバッグのような情けないものになってしまった(従来まではちゃんとしたショルダーバックだった)。
話を戻そう。配布された160GB HDDの中には、Windows 7のβ版だけでなく、Windows Server 2008 R2のβ版、そのほかにドキュメントなどが入っている。しかし、単にβ版を配布するという点から言えば、DVDでも用が足りる。
まあ、アメリカ人って「Free」が好き。何かあれば、特典として「Free」で何かもらえるという話だけでなく、飲み物は「Fat Free」であり、禁煙の建物は「Smoke Free」なのである。
このHDDは、2日目の基調講演が終わった午後から配布された。先に配ると基調講演も聞かずに、インストールしにホテルに帰っちゃう来場者が多いからだろう。
使われているHDDはWestan Digitalの製品で、PDC2008のロゴ入りのもの。中にはVirtual PCも入っていて、ISOイメージを使って仮想環境へのインストールも可能なようだ。
Windows 7のβ版入りHDD欲しさにPDCにやってきたのに、来場者の多くはWindows 7よりもAzureに興味がある。これが現在のマイクロソフトを取り巻く状況、というやつかもしれない。
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