10月27~30日まで開催された「PDC2008」に引き続き、11月5日(現地時間)から、米国ロサンゼルスにて開発者向けカンファレンス「WinHEC 2008」が開催されている。
イベントは地味目だが、内容は濃いWinHEC
先週のPDCとは異なり、WinHECはハードウェア技術者やデバイスドライバーなど、ハードウェアがテーマのイベントだ。とはいえ、Windowsをマイクロソフトから購入しているOEMメーカー(パソコンメーカー)は、同社から直接サポートが受けられる。そのため、このイベントに訪れる来場者の大半は、独立系のドライバー開発者や半導体メーカー、中小周辺機器メーカーの技術者だ。
マイクロソフトは自身がソフトウェアメーカーであるためか、ソフトウェア技術者向けのPDCは派手に行なうが、WinHECになると、どうも地味な感じになる。規模としても、先週同じ場所で行なわれたPDCの半分以下、という感じだ。
ただ、WinHECはデバイスドライバーやハードウェア技術者向けイベントであるため、Windowsの内部構造や詳細な動作といった細かい話を聞けるのが強みだ。PDCはソフトウェア開発者向けであるため、APIよりも下の部分は触れる程度で、Windows内部の話は聞けない。
WinHEC初日の基調講演には、Windows 7担当の上級副社長スティーブン・シノフスキー(Steven Sinofsky)氏が、PDCに引き続いて登場した。講演ではユーザーインターフェースの話はまったくなく、ハードウェア関連の話題に終始した。
筆者が今回2週間も取材に来たのは、もちろんWindows 7のためだが、やはりWinHECとPDCでは、同じ話題でも扱い方が全然違う。例えば、Windows 7の特徴のひとつは電力管理機能が強化され、より長いバッテリーライフを実現できることにある。これをテーマにすると、PDCでは「どうすればより、電力消費の少ないアプリケーションを作れるのか?」といった話になるのに対して、WinHECでは「電力を下げるためにどんな仕組みが採用され、そのためにハードウェアやデバイスドライバーで何をすべきか」といった話題になる。Windows 7は、見た目の部分では「タスクバーなどが改良されただけのマイナーバージョンアップ」と言われているが、デバイス関連は、比較的大きく変わっているようだ。
LonghornがVistaで無くしたものを取り戻せるか
実のところVistaは、「モバイルを最初に意識したWindows」だと言われている。従来もACPIを元にした電力管理機能はあったが、もっぱら電力削減はCPUやチップセットの仕事だった。Windows 7ではDVD再生時の消費電力が削減されるなど、さまざまな省電力機能が組み込まれるようだ。
とはいえ、Vistaの例を考えると、Windows 7の出荷時に今回発表した内容がどこまで組み込まれるのかは、分からない部分もある。2003年のPDCなどで公開された「Longhorn」(Vistaのコードネーム)は、現在のVistaとはまるで違ったOSだった。例えば当時のデモでは、携帯電話に着信するとBluetooth経由でLonghorn搭載パソコンが着信を検出。電話番号からユーザーを判断し、その人との最近のメールやメッセンジャーのやりとり、アドレス帳に登録した顔写真などを表示するという機能があった。技術的にはできるのだろうが、今のVistaにこんな機能はない。
Windows XPからVistaの時に比べると、VistaからWindows 7へのステップは小さく見える。どこにも「夢のような」機能は搭載されておらず、かなり着実そうではある。だが、Windows 7で搭載される「デバイスステージ」(関連記事の3ページ)のような新機能は、そもそもLonghronの構想にあったものだ。
Vistaでは、大変な目にあったマイクロソフトだが、Windows 7で少し取り戻せるかどうか。その多くの部分はアプリケーションデベロッパーではなく、WinHECに来るハードウェア関連の開発者にかかっている。さて今回のWindows 7は、ハードウェア技術者の信任を得られるのだろうか。
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