パソコンの動作を速くする方法の1つが「オーバークロック」(CPUを定められたクロック以上で高速動作させること)。オーバークロックに挑戦するにあたって知っておきたいのは今回教える用語「ステッピング」だ。初心者向け講座とうたっていた連載内容もかなりマニアックになってきたが、初心者の方にこそ楽しんで読んでもらいたい。
CPUコアの細かなバージョンがステッピング
ステッピングとは、CPUコアの細かなバージョンを表す言葉だ。ソフトウェアでバグの修正や機能向上を目的として、細かなバージョンアップが繰り返されることはよくある話。
CPUでも同じように不具合(これをエラッタと呼んでいる。エラッタについては第12回で解説予定)の修正や新機能の追加、歩留まり向上などのためにCPUコアを細かく改良することがある。このマイナーバージョンアップを「ステッピングの変更」と呼んでいる。
ステッピングが変わってもCPUの性能自体は基本的に同じだ。だが、新しいステッピングでは「クリティカルパス」と呼ばれる動作クロック向上のネックとなる部分を取り除くことで、従来よりも高クロックで動作させられるようになっているケースが多い。
また、ステッピングの変更によってCPUダイのサイズが小さくなったり、消費電力が小さくなることもある。そのためオーバークロックに挑戦したり、できるだけ発熱を小さくしたい場合などにステッピングが重要になってくるのだ。
定格で使うのならステッピングにこだわらなくてもよいが、基本的には新しいステッピングの方が不具合を解消していることが多く、望ましいともいえる。ただし、新ステッピングのCPUに対応するためにはマザーボードのBIOSをアップデートする必要がある場合もあるので注意しよう。
ステッピングの見分け方
ほとんどの場合、ステッピングが変わってもCPUの名称は変わらないため、パッケージだけでステッピングのバージョンを見分けるのは難しい。それでは実際にインテル製CPUのステッピングを見分ける方法を紹介しよう。
CPUのリテールボックス(化粧箱)に貼られているシール(バーコード付き)に「S-spec」という5文字の文字列が書かれている。このS-specには、動作クロックやキャッシュ容量、ステッピングといったCPUの詳細仕様が含まれているのだ。
S-specは一見するとランダムな文字列なのでそのままだと意味は分からないが、インテルの「Processor Spec Finder」というページにS-specを入力すれば、CPUの詳細仕様を知ることができる。
「Processor Specifications」の「Core Stepping」の項目が、ステッピングを表す。例えば「SLB9K」なら、Core 2 Duo E8500で、L2キャッシュサイズは6MB、プロセスルールは45nm、ステッピングはE0といった具合だ。
S-specは、リテールボックスだけでなく、CPU自体にも刻印されている。インテル製CPUをお持ちの方は、一度確認してみてはいかがだろうか。
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