
数ヵ月にわたってお届けしてきたCPU編も今回で最終回だ。しめくくりのテーマは「最高動作温度」。CPUのヒートシンクを選ぶ際、特にファンレス動作に挑戦したい場合などには必ず知っておきたい。
最高動作温度にもいろいろある
CPUに限らず半導体(LSI)は、動作時の温度があまり高いと正常に動作しなくなる。さらに温度が上がると壊れてしまうこともある。温度が上がって正常に動作しなくなることを「熱暴走」と呼んでいる。CPUファンにホコリが詰まって正常に回転しなくなったり、真夏などに室温が高くなると起きやすい現象だ。
今回の用語「最高動作温度」とは、CPUが正常に動作可能な上限の温度のこと。熱暴走を防ぐには、CPUの温度が最高動作温度を絶対に超えないように、冷却機構を設計する必要がある。ただし、最高動作温度といっても、CPUメーカーやCPU形状によって、表記の仕方が異なることに注意が必要だ。
CPUのデータシートで規定されている最高動作温度は「T-Junction(Tj)」「T-Case(Tc)」「T-Sink(Tsink)」「T-Ambient(Ta)」の4種類がある。具体的には下記の温度を示している。
最高動作温度の種類 | |
---|---|
T-Junction | CPU内部のコアの温度 |
T-Case | コア表面に装着されている金属製プレート(インテグレーテッド・ヒート・スプレッダー)の中央部分の温度 |
T-Sink | CPUとヒートシンクの接触部中央の温度 |
T-Ambient | ヒートシンク上の空気温度 |
Pentium 4以降のデスクトップ向けCPUは欠損などを防ぐため、コアの表面に金属製プレートを装着することが一般的になっている。そのためにT-Caseが用いられることが多い。
例えばインテルの最新CPU、Core 2 Duo E8600(3.33GHz)のT-Caseは「72.4℃」となっている。つまり、金属製プレートの中央温度がこの温度を超えないように冷却すればいいわけだ。ただしT-Caseギリギリで使っていると、何らかの原因で冷却性能が落ちると熱暴走してしまう。実際には十分なマージンをとって設計することになる。
ステッピング変更で最高動作温度が上がることも
では例題をひとつ。ここにTDPが同じ2つのCPUがある。1つはT-Caseが「60℃」、もう1つはT-Caseが「70℃」だとしたら、どちらのCPUのほうがカンタンに冷却できるだろうか。
答えはもちろん「70℃」だ。TDPが同じということは、基本的な発熱量は同じと考えてよい。だが、T-Caseが70℃のCPUなら、金属製プレートの中央温度が70℃以下になるように冷却すればいい。これに対し、T-Caseが60℃のCPUの場合、中央温度が60℃以下になるように冷却しなければならないのだ。
また、同じCPUでもステッピングが変更されることで、TDPや最高動作温度が変わることがある。(ステッピングについては第11回を参照)
例えばCore 2 Quad Q6600(2.40GHz)の場合、当初出荷されていた「B3」ステッピングではTDPが105W、T-Caseは62.2℃だった。だが、2007年6月以降にリテールパッケージとして出荷された「G0」ステッピングではTDPが95Wに下げられ、T-Caseは73.2℃へと11℃も上がっている。その分、冷却能力に対する要求も下がり、クーラーの低騒音化や小型化が可能になっている。
(次のページにつづく)

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