2ケタ成長が期待される日本・アジアのビジネス、SIパートナービジネスが大きな鍵を握る
企業やSIerが“付き合いやすいColt”へ、大江代表に聞く2025年の成長戦略
2025年01月28日 11時00分更新
「欧州では高いシェアを獲得できたので、次にビジネスを伸ばしたいのは日本を含むアジア地域です。アジア市場には『2ケタ以上の成長』が期待されており、投資も重点的に行う計画です」
2023年に米Lumen TechnologiesのEMEA(欧州、中東、アフリカ)事業を買収し、欧州最大規模の法人向けネットワークプロバイダーになったColtテクノロジーサービス(以下、Colt)。同社は現在、日本およびAPAC(アジア太平洋地域)のビジネス強化に乗り出している。2023年に発表した日本市場に対する150億円規模の投資計画、そして西日本へのネットワーク拡張計画はその一環だ。
こうした動きは、Colt自身の成長を目指す戦略というだけでなく、欧州企業で高まる日本・APACへのネットワーク接続ニーズに対応したものだ。そしてもちろん、日本企業にも大きなベネフィットをもたらす。2024年には、日本企業の海外進出をグローバルで支援する体制の整備も発表した。
2024年までの“準備段階”を経て、2025年のColtは日本でどのようにビジネスを加速させていくのか。Colt日本法人の代表を務め、APACの営業活動も統括する大江克哉氏に、これからのColtが狙うものや具体的な取り組みを聞いた。
次なる成長市場、日本・APACのビジネスを拡大するための戦略
冒頭に挙げた大江氏のコメントにもあるとおり、ColtではAPACを「次なる成長市場」と位置付け、高いビジネス成長を期待している。中でも日本は特に成長のポテンシャルを持つ市場であり、寄せられる期待も大きい。
日本における成長戦略として、Coltが掲げるのが“3本の矢”だ。
具体的には、日本・APAC企業の海外進出をグローバルのColtがワンチームとなって支援する「グローバル営業体制」、各国の証券取引所への高速/低遅延の接続性を生かした「キャピタルマーケット(金融市場)向けサービス強化」、そして日本市場での拡大戦略で重要な役割を果たす「SI(システムインテグレーター)成長モデルの確立」という、3つのカテゴリーでの戦略を指す。
大江氏は、この3つの戦略の優先度は「SI成長モデルの確立」「グローバル営業体制」「キャピタルマーケット向けサービス強化」の順だと説明する。以下、それぞれの取り組みを詳しく見ていく。
SIerが“使いやすい”Coltを目指し、西日本にとどまらないエリア拡張も
日本市場で2025年に最も注力するのが「SI成長モデルの確立」だ。Coltでは、従来あったエンタープライズ向けの直販営業チーム、通信事業者向けの回線卸売営業チームに加えて、2023年にSIパートナー向け営業チームを発足させている。
これは“SIパートナー(SIer)が使いやすいColt”を具現化することで、これまで強みを持つ金融業界の顧客だけでなく、SIerを通じて他業界の企業、さらには官公庁・自治体でのサービス採用を拡大させる戦略だ。
「SIパートナー様がお客様にソリューションをご提案する際、その“部品”として使いやすいネットワークサービスをご提供していきます。Colt本社でも『日本のGo To Marketを強化するためには、SIパートナー様と手を組まないと無理だ』と理解しており、日本法人独自の組織としてSIパートナー専属の営業チームが作られました」
専任チームを立ち上げた結果、SIer経由のビジネスはすでに30%以上伸びており、「今後3年間も継続して、年率20%程度の成長を期待しています」と大江氏は説明する。
現在は特に、顧客企業のインターネットトラフィック急増を背景として、広帯域/帯域保証型のアクセス回線サービス「Colt IP Access」へのニーズが非常に高まっているという。契約から短期間(平均2カ月以内)でカットオーバーできる迅速さが、SIerにとって“使いやすい”サービスになっているという。
「さらに、現在のインターネット接続回線の構築では、SD-WANやSASE、クラウド接続などを組み込んだ複雑なソリューション提案も求められます。ネットワーク構築はSIパートナー様が手がけるのが前提ですが、われわれの専任チームにいるSEが提案から構築までをお手伝いできることも強みです。SIパートナー様を支援するため、将来的にはネットワーク運用までサービスを拡大したいと考えています」
また、すでに設計フェーズに入った西日本へのネットワーク拡大も、実はSIerからの強い求めに応じたものだという。SIerが西日本に構える主要データセンターにColtの回線を引き込むことで、SIerが顧客企業の接続ニーズに短期間で対応できる“使いやすいColt”を実現していく。2025年後半には岡山、2026年中ごろまでには広島、福岡への延伸を完了する計画だ。
この日本国内におけるネットワーク拡大計画は、西日本にとどまるものではないという。大江氏は、SIerからは北関東や東北エリアのデータセンター接続ニーズも出てきており、次のステップとしてそれらのエリアでの調査・検討に着手していると明かした。
もうひとつ、SIerの要望に応える取り組みとして、Coltではサービス品質のさらなる向上、“日本基準の品質”への対応も進めているという。これはグローバルのColtとしての取り組みであり、昨年には本社からオペレーション/エンジニアリングの担当幹部が来日し、日本の顧客企業に直接ヒアリングしたうえで、品質改善のアクションプランを策定した。
「単にネットワークがダウンしないというレベルにとどまらず、たとえば障害復旧にかかる時間、問い合わせ回答までの時間など、日本のお客様やSIパートナー様はサービス品質を厳しく問われます。したがって、欧州では品質が高いと評価されているColtも、さらに品質を向上させていかなければならない。もっとも、これは日本のお客様に限らずすべてのお客様に価値があることだと考え、グローバルで取り組んでいます」
海外進出を図る日本企業にワンストップでのネットワーク構築支援を
日本のビジネス拡大に向けた2つめの戦略が「グローバル営業体制」だ。
Coltの調査によると、日本の大手企業がEMEA地域に持つ海外拠点数は1万7000を超えるという。現地ネットワークの調達やサポート依頼が、Coltを通じてワンストップかつ日本語でできるようになれば、顧客企業の負担は大幅に軽減される。
「欧州で最大規模のネットワークを持つ一方、日本国内にも自社運用のネットワークを持ち、さらにそれを拡大しようとしている。そんなColtは、ワンストップでグローバルなネットワークをご提供しやすい通信事業者であることは間違いありません」
そこでColtでは、本社内にグローバルセールス専門のチームを設け、各国の営業チームやデリバリーチームと連携しながら“ワンチーム”で顧客支援を行う体制を整えた。これにより、日本のエンタープライズ顧客もSIパートナーも、欧州や北米でのネットワークニーズがあればColtを“相談相手”に選びやすくなる。
3つめの戦略である「キャピタルマーケット向けサービス強化」では、各国の証券取引所を結ぶ低遅延/高速ネットワークを利用して、金融業界向けサービス/ソリューションを拡大していく方針だ。たとえば、これまでアジア圏の取引所が中心だった相場情報サービスを、米国のNYSE、NASDAQなどにも拡大する。
また、この戦略の一環としてオーストラリア・シドニー市内への自社ネットワーク拡張も発表している。これまでもオーストラリア証券取引所(ASX)に接続するネットワークは保有していたが、新たにメトロエリアネットワークを敷設し、20以上のデータセンターと250以上の商用ビルを接続して、Colt IP Accessや閉域網、クラウドアクセスなどのサービスを提供する。
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インタビューの中で大江氏は、顧客企業やSIerにとって「使いやすいColt」「付き合いやすいColt」というキーワードを何度か口にした。競合となる日本の通信事業者が多くいる中で、Coltが日本国内のビジネスを成長させていくためには、どこよりもリーズナブルなサービスをレスポンス良く提供できる体制が必要になる。“3本の矢”で掲げるビジネス戦略は、まさにそれを目指したものと言える。
「日本のお客様はいま、ものすごい勢いでグローバル化を進められています。Coltでは、そうしたお客様に対して真剣にグローバルネットワークを提供しようと取り組んでいます。2025年がそうした提案活動の“元年”になると考えています」
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