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昆虫撮影のマクロな魅力──デジカメ撮影術

2008年07月31日 17時16分更新

文● 斉藤博貴

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マクロでカブトムシを撮影

フルサイズ撮像素子搭載のEOS 5D+シグマ50mm F2.8 EX DG マクロで近接撮影すると、絞り値をF8にしても被写界深度はこれほど浅い。露出が許すならF16~22まで絞ってみたいというのが本音だ

カブトムシの撮り方


 深夜/早朝のどちらでも、カメラの露出モードはマニュアル。ポイントはF11程度に絞ること。シャッター速度はフラッシュとシンクロする速度の上限(1/180秒程度)に設定する。撮影感度はクリップオン・ストロボ使用ならISO 200くらい、内蔵ストロボ使用ならISO 400~800くらいが適当だ。AFはシングルAF、記録形式はRAW+JPEG。クリップオン・ストロボは標準設定(またはフル発光)でいい。

 F11まで絞るのは、被写界深度を稼ぐためだ。一般的な50~105mmの画角を持つレンズで近接撮影可能域ギリギリで撮影すると、F5.6程度の絞りでは、カブトムシ全身にピントを合わせることができない。カブトムシは昆虫としては大きいが、それでも被写体としては小さいのだ。例えば、雄カブトムシの角にピントが合ってしまった場合、1cm後方の目や口は被写界深度の外側となり、ピンボケ失敗写真となってしまう。

 ちなみにF11というのは、APS-Cタイプでの話。より被写界深度の狭いフルサイズ機では、F16まで絞りたい。マクロ撮影時のAF精度はイロイロな意味でアバウトになる。厳しい条件下で動体のカブトムシを撮影するためには、少しでも被写界深度を稼ぎたい。

実際に撮ってみた、深夜のカブトムシ編

作例

コニカミノルタα-7D シグマAF18-50mmF3.5-5.6DC F11 1/125秒 ISO 100 外付けストロボ使用

 まずはデジタル一眼レフカメラのレンズキットに同梱する標準ズームの作例から。バウンサー不使用(=ストロボ直当て)だ。ストロボとカブトムシの距離が近いので発光軸にズレが生じて、サイド光のような描写になっている。被写体はカブトムシの雌。直前まで樹液を吸っていたので顔に樹液の泡が付着している。


作例

キヤノンEOS10D EF50mmF1.8(II) F11 1/180秒 ISO 100 外付けストロボ使用

 次に、F1.8クラスの安価な標準レンズを使った作例。F1.8という開放絞りのおかげでファインダーから見える像は明るく、動きの速い被写体も追いやすい。飛び上がる瞬間のカブトムシの動きもフォローできた。被写体はあまり大きく描写できないが、個人的にはこの種のレンズが一番撮影しやすいと考えている。



大光量ストロボが必要な理由


 できるだけ絞るため、大きな光量を持つ外付けストロボが欲しいと書いた。撮影が日中であっても、ストロボの発光量とストロボ発光同調速度の高速さの2つは重要な要素となる(光量が小さくなるハイスピード・シンクロなどは除外)。

 上に述べた使い方では、一般的なストロボの調光限界を超えるので、感度(ISO)で露出を調整する。具体的には試し撮りした後に背面液晶パネルを眺めて最適な露出を探す。また、場所が変われば、ベストな感度も変わる。その都度調整が必要だ。ストロボ撮影する場合は、絞り(F値)、感度(ISO)、距離(被写体とストロボ間)の3要素で露出が決まる。シャッター速度は影響を与えないことも覚えておこう。

 記録形式はRAW+JPEGとしたのは、多少の露出の問題はRAW現像時になんとかリカバーできるからだ。また、オートホワイトバランス(AWB)の発色が気に入らない可能性もあるので、そのあたりを考慮している面もある。男らしく「JPEG1本で行く」というのもありだが、ストロボのチャージ時間でどうせ時間をロスするので、記録メディアに余裕があるならRAWで撮っておいても連写速度は変わらない(ストロボ用外部電源使用時除く)。

 あとは獲物を求めて雑木林をさまようだけだ。

実際に撮ってみた、早朝編

作例

キヤノンEOS 5D シグマ50mm F2.8 EX DG マクロ F16 1/125秒 ISO 400 外付けストロボ使用

 焦点距離50~105mmの各種マクロレンズを使って早朝に撮影したもの。F16まで絞ってもピントが浅いので困った。ちょっとでも周囲が明るいとAFによるピント合わせが格段に楽になる。背景を入れることができるので、撮影地の雰囲気も一緒に残せるのがいい。その意味で50mmクラスのマクロレンズは気に入っている。


作例

キヤノンEOS 5D シグマ50mm F2.8 EX DG マクロ F5.6 1/125秒 ISO 400

 こちらも早朝に撮影したもの。カブトムシの目にピントを合わせた。頭部以外は大口径レンズ特有の美しいボケに溶け込んでいる(笑)。昆虫ポートレートという分野があるならこれが相当するはず。やはり、全身をカッチリ撮りたいなら絞った方がいい。


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