塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第13回
塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”
写真の点と枠
2008年08月17日 15時00分更新
「点」から始まる思考方法は、ほかの物事にもつながっている。例えばマインドマップは中心から外に向かう思考様式を客観視できるようにしたものだ。また、学問研究はまず最初に問題の端緒を明らかにし、そこを起点として論旨を展開するのが一般的だ。
いずれもフォーカスすべき「点」がまずあって、そこから広がっていく方向性を持っている。放射型、発散型といってもいい。全方位に向けてオープンな「点」から出発すれば、どの方向にも展開することが期待できる。
ウェブも同様に「点」から広がる空間だ。個々のウェブページがそれぞれ表現としての価値を持つ「点」。その「点」からほかの「点」にリンクを張ることによって「点」同士が線でつながれ、その線が無数に増加して面的、立体的に発展を続けるのがウェブだ。無数の「点」を相互につなぎ合うことで伸びていく空間。それが大公開時代のインフラたるウェブの姿なのである。
見方を変えると、テキストもフォトもイラストもムービーもプログラムも、すべてウェブを構成する「点」。バラバラに存在する「点」が連携することによって、新たな意味や価値が生まれる。そこにまた人々が自分の表現を公開して、既存の「点」とつないでいく。表現する個人こそ、「点」を生み出す原点なのだ。
写真を撮ったあとは、MacでiPhotoかApertureに取り込み、プラグインを通じてFlickrにアップロードする。Flickrもまた写真を起点としてほかの写真とつながり、人とつながって、広がっていく仕組みだ。ひとつひとつ「点」を確定しながら写真を撮ることは、私にとって、そのような発展する世界に対する自己の原点を打つことにほかならない。
筆者紹介─塩澤一洋
「難しいことをやさしくするのが学者の役目、それを面白くするのが教師の役目」がモットーの成蹊大学法学部教授。専門は民法や著作権法などの法律学。表現を追求する過程でMacと出会い、六法全書とともに欠かせぬツールに。2年間、アップルのお膝元であるシリコンバレーに滞在。アップルを生で感じた経験などを生かして、現在の「大公開時代」を説く。
(MacPeople 2007年7月号より転載)
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