この3年で文化庁も大きく変わった
── 「消費者不在」はよくない状況ですね。こんな状態で補償金を拡大するのか、それとも縮小するのかという結論は出るんでしょうか?
津田 私的録音録画小委員会は、議論を2年以上続けた上、さらに1年延期したような感じですから、もう引き延ばせないでしょうね。恐らく今年の12月で一度会合を終わらせるつもりでしょう。
それまでに参加者が納得する結論が出るかといえば、非常に厳しい状況になったという感じです。JEITAと著作権者は完全に割れているし、消費者は「補償金はおかしいのでは?」という原理原則に立ち返った。もはや噛み合うポイントがどこにもない。
加えて、今、文化庁内部も人事異動があって、著作権課の吉田審議官が別部署に映ってしまいました。文化庁内でこの問題を政治的にまとめられるような人はいなくなっちゃったんじゃないでしょうか。
このままの流れで行くと、Blu-rayには課金し、iPodやHDDレコーダーは対象外にするという結論でまとめるしかないと思います。そう決まるのなら、この先、録音については補償金は縮小するしかないという流れになるでしょう。
── 著作権者の過激な発言がよくクローズアップされますが、結局、この話し合いの主導権は誰が握っていたんですか?
津田 もはや誰が握っているという感じではないです。著作権者が意見を出し、それをJEITAがいなす一方で、ほかの参加者は「もうダメだね」とクールに状況を見ているような感じじゃないですか。
── それは……終わってますね。端から見ていると「この数年間の話し合いは無駄だったのでは?」と感じるところもあります。
津田 個人的にはポジティブな部分もあります。この3年で文化庁を取り巻く環境は大きく変わったんです。今まで文化庁は著作権者の言うことを聞いて「保護してあげる」のがメインの仕事だった。
しかし、今は状況が変わって、音楽やテレビといったコンテンツは、産業振興という意味でも大きなポジションを占めるようになって、総務省や経産省も積極的にコミットするようになってきてた。
加えてインターネットを通じて消費者の声も出てくるようになり、著作権保護の最適水準を決めるときに、単に著作権者の言っていることを鵜呑みにしているだけではダメになってきている。それが明らかになったという意味では前進だし、著作権行政そのものが転換期にきているということだと思います。
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