これまで説明してきた内容は、技術文章を書くために必要な基礎部分についてでした。いわゆる製品を作るための部品集めみたいなものです。今回は、集めた部品の組み立て方──技術文章を構成する方法について説明します。技術文章には「起承転結」の構成ではなく、「序論・本論・結論」を採用します。なぜ起承転結を使わないのでしょうか。
技術文章に「感情」は不要
みなさんは中学や高校で「起承転結」について習いましたね。忘れている人もいるでしょうから簡単に復習しておきましょう。起承転結とはもともと漢詩で用いられていた構成法です。江戸後期の儒学者・歴史家・漢詩人であった頼山陽が、起承転結について分かりやすく説明しています(※出典によっては内容が異なる場合があります)。
<起> 大阪本町糸屋の娘
<承> 姉は十六妹は十四
<転> 諸国大名は弓矢で殺す
<結> 糸屋の娘は眼で殺す
ここでの<起>は物語の紹介です。<承>は物語の詳細。<転>ではそれまでの内容とは大きく異なる話をします。そのことによって<結>を印象深いものにするのです。
では、なぜ起承転結が技術文章に不向きなのでしょうか。それは<転>がいらないものだからです。随筆や叙情文と違って、技術文章は感情を伝えるものではありません。それまでの文章の流れを変えてまで、<結>を盛り上げる必要はないでしょう。技術文章は「正確」であること、「簡潔」であること、「読みやすい」ことの3つが揃っていことが大切なのです。
技術文章の構成と作成手順
それでは技術文章に使う「序論・本論・結論」を説明します。「序論」では本論についての概要を書きます。その理由は、本論を読んでもらう前に自分が伝えたい内容を簡潔に説明することによって、本論への導入を容易にするためです。次に、「本論」は研究や考察したことの詳細を書きます。「結論」は文字どおり自分が辿り着いた結論、すなわち最も主張したいことです。また序論は本論を書き終えてから書く場合もあります。
あっさりと説明しましたが、実際に書くとなると簡単ではありません。次のような手順を踏む必要があるからです。
1.何について書くのかテーマを決める
2.誰に読ませるのか読み手を設定する
3.データを収集する
4.データを分析する
5.分析結果から結論を出す
6.文章を構成する章を設計する
7.章を節に分解する
8.節を項に分解する
9.項ごとにあらく段落を割りつける
10.段落ごとに文章を書く
11.書き終えたら推敲する
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