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エンジニアのための文章上達塾 第1回

第1回 言葉は正しく使わないと思わぬトラブルを招く

2008年03月28日 14時30分更新

文● 福田 修

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エンジニアのための文章上達塾

ソフトウェア・プロジェクトにおいて作成する書類は、SEの成果物の7割を占めているといわれています。これらの書類は、開発現場における道しるべであり、読んだ人のすべてが同じ解釈ができるように作る必要があります。しかし、自分の考えが上手く表現できなかったり、言いたいことを適切に表現する言葉が見つからずに頭を抱えてしまったりと、文章を書くのが苦手だという人は結構多いものです。そこで、当連載では「正しい日本語」という視点から、文章作成力の上達を目指します。SEとして必須な書類作成のための文章の基礎知識をしっかりと身に付けていきましょう。第1回では、誤解を生んでしまった会話の例から、言葉を正しく使うことの大切さを再認識していきます。

誤解を生んでしまった会話二題

 フィリピンのマニラでのことです。日本の商社に勤務するご主人とともに赴任していた奥さんが、同じような境遇にある日本人の奥さんから青森産のリンゴをもらいます。実家からの送られてきたとのことです。じゃあ2人でさっそくいただきましょうと、フィリピン人のお手伝いさんに「皮をむいて持ってきて」と頼みます。お手伝いさんはそこそこ日本語が分かるのですが、このときは首を傾げながら台所に消えていったそうです。

 しばらくして、お手伝いさんが持ってきたものは何だったと思いますか? 皮を剥いたリンゴではなく、リンゴの皮だったそうです。その奥さんは、「皮を……持ってきて」という自分の指示を思い出しました。2人の奥さんは互いの顔を見合わせて大笑いしたそうです。

 もう一例は、SEの職場で起きたものです。そのSEはよく仕事ができると評判で、毎日多忙を極めていました。そんなある日、上司から「急な案件だけれどもやれるかな?」と尋ねられます。忙しかったのでほかの人に振ってもらおうとも思いましたが、工夫すればなんとかできると判断し、「やろうと思えばできないこともありません」と返事をしました。するとその上司は急に表情を変えて、「やりたくないのならそう言え!」と怒ってしまいました。

なぜ話はすれ違ったか ~フィリピンのリンゴの場合~

 なぜこのように会話がすれ違ってしまったのでしょうか。まず、リンゴの皮を持ってきたお手伝いさんの例は、会話をする人同士のコンテクストが合致していなかったために起きています。コンテクストとは文脈とも訳されますが、むしろ文化とか生活といった背景にある蓄積された知識や経験と理解した方が分かりやすいでしょう。

 フィリピン人のお手伝いさんの場合、フィリピンの気候が熱帯性であるためリンゴそのものが珍しいものだったのでしょう。自分が食べたことがなければ食べ方も分からないはずです。それに加えて「皮をむいて持ってきて」という指示は、「皮を持ってくる」という意味と「皮をむいた後の中身を持ってくる」という意味の2つの意味がとれます。実は、この2つの意味を私たちは無意識のうちに認識しているのです。これを1次解釈としましょう。そして次に、経験や知識(コンテクスト)をもとに意味として通じないような解釈を捨てます。これは2次解釈です。この2次解釈によって私たちは、あたかもすぐに意味を了解したかのように認識します。

 つまり、自分が話す内容や文章を相手に正確に伝えるためには、相手がどのような経験と常識を持っているかを知っておく必要があるのです。

次ページへつづく

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