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エンジニアのための文章上達塾 第4回

第5回 技術文章のための「構成」を知ろう

2008年04月25日 18時30分更新

文● 福田 修

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例から手順を覚えよう

 ITに造詣が深い上司がいたとします。ある日、この上司から「『ビジネス・テクノロジー』について分かりやすく報告書を書いてくれ」という指示がありました。皆さんはどのように報告書をまとめますか? 具体例を紹介します。

 まず、報告書のテーマは「ビジネス・テクノロジーについて」です。さっそくインターネットで調べますが、「ビジネス・テクノロジー」という言葉では検索結果が思わしくありません。そこで、「Business Technology(以下、BT)」と英文で調べると、たくさん出てきました。どうやら経営とITを融合する概念のようです。

 次に、なぜ上司がBTについて知りたがっているかを調査します。その結果、どうやらCIOからの指示で、BTを導入するメリットがあれば検討するようにとのことでした。これで読み手の意図は分かりました。その後に取りかかるのは、経営とITとを融合することについて述べている論文やニュース、企業の広告などを集めてデータを溜めることです。データが溜まったら分析をしましょう。分析の視点は次のようなものになるはずです。

・なぜBTという概念が生まれたのか、その背景とニーズは何か
・BTによって企業は何が変わるのか
・BTを導入した事例はあるか、それは何件あるのか
・BTを導入するために必要な技術は何か
・BTを導入するリスクはあるのか、それはどのようなものか
・自社に導入するメリットはあるか、費用対効果はどの程度か

 さて、テーマに基づき報告書のタイトルを決めます。この例では「ビジネス・テクノロジー動向調査報告書」が適当でしょう。序文は後で書くとして、本論の構成を検討します。次のような構成が考えらでしょう。

第1章 BTに関する概観
第2章 国内外の動向
第3章 企業が取り組むメリット
第4章 導入事例
(以下略)

 第1章を節に分解します。最近では第1節などとはせずに1.1のように略記する傾向にあるようです。

第1章 BTに関する概観
1.1 言葉の定義
1.2 背景
1.3 ニーズ
1.4 関連トピック
※同様に他の章も分解する

 次に節を項に分解します。「言葉の定義」については、これ以上分解できません。「背景」について考えてみます。

1.2 背景
1.2.1 高度情報化がもたらしたもの
1.2.2 新しいビジネスモデルの出現
1.2.3 経営とITを融合する目的
※同様に他の節も分解する

 すべてを説明したものではありませんが、手順と考え方は分かってもらえたでしょうか。これらの手順をどれか1つでも省くとバランスが崩れてしまいます。この手順でまとめることで「正確」「簡潔」「読みやすい」を満たす技術文章を作成できるということです。慣れるまでは面倒くさがらずに着実に手順を踏んで下さい。何度か繰り返すことで、文章技術は確実に向上するでしょう。また、“うまい技術文章”を読むことも勉強になりますので、先輩方の技術文章を見せてもらうのも上達の方法です。

■協力
社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)
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「ソフトウェア文章化作法講座」をはじめ、内部統制・システム運用・ヒューマンスキルなど

筆者紹介──福田 修

(株)CSK、日本インフォメーションエンジニアリング(株)を経て、テクノロジー・オブ・アジア(株)設立、代表取締役に。適切な情報技術の動向把握に長け、2000年問題の効果的解決、インドのSI会社との提携、Webアプリケーションへの取り組み、オブジェクト指向設計/開発の導入等を、早い時期から対応し、後発システムベンダへの指導的立場にある。著書に『SEを極める仕事に役立つ文章作成術』(日経BP社発行)がある。

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