視考を生み出したアップル製マシン
私の愛機はMacである。Mac一筋の人生になってから、はや20年が経過した。
Macに出会う前は、短い間だったが同じくアップル製の「Lisa」が私の側にいてくれた。Lisaは、私が初めて発表した「EUROMICRO 85」という国際会議の発表論文を作成する際、メインエンジンとしてその作業を大きく助けてくれた。特に、作図ソフト「LisaDraw」の表現力は、私のアイデアを可視化して伝えるうえで決定的な役割を果たした。これがその後の、「MacDraw」を駆使したビジュアルシンキング(視考)の方法論を確立するきっかけとなったのである。
それ以外にも、Lisaの軽快かつ統一されたプルダウンメニューや、クリップボードを介した複数アプリケーションの結合方式、接続したデバイスの属性をしっかりとソフトコントロールできるきめ細やかさなど、随所に見られた工夫に新鮮な感動を覚えたあの日を、今でもはっきりと覚えている。マニュアルのデザインもダントツに優れていた。
Star:Macに連なる系譜
そしてLisaの前には、米ゼロックス社の「Star Workstation(8010 Star Information System)」がいた。私に未来のパーソナルワークステーションのあるべき姿を教えてくれたのは、このStarだった。
Starを使って研究技術資料を初めて作成・印刷したとき、レーザービームプリンターが高精細に印刷するイメージそのままに、ビットマップディスプレー上で文書を編集できるWYSIWYG(What You See Is What You Get)の威力に驚いた。
それとともに、ユニバーサルキーを備えたキーボードや、プロパティーシートでどのようなオブジェクトであってもその属性を確認・編集できる一貫性、テキスト/図/表/グラフなどの機能モジュールが密に結合された複合文書処理の明快さ、ファイルサーバーやプリントサーバーを共有するためのイーサネットによる水平分散アーキテクチャーなどに深い感銘を覚えた。そのデザインには強い哲学と美学が感じられた。
(次ページに続く)
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