地図を用いたマッシュアップサイトには地図上に店舗情報を表示するタイプのものが多い。その中で、クネヒトがマッシュアップにより立ち上げたのは、地図上に事件や事故などの危険情報を掲載し、危機管理に役立てようというものだ。視点のユニークさでマスコミに取り上げられると、開始から9ヵ月後に、外資系保険会社のサイトにASP提供されるまでになった。代表取締役の萩原直人さんに、いかにしてクネヒトのマッシュアップサイトがビジネス化できたかを聞いた。
事件や事故の発生場所が一目でわかる「Knecht ハザードマップ」とは
クネヒトが2006年6月から提供を始めた「Knecht ハザードマップ」は、事件や事故がどこで起きたのかを地図で視覚的に見られるWebサービスだ。地図には、事件や事故が起きた場所にマークが立てられていて、選択すると事件や事故の内容を確認できる。情報のソースは新聞で、取り扱っているニュースは交通事故から窃盗、殺人事件など安全を脅かす事象。これらがどこの町のどの地区で起きているのかが一目瞭然で分かるサイトになっている。

クネヒト 代表取締役 萩原直人さん(23)
「以前、北海道で子供が連続して襲われる事件がありました。テレビや新聞、Webサイトのニュースを見たり、町内会や警察からの防犯チラシを見たりすれば、危険なことが起きていることはわかります。でも文字情報だけでは、生活範囲内で起きているのか、それとも範囲外なのかなどを実感しにくいと思ったのです。そこで、事件・事故がどこで起こったのかひと目でわかる地図があれば、人助けになるのではと思いました。以前から、今までにないサービスを作ろうと考えていて、ハザードマップと同じようなサイトがなかったというのも、制作に至った大きな理由です。やるからには他にはないものをやったほうが必ず目立ちますし、企業も注目してくると考えました」
ASP提供への経緯。技術がなくても、アイデアでビジネスへ
このサイトのシステム自体はそれほど複雑なものではなく、Google Map APIと記事に出ている「×町×丁目」という位置情報から緯度と経度を割り出してマップに貼り付ける技術に、新聞社のWebサイトから事件や事故のニュース記事を探して引っ張ってくる自社開発のクローラーが組み合わされているそうだ。萩原さんが開発手段として、マッシュアップという方法を選んだのには、2つの理由があったという。
「僕は文系の人間で、技術スキルは専門家に比べて非常に低いです。そんな僕にとって、比較的簡単にサービスが作れるマッシュアップは、開発手法としてピッタリでした。それに、ちょうどマッシュアップが話題になっていたときだったので、マッシュアップサイトとして注目を集めることもできるだろうという目論見もありましたね」
こうして「Knecht ハザードマップ」が立ち上がると、萩原さんの狙いどおりに、注目を集めてIT系のメディアに次々に取り上げられた。それがチューリッヒ保険の目に留まり、2007年2月からASP提供する運びとなった。

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