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Windows Vista SP1レポート

SP1登場でWindows Vistaはどう変わるのか?【正式版対応】

2008年03月08日 23時00分更新

文● 山本雅史

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 2月4日に開発が完了した「Windows Vista Services Pack1」(以下Vista SP1)は、3月中旬には、マイクロソフト(株)のダウンロードセンターからダウンロードできるようになる。また、3月中旬以降販売されるパソコンには、Vista SP1がプレインストールされることになる。パッケージ版やDSP版も同様に、Vista SP1に変更される予定だ。本稿ではVista SP1に実装される機能や改良点について解説する。

この記事は、2007年10月15日付けで公開したVista SP1βを元にした記事に、正式版に対応する内容を加筆、更新したものです。(2008年3月8日)

Vista SP1を適用した「Windows Vista Ultimate」のバージョン情報

Vista SP1を適用した「Windows Vista Ultimate」のバージョン情報。ビルド番号には「ビルド 6001:Serive Pack 1」と明示されている。


インストール前に知っておくべきこと


 マイクロソフトのVista SP1に関するページでは、Windows UpdateからVista SP1をインストールするには、3つの更新プログラムが必要になるとしている(KB937287、KB935509、KB938371、KB935509はUltimateおよびEnterpriseのみ)。Windows Update経由インストールする場合は、まず先にこれらのアップデートをインストールして、それからVista SP1をインストールすることになる(ダウンロードセンターからVista SP1をダウンロードした場合は、これらの更新プログラムは自動的にインストールされる)。

 また、Vista SP1のインストールには時間がかかる。おおむね1時間ぐらいはかかることを念頭に置いておこう。

 そのほかにも、Vista SP1をインストールする際には注意が必要な事柄がある。多くのアプリケーション、ドライバーのほとんどは、Vista SP1で問題なく動作する。しかし一部のアプリケーションやドライバでは、トラブルが起こる場合がある。この場合、トラブルの起こったアプリケーションのSP1対応版をインストールしたり、そのアプリケーション用のアップデートプログラムを適用する必要がある。例えば、トレンドマイクロ(株)の「ウイルスバスター 2008」は、SP1対応修正プログラムが必要になる。

Windows Vistaの互換性に関する情報ページ

Windows Vistaの互換性に関する情報ページ。Vista SP1についての互換性情報もすでに記載されている

 現在マイクロソフトでは、同社のWebサイト上で互換性情報を提供している。インストールの前にはチェックしておくべきだろう。


Vista SP1で追加された機能


 Vista SP1は膨大なバグ修正とセキュリティー修正、そしていくつかの新しい機能によって構成されている。ここでは、Vista SP1で新しく追加されたいくつかの機能を紹介していこう。

Extended FAT(exFAT)のサポート

 従来からあるファイルシステム「FAT32」では、理論上は最大約8TBのディスクを1ボリュームとして利用できる。しかし、WindowsXPではいくつかの問題から、フォーマットプログラムが32GB以上のFAT32フォーマットのドライブを作れない(同社では32GB以上のドライブではNTFSの利用を前提としている)。

 そのため一般的には、「FAT32では32GB以上のドライブをサポートしていない」と思われている(あくまでフォーマットできないだけで、FAT32フォーマットされている32GB以上のドライブをXPで使用することは可能)。このことは、32GBを超える容量を持つフラッシュメモリーデバイスが登場している昨今では、大きな問題となっている。またFAT32では、1ファイルのファイルサイズが最大4GBという制限がある。長時間のビデオファイルを扱うことが多くなってきている状況では、このことも問題になる。

 そこで、FAT32の制限を超えるために、Vista SP1では新たなファイルシステム「exFAT」がサポートされる。exFATはFAT32の機能を拡張したものとなり、これにより32GB以上のストレージをexFATで1ボリュームとして扱えるようになる。exFATは大容量のフラッシュメモリーをターゲットとしているため、内蔵HDDなどではexFATは利用できない。一方USB接続されたHDDは、exFATでフォーマットできる(exFATでフォーマットしたフラッシュメモリーデバイスは、ReadyBoost用としては使用できない)。

USBメモリーなどのフラッシュメモリーデバイスでは、フォーマットの項目で「exFAT」が選択できるようになる

USBメモリーなどのフラッシュメモリーデバイスでは、フォーマットの項目で「exFAT」が選択できるようになる

exFATの特徴を解説するスライド1

exFATの特徴を解説するスライド(WinHEC 2006のプレゼンテーション資料より引用)。理論上最大のファイルサイズは16EBとなる

exFATの特徴を解説するスライド2

高速にファイル名をチェックする機能を持っている

 FAT32で問題になっていた最大4GBというファイルサイズの壁も取り除かれている。理論上の最大値は16EB(エクサバイト)。1EB=1000PB=100万TB=10億GB(GB)であるから、exFATでは160億GBもの信じられないような大きさのファイルを、1つのファイルとして扱える(現実的にはシステム上の制限で数TBとなるだろうが)。さらに、ひとつのディレクトリー(フォルダー)上に保存できるファイルの数も、1000個から大幅にアップされている(上限については不明)。

 いいことずくめに聞こえるexFATだが、大きな問題もある。exFATは下位互換性を持たないので、USBメモリーデバイスではFATとFAT32だけがサポートされているシステム(例えばWindows XP/2000)では、exFATでフォーマットされたストレージデバイスにはアクセスできない。

exFATでフォーマットしたUSBメモリーをexFAT未対応のVistaに挿してみると

exFATでフォーマットしたUSBメモリーをexFAT未対応のVistaに挿してみると、フォーマットが未対応のため中身を認識できず、再度フォーマットをしようとする

 マイクロソフトではVista以外のOSでもexFATが使えるようにする予定だ。現時点では、Windows XPやWinodws Server 2003などで利用できるようになると見られる。Windows 9x系OSはサポートが終了しているため、exFATへの対応モジュールはリリースされないだろう。

BitLocker Drive Encryptionの機能拡張

 Vista UltimateとVista Enterpriseでは、システムドライブを暗号化してセキュリティーを高める「BitLockerドライブ暗号化」(以下BitLocker)という機能が用意されている(関連記事)。Vista SP1ではBitLockerの機能を拡張して、システムドライブだけでなくほかのドライブも暗号化できるようになる。これにより、データ用ドライブのセキュリティーも高められる。

SP1では「BitLockerドライブ暗号化」でデータドライブが選択できるようになった

SP1では「BitLockerドライブ暗号化」でデータドライブが選択できるようになった。なおこの画面では、OSのインストールされたドライブしかないため、警告が表示されている

 またVista SP1では、BitLockerが起動時に参照するスタートアップキーを、USBメモリーやPIN(回復パスワード)だけでなく、TPM(Trusted Platform Module)によって保護された多要素認証方式をキーとして利用できるようになっている。これにより、より高いセキュリティーが実現する。

ネットワーク診断の新バージョンを用意

 Vista SP1では、「ネットワークと共有センター」にある“ネットワーク診断機能”が新しいバージョンに変更された。新しいバージョンでは、診断を行なう項目が増えているため、より正確な診断を行なえる。

新しい「ネットワーク診断機能」では、マイクロソフトのサイトにPINGを打つなどのテストを行なう

新しい「ネットワーク診断機能」では、マイクロソフトのサイトにPINGを打つなどのテストを行なう

 また、ネットワークのプログラムが改良され、ネットワーク経由でのファイル転送などのパフォーマンスが向上している。

Secure Socket Tunneling Protocol(SSTP)のサポート

 SSTPは暗号化通信プロトコル「SSL」(Secure Socket Layer)を使用したVPNシステムである。SSTPにより、VPN用にファイヤーウォールのポートを開けなくても、HTTPポートを使用してVPNが利用できる。また、クライアントがNAT環境下のプライベートアドレス側にある場合でも、SSTPを利用すれば、ルーターの設定変更なしにVPNを構築できる。

デフラグユーティリティの改良

 Vista標準のデフラグユーティリティーは、デフラグ対象となるドライブ(ボリューム)の指定ができなかった(コマンドラインツールでは可能。関連記事)。Vista SP1ではデフラグするドライブを指定できるように改良された。

Vista SP1では、ディスクのデフラグをドライブごとに選択できるようになった

Vista SP1では、ディスクのデフラグをドライブ(ボリューム)ごとに選択できるようになった

デスクトップ検索の変更

 Vistaに搭載されているデスクトップ検索機能は、競合他社のデスクトップ検索機能(特にGoogleデスクトップ)と入れ替えることができない。これが米グーグル社との間で問題になり、グーグルは最終的に「独占禁止法に抵触する」として裁判所に申し立てをした。

 そこで、マイクロソフトではVista SP1で、コントロールパネルの「既定のプログラム」から、デフォルトのデスクトップ検索機能を変更できるようにしている。ただし、他社の検索エンジンが新しいAPIをサポートしないと、デフォルトから変更できない。

デスクトップ検索機能が「既定のプログラム」で検索エンジンを変更できるようになった

デスクトップ検索機能が「既定のプログラム」で検索エンジンを変更できるようになった。この環境には「Googleデスクトップ」をインストールしているが、この画面には表示されていない。これはVista SP1で変更されたAPIに、Googleデスクトップがまだ対応していないからだろう

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