日本式のライドシェアが少しずつ広がっている。
2024年5月24日のテレビ東京の報道によれば、ウーバー社のダラ・コスロシャヒ(Dara Khosrowshahi)CEOが6月に来日し、河野太郎デジタル大臣と面会する予定だという。日本では4月に、ライドシェアの部分解禁が始まったばかりだ。なぜ、このタイミングでウーバーのCEOが来日し、デジタルを担当する大臣と面会するのだろうか。
日本各地でタクシー運転手の人手不足が深刻化する中、東京では4月からタクシー会社が運営するライドシェアが解禁され、以後、大阪、福岡など段階的に拡大している。広島県では、広島市を中心とした「広島交通圏」を対象に、中国運輸局が5月24日、タクシー会社7社に対して、ライドシェア事業の許可を出した。NHKなど複数の報道によれば、広島でも5月中にサービスが開始されるという。
こうしたタクシー会社が運営する「日本式」のライドシェアは、自社の事業を守りたい既存のタクシー会社と、交通の不便の解消を両立させる落としどころとして採用された方法だ。ウーバーも日本式のライドシェアに適応する形で、すでに配車サービスの提供を始めている。今後、タクシー事業者以外の事業者によるライドシェアへの参入が、いつから、どのような形で認められるかが焦点となる。政府はタクシー会社以外の事業者によるライドシェアへの参入のあり方について、2024年6月に結論を出す方針だ。
日本式ライドシェアの現状
日本式ライドシェアはどのような形で運用されているのだろうか。現在の状況をおさらいしておきたい。まず、現在のライドシェアは曜日によって利用できる時間が決まっている。以下は、2024年5月の時点で東京23区などでライドシェアが認められている時間帯だ。
●月曜~金曜:午前7時台~午前10時台
●金曜・土曜:午後4時台~午後7時台
●土曜:午前0時台~午前4時台
●日曜:午前10時台~午後1時台
この時間の設定は、よく読むと非常に興味深いものがある。平日の朝はタクシードライバーが不足し、ライドシェアが使える時間になっている。たしかに平日の朝に急な雨で、配車アプリを使ってタクシーを呼ぼうとしても、なかなかタクシーが確保できなかったことがあった。
金曜の午後11時台以降は、タクシーが繁盛する時間帯のひとつだろう。週末を控えた飲み会で、つい遅くまで飲みすぎて終電を逃し、タクシーで帰宅した経験のある人は多いだろう。いわゆる稼ぎ時に当たると思われるが、ライドシェアも参入できる時間帯とされている。
アプリ「Uber」と「GO」
日曜の午前10時すぎにタクシーの配車アプリ「GO」を開いてみると、タクシーまたはライドシェアが配車される選択肢が表示された。ちょうど、現在のルール上、日曜の午前10時台~午後1時台はライドシェアを使える時間帯に設定されているからだろう。
ちなみに、このアプリを提供している企業「GO」社は、東京のタクシー会社である日本交通を源流とする会社だ。日本交通の川鍋一朗氏が代表取締役会長を務めている。GO社とウーバー社は日本の市場において、配車アプリとしては競合する関係にあるが、両社を見比べると興味深い。
ウーバーは、むしろテクノロジー側から出てきた会社だっただけに、既存のタクシー業界が築いてきたビジネスを破壊することを厭わない。反対にGOは、タクシー会社にスマホの配車アプリというイノベーションを取り入れることで成長してきた会社だ。ほぼ真逆の立場から出てきただけに、両社の方針が激しくぶつかり合うとしてもまったく不思議はない。
会うのはデジタル大臣だけなの?
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