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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第281回

SNS「なりすまし広告」詐欺被害拡大。実効性ある法整備はできるか

2024年04月30日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 SNSを通じた「なりすまし広告」を巡る議論が、次第に熱を帯びてきた。2024年4月24日のNHKの報道によれば、茨城県内に住む70代の女性が、経済アナリストの森永卓郎さんを名乗るLINEアカウントを通じて、6億9000万円をだまし取られたという。

 大まかな手口は次のようなものだ。女性がSNS上に表示された広告にアクセスしたところ、森永さんを名乗るLINEアカウントと「友だち」になった。女性は、森永さんになりすましたアカウントとLINEでやり取りをするようになり、金の積立投資に勧誘され、総額6億9000万円をだまし取られたという。

 なりすまし広告には、森永さんだけでなく堀江貴文さん、前澤友作さん、西村博之(ひろゆき)さん、中田敦彦さんらの顔写真や名前が勝手に使われている。いずれもビジネスやYouTube、地上波のテレビにおいて、実績や知名度のある人たちだけに、被害者もたやすく信じ込んでしまう構図があるようだ。被害の拡大を受けて、与党を中心に法的な規制を目指す流れも強まっている。

年間455億円の被害

 警察庁は、森永さんや堀江さんらのなりすまし広告を使った手口を「SNS型投資詐欺」に分類している。SNSなどを使って被害者と接触して、投資に勧誘することで、金をだまし取る手口だ。このSNS型投資詐欺については、全国の警察が2023年に2271件、計277.9億円の被害を確認している。

 もうひとつ、著名人になりすますわけではないのだが、「ロマンス詐欺」と呼ばれる手口もある。外国人からSNSを通じて連絡があり、チャットなどで連絡を取り合ううちに、被害者は恋愛感情を抱く。被害者が信じ込んだと判断した段階で、投資に勧誘し、お金をだまし取るという手口だ。筆者のFacebookアカウントにも、ときどき白人のものすごい美女から友だち申請があったり、ダイレクトメッセージが届いたりする。さすがに友だちにはならないが、Facebookの向こう側にいるのは、おそらく組織的な詐欺グループだろう。この手口については1575件、177.3億円の被害が確認されている。

 この2つの手口で合わせて455.2億円の被害が発生している。警察庁の公表資料で気になるのは、1件あたりの被害額が平均で1000万円を超えている点と2023年下半期に被害が急増している点だ。筆者の記憶ベースでも昨年末ごろから、ネット上で少しずつ投資詐欺に関する話題が増えてきたように思う。

 4月18日のNHKによれば、被害者4人が、広告の内容が真実かどうかを確認せずに広告を掲載した責任があるとして、Facebookを運営するメタ社を相手に、損害賠償を求める訴訟を起こすという。

自民党も反応

 被害の拡大と深刻化を受け、自民党も重い腰を上げつつある。

 自民党の公式サイトによれば、4月12日に党内の勉強会を開き、堀江さんと前澤さんに加え、自らの写真が使われた同党の平将明議員から事情を聴いた。25日にはLINEヤフーの幹部からも事情を聴いたと報じられている。NHKの報道によれば、自民党の作業チームは、今国会の会期中をめどに対策を取りまとめるという。今国会の会期末は、6月23日が予定されている。今後2ヵ月程度で、投資詐欺に対する対策をまとめることになる。

 自民党内でいまのところ、どのような対策が検討されているのか定かではないが、たとえばネット広告を使った詐欺の対策としては、次のような対策が考えられる。

 まず、ネット広告の広告主に対する本人確認の強化だ。SNS上や検索結果に広告を出す場合、個人であれば運転免許証、マイナンバーカードなどの本人確認資料をプラットフォーム側が受け取り、審査したうえで出稿を認める。

 プラットフォーム側に対して、広告主に関する審査の厳格化を法律で義務付ける方法もある。

本人確認強化は筋がいい?

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