データセンター市場が活況だ。
2024年4月18日には、米国のソフトウエア大手オラクルが、日本での事業に今後10年間で80億米ドル超(1兆2000万円超)を投資すると発表した。10日には米マイクロソフトが29億ドル(約4400億円)を投資すると発表している。
日本政府の動きも目立つ。経済産業省は19日、AIの開発に必要なデータセンターの建設や増強を目指す日本国内の5社に対して、最大725億円を補助すると発表している。
こうした流れを受けて、データセンターの建設を手がける企業や、ネットワークに関する専門性の高い企業、データセンター周辺のセキュリティを手がける企業への引き合いも増えているようだ。日本でデータセンターの建設ラッシュが生じている背景には、複数の要因がありそうだ。
生成AIの進展
第一に上げられるのは、やはり生成AIの進展によるデータセンター需要の高まりだ。
たとえばAIがチャットのような形式で人間と対話ができるようになるには、膨大なデータを学習し、データの規則性を見つけ、自ら予測や判断ができるようになることが求められる。こうした作業は、コンピューター側から見れば膨大な量の計算を高速で処理する作業で、大量の計算装置やストレージを配置する施設が必要になる。AIがあらゆるビジネスの分野に広がり、その利用が浸透するほど、巨大な倉庫のようなデータセンターの需要が高まる。
7〜8年前のことになるが、世界的に仮想通貨(暗号資産)への注目が一気に高まり、多くの企業が、仮想通貨の計算処理に参加して、報酬を得るためマイニングの施設の建設に乗り出した。当時は東欧、北欧、中国の北部など、比較的気温が低く、電気代の安い地域でマイニング施設の建設ラッシュが起きた。マイニングの施設も、巨大な倉庫のような建物に、大量の計算機(マイニングマシン)を並べて高速で計算を処理する。考えてみると、マイニングの施設も、データセンターの一種と理解することができる。
経済安全保障強化の流れ
日本にデータセンターの建設ラッシュが生じている2つ目の要因として考えられるのは、近年、経済安全保障を強化する流れが強まっている状況だ。
米中関係が悪化し、ウクライナ戦争が長期化し、イスラエルを起点に中東情勢は急速に緊迫している。こうした中で、同盟国や価値観を共有できる国や地域との間でお互いに経済的な関係を強め、有事の際の悪影響を最小化しようという流れが強まっている。
たとえばデータセンターも、日本向けのサービスであっても、寒冷で比較的電気代の安い東欧に立地した方がコストの面では有利かもしれない。しかし、ウクライナ戦争が長期化する中で、東欧にデータセンターを新たに投資するのは簡単な判断ではない。日本向けのサービスならば、日本にデータセンターを置いておけば、仮に東欧のデータセンターが使えないような事態になったとしても、日本のサービスへの悪影響は回避できる。
日本政府は、経済安全保障上重要な物資を指定しているが、「クラウドプログラム」も特定重要物資に指定している。冒頭で紹介した経産省の725億円の補助は、さくらインターネット、GMOインターネットグループ、KDDIなど5社のプロジェクトが補助対象に認定されたが、経産省は、経済安全保障の強化を補助金交付の理由としている。
日米政府が経済安全保障の観点で連携を強める中で、マイクロソフトやオラクルなどの米国のIT大手も、そこに商機ありと判断したものと考えられる。
歴史的な円安で「日本は買い」

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