政府が推進するガバメントクラウドのサービス提供事業者に、初めて国内の企業が選ばれた。
認定を受けたのは、大阪市の「さくらインターネット(以下「さくら社」)」だ。
個人でウェブサイトを運営している人などは、レンタルサーバーなどのサービスを提供する企業として、その名を耳にしたことがあるのではないか。
このガバメントクラウドを巡っては、アマゾンやグーグルなど米国の企業ばかりが選定されてきた。
近年、国際情勢の緊迫化などを背景に、政府が利用するクラウドサービスの国産化を目指す流れがある。
日本政府が、さくら社を選定したのも、こうした流れの中に位置づけられる。
ガバメントクラウドとはなにか
まず、ガバメントクラウドとはなにか。あらためて確認しておきたい。
住民にとってもっとも身近な行政機関は、市区町村だ。
市区町村は、さまざまなサービスを住民に提供している。
たとえば、住民票の交付や、税金、年金、国民健康保険といったサービスが頭に浮かぶが、サービスを提供するうえで、市区町村にもシステムが必要だ。
当然、各市区町村はIT企業と契約し、システムを構築しているが、それぞれ仕様がバラバラだ。
市区町村間で情報を共有、連携するにも手間がかかり、効率が悪い。
そこで浮上してきたのが、ガバメントクラウドという考え方だ。
どこの市区町村に行っても、共通する仕事については、共通の基盤をつくっておけば、より効率よくサービスを提供できるかもしれない。
政府は住民票や税金、年金などの業務を2025年度中にガバメントクラウドに移行する準備を進めている。
「国産」への要請
デジタル庁はまず、2022年10月にガバメントクラウドの対象として4つのサービスを選んでいる。
●Amazon Web Services
●Google Cloud
●Microsoft Azure
●Oracle Cloud Infrastructure
これらのクラウドサービスを提供するアマゾン、グーグル、マイクロソフト、オラクルはいずれも米国の企業だ。
いずれも世界を代表するIT企業であることは疑いがない。しかし、特定のサービスに依存しすぎると、費用が割高になったり、他社のサービスへの移行が困難になったりする懸念が生じる。
2022年に選ばれた4社は、いずれも単独で政府が求める技術要件すべてを満たすことができたが、単独で要件を満たすことのできる日本企業はなかったようだ。
そこでデジタル庁は、複数の企業による共同提案や、サードパーティーの製品を利用したサービスの提供を認めることにした。
日本企業の参入を促すため、要件を緩和したと理解できる動きだ。
この結果、さくら社が提供する「さくらのクラウド」が選定された。
ただ、2023年11月の時点では政府が求める要件は満たしておらず、2025年末までに技術要件を満たすとの条件で、選定に至っている。
言い換えれば、さくら社は現時点では、政府が求める技術要件を満たせる状況にはないということになる。
一方で、複数の報道によれば、インターネットイニシアティブ(IIJ)とソフトバンクは選外になったとみられている。
米国のIT大手に対抗できるか
さくら社は1999年に設立された企業で、国内のIT企業としては比較的長く、四半世紀近い歴史がある。
2001年のドットコムバブルの崩壊も乗り越え、2005年に東証マザーズに上場、2015年には東証一部に上場先を変更している。
2023年3月期の売上高は約206億円だ。
先行するアマゾンやグーグル、マイクロソフトと比較すると売上高の規模は100分の1を下回る。
さらに、さくら社の公表資料からは、今回の公募でマイクロソフトと組んだうえで、応募していることがうかがえる。
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