マイナンバーカードの暗証番号が不要になる。
NHKは2023年11月22日、政府が12月から暗証番号の必要のないマイナンバーカードを導入すると報じた。
このニュースで特に重要なのは、暗証番号のないマイナンバーカードの発行を「希望するすべての人に対象を拡大」するという総務省の方針だ。
これまで、総務省は高齢者、認知症などで暗証番号の管理に不安がある人を対象として、暗証番号なしのカードを発行する方向で検討してきた。
しかし、新たな報道では、希望すればだれでも暗証番号のないマイナンバーカードをつくれるという。
暗証番号の管理は難しい
筆者は「規制とテクノロジー」という重苦しいタイトルの連載を長く続けさせていただいている。
それなのに筆者のマイナンバーカードは、これまでに2回もロックされている。
マイナンバーカードの暗証番号は4桁の数字だが、3回続けて間違えるとロックがかかる。
ロックされたときは、住民票のある市区町村の窓口で暗証番号を再設定してもらう。
たまたま自宅近くに自治体の窓口があるため、それほど再設定してもらうのに手間はかからなかった。
銀行のATMで使う暗証番号ほど頻繁に使わないため、マイナンバーカードにひもづいた暗証番号は忘れやすい。
さらにややこしいのは、4桁の暗証番号だけでなく、最大16文字のパスワードもある。
暗証番号のないマイナンバーカードに一定のニーズがあるのは、ある程度理解できる。
顔認証または顔確認
暗証番号に代わる本人確認の方法として、政府が準備しているのは「機器による顔認証」と「目視による顔確認」だ。
まず、目視による顔確認は、マイナンバーカードに載っている顔写真と、窓口に来た人の顔を、自治体の職員が見比べて確認する方法だ。
こうなると、免許証などの顔写真入りの本人確認資料を持って役所に行くのとほぼ同じだ。
顔認証については、制度の詳細はいまのところ不明だが、おそらく次のような仕組みになるのではないか。
あらかじめ顔の画像を登録し、マイナンバーとひも付ける。マイナンバーを使うときは、顔認証システムを使って、事前に登録した画像と本人の画像を照合する。
ただ、暗証番号のないマイナンバーカードでは、マイナポータルを使ったインターネット経由での申請や、コンビニで住民票を取得するといったサービスは使えない。
一方で、NHKの報道によれば、マイナンバーカードと健康保険証を一体化している場合、健康保険証としては使えるようだ。
2024年には、マイナンバーカードと運転免許証の一体化も予定されている。
要するに暗証番号なしのマイナンバーカードは、健康保険証や運転免許証の機能はつけられるものの、利用者にとっては、ほぼ単なる身分証明書に過ぎないと理解できる。
暗証番号なしのカードを選ぶ人は、健康保険証と運転免許証の機能がついたカードは持てるものの、さまざまな手続きで役所に出かける手間はなくならない可能性が高い。
政府は、行政のデジタル化を進めているが、暗証番号なしのカードを選ぶと、デジタル化の恩恵は受けられないことになる。
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