ペイパル(PayPal)が、独自のステーブルコインを発行する。
2023年8月7日付けの同社の発表によれば、同社は「完全に米ドルで裏付けられた」PayPal USD(PYUSD)を発行するという。
日本と米国のメディアを見ると、「大手企業で初めて」「米国の主要金融機関で初めて」との位置づけが示されている。
これまで、主にスタートアップ企業がステーブルコインを発行してきたが、「裏付け」としていた米ドルを、実はほとんど保有していないなど、信頼性の面で課題を抱えてきた。
しかし、電子決済の分野で世界的な実績を持つペイパルの参入は、高い注目を集める動きだ。
日本でも、6月の資金決済法の改正でステーブルコインの発行が可能になり、複数の金融機関が参入を模索している。
日本では馴染みがないが
日本で生活していると、ペイパルのサービスはあまり馴染みがない。
決済のサービスというよりも、イーロン・マスクが創業メンバーに名を連ねる企業としてその名前は浸透しているかもしれない。
しかし電子決済の分野では、明確に世界をリードする企業のひとつと言える。
ペイパルによれば、電子決済サービスは200ヵ国以上で提供しており、25の通貨を利用できる。2023年の時点で、4億3000万件のアクティブアカウントがあるという。
日本も「200以上」の国の一つに入ってはいるが、Suicaをはじめとした「交通系」の決済サービスや、PayPayなどのQR決済が普及しているため、決済の手段としてはあまり浸透していない。
ペイパルの使い方は、他の決済サービスとほぼ同じで、銀行口座やクレジットカード番号を登録し、支払いや個人間の送金に使う。
ペイパルのサービスに価値があると感じるのは、海外のウェブサービスを利用するときだ。
海外のウェブサービスで課金が発生することがあるが、サービスを提供する企業が、あまり聞いたことのない新興企業の場合、クレジットカードの番号を入力するのは気が進まない。
こうしたときに、ペイパルのアカウントで支払えるなら、少し安心して支払いができるかもしれない。
日本では遅れをとっているものの、世界で浸透している決済サービスの強みはこうしたところにあるのだろう。
仮想通貨を日常の支払いに?
サービス提供国の多さに強みがあるペイパルがステーブルコインに参入するのは、どんなインパクトがあるだろうか。
まず、ペイパルのステーブルコインPYUSDは「完全に米ドルで裏付ける」とされる。
仮に50億ドルのPYUSDを世界で流通させる場合、裏付けとして、ペイパルはさらに50億ドルを用意し、保有しておくことになる。
流通するPYUSDを増やすときは、さらに等価の米ドルも調達することが求められる。
価格が乱高下する仮想通貨は決済に向かないが、米ドルと連動させることで価格の動きを抑制するのが、ステーブルコインの特徴だ。
決済に強みがあるペイパルがステーブルコインに参入するのは、同社が、仮想通貨の技術を日常の支払いや送金に利用できるようにする、という意思を示したものととらえていいだろう。
実際、PYUSDのサイトを見ると、”Designated for payments”(支払指定)というキャッチコピーが目に入る。
ペイパルは、米国ではVenmoというアプリで日本の「おサイフケータイ」のようなサービスを提供しているが、CNNによれば「まもなく」Venmoでも、PYUSDが使えるようになるという。
仮想通貨決済は失敗の歴史
仮想通貨による支払いは、これまで失敗の連続だった。
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