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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第242回

生成AI規制に踏み出すアメリカ サイバー犯罪、フェイク増加に警戒感

2023年07月31日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 大手IT企業7社と米政府が、AIがもたらす様々なリスクに対処することを「自主的に約束」した。

 7社との約束についてバイデン政権は、「責任あるAIの開発に向けた重要な一歩」としている。

 21日に7社の経営トップらと面会したバイデン大統領は、AIがもたらすリスクと機会の両方を強調しつつ、やはり強い警戒感をにじませている。

 「米国人は、高度な人工知能と技術革新のスピードが、どれだけ雇用と産業を破壊する力を持つか目のあたりにしている」

 バイデン大統領は声明の中で、「自主的な約束」にとどまらず、米国内の法整備や国際的な枠組みの構築を進めていく考えを示している。

 日本政府側は、磯崎仁彦官房副長官が、「前向きなインプットとして歓迎する」と24日の記者会見で述べている。

 今回の「約束」は、日本を含む各国での、AI規制に向けた動きを加速させるのではないか。

アップル不在のGAFAM

 今回の「自主的な約束」に参加したのは、次の7社だ。

●アマゾン
●グーグル
●メタ
●マイクロソフト
●Anthropic
●Inflection
●OpenAI

 まず、GAFAMと呼ばれるIT世界最大手5社のうち4社が今回の合意に加わっている。名前が挙がっていないのは、アップルだけだ。

 アップルは、スマホやPCを製造するハードウェアの会社として参加に至らなかったのか、アップルが参加を断ったのかはいまのところ不明だ。

 OpenAIは、ChatGPTを開発・運営し、生成AIの分野を象徴する新興企業だ。Anthropic (アンスロピック)は、日本ではまだあまり知られていない企業と言っていいだろう。

 同社は、OpenAIの元メンバーが設立した企業で、ChatGPTと同様に、自然な会話の処理などに特徴がある。グーグルなどから大型の出資を受け、同社の生成AIモデル「Claude」は、ChatGPTの有力なライバルとも言われている。

 Inflection(インフレクション)は、個人の興味に基づき、知識を提供するAIを開発している新興企業で、エヌビディアなどから大型の出資を受けている。

 7社がどういう選定基準でホワイトハウスに呼ばれたのかは不明だが、AnthropicとInflectionの名前は、頭に入れておく意味があるかもしれない。

「安心、安全、信頼」

 7社と米政府の合意が強調するのは、「安心、安全、信頼」という3つの言葉だ。

 まず、「安全」については、AIを公開する前に安全性の確認を約束している。

 各社はAIを一般公開する前に、AIがサイバー攻撃などに利用されないか、事前にセキュリティの観点で専門家のテストを受ける。

 「安心」についても、セキュリティリスクへの対策だ。

 サイバーセキュリティおよび内部の脅威に対し、各社は十分な投資をしたうえで、AIシステムを公開することとしている。

 「信頼」については、AIの利用法に関する合意だ。

 まず、情報がAIによって生成されたものについては、ユーザーにわかるように「電子透かし」を付けるといった対処をする。

 AIが生成した情報であることを明示することで、詐欺やフェイク情報などのリスクを低減する狙いがある。

 「安心、安全、信頼」に加えて、がん予防や気候変動といった、社会が直面する課題に貢献することも約束している。

セキュリティへのリスク増す

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