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ASCII Power Review 第191回

4000万画素で29万円はお買い得!

APS-C最高画素ミラーレスカメラの画質を徹底チェック = 富士フイルム「X-H2」実機レビュー

2022年10月18日 10時00分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 今年5月に予告されていた富士フイルム「X-H2」がついに発売された。先行する兄弟機「X-H2S」が積層型2616万画素撮像素子や最高秒40コマ連写などの高速モデルだったのに対し、APS-C機では最高の4020万画素撮影素子を搭載した高解像度モデルとなる。

 画素数が一気に向上したことで画質はもちろん、AFやレスポンスなどの撮り心地も気になるところだ。

量販店価格はボディーのみ29万400円。「XF16-80mmF4 R OIS WR」とのレンズキットは36万3000円。

APS-C撮像素子で最高画素 高速モデルH2Sの兄弟機だ

 外観は「X-H2S」とは寸分違わず、製品名のロゴ以外は全く区別がつかない。もし両機を併用するのならペンタ部にシールを貼るとか、ストラップで区別するなどの工夫が必要だろう。

 おさらいがてらボディー周りを見ていこう。やはりAPS-Cにしては大柄のボディーではあるが、そのぶんグリップも大きめ。個人的にはもう少し細身の方がありがたいが、それでも安定して構えられることができる。

 上面には撮影情報を一目で確認できる液晶パネルを備え、表示項目のカスタマイズができるのも親切。シャッターボタン脇のボタン類は、指先の感覚だけで機能を判別できるよう、それぞれ大きさを変えてあるのも気が利いている。

サイズはもちろん、重量も「X-H2S」と同じで136.3(W)× 92.9(H)×84.6(D)mm。撮影時重量は660g。「X-H2S」にあった右上部のSのロゴが無い。

上面の右肩には液晶パネルやボタン類。左肩にはモードダイヤルが配置されている。

上面の液晶パネルに表示する項目を変更できるのは珍しい

上面右側のボタン類は大きさ違い、ファインダーを覗きながらでも指先の感触で確認することができる。

 背面の操作ボタン類は少し小さめだが、「フォーカスセレクター」は構えたときに自然と親指の位置に配置され使いやすい。各種設定を呼び出せる「Q」メニューやFnボタンになっている十字のセレクターボタンなどカスタマイズ性も高い。バリアングルの液晶ディスプレーは相変わらずメニュー画面でのタッチ操作に非対応で、ここは改善して欲しいところだ。

当然背面操作系の配置もまったく同じ。ただロゴがあるので、かろうじて区別は付けられる。

測距点の移動をおこなう「フォーカスセレクター」。抜群の位置に配置されている。

メニューやFnボタンは、自分好みの操作ができるようにカスタマイズするのがオススメ。

 576万ドットの高精細に35ミリ換算0.8倍と倍率も高いEVFや、SDとCFexpressのディアルスロット。Type A のHDMIやストロボのシンクロターミナルなどの端子類も共通だ。

 ただし「X-H2S」では電子シャッターでも1/125秒以下なら同調したが、「X-H2」は電子シャッターではストロボが発光しなかった。余談だが「ピクセルシフトマルチショット」(機能の詳細は後述)だと電子シャッターなのに1/25秒以下でストロボ同調ができる。このあたりはちょっと謎な仕様だ。

メディアはSD UHS-Ⅱ対応のSDとCFexpressのデュアルスロット

左側面の端子類。これ以外に前面左にシンクロターミナル。右側面上部にリモートレリーズ端子を備える。

 バッテリーは本体のUSBで充電するACアダプターが付属し充電器は別売になる。アクセサリーとして2個同時に充電できる「BC-W235」(8280円)が用意されている。撮影可能枚数の公称値は「X-H2S」の580枚から540枚へと少し減っているが、プリ連写など電力消費が激しい撮影をしなければRAW+JPEGで600枚以上撮影することができた。「X-H2S」と比べてもスタミナ不足を感じることは無い。

バッテリーは「GFX100S / 50S II」や「X-T4」とも共通で、ユーザーなら使い回せるがうれしい。

「ピクセルシフトマルチショット」で1.6憶画素撮影
デジタルテレコンも高画素のおかげ

 画質面だがAPS-C機の4020万画素はフルサイズなら約9000万画素超の集積度になる。撮った写真を見ると少しのピントのズレや、レンズ描写の乱れが気になることがあった。

 レンズに関してはメーカーが推奨レンズを公開していて、今回試用したキットレンズの「XF16-80mmF4 R OIS WR」は含まれていない。画質を最大限に引き出したいのならレンズの選択は重要かもしれない。とはいえキットレンズでも拡大したときの細部の解像感の高さは伝わるので、トリミング耐性など高画素ならではの実用性は実感できる。

無機質な被写体だけにキレのある解像感がわかりやすい。焦点距離80ミリ・絞りF8・シャッタースピード1/220秒・ISO200・ホワイトバランスオート。

拡大して見ると驚くほど細部が精細に写っている。焦点距離80ミリ・絞りF8・シャッタースピード1/170秒・ISO125・ホワイトバランスオート。

中心部の解像感は高いが、周辺部などでは少し描写の甘さが見える。焦点距離16ミリ・絞りF8・シャッタースピード1/300 秒・ISO125・ホワイトバランスオート。

絞り開放の近接撮影。水滴にピントを合わせたつもりが微妙に後ピンになってしまった。焦点距離80ミリ・絞りF8・シャッタースピード1/350 秒・ISO200・ホワイトバランスオート。

逆光での撮影だが明暗部の調子も残り階調も広い。ただ高画素だけにF16程度から回折現象の影響がある。焦点距離16ミリ・絞りF16・シャッタースピード1/1250 秒・ISO800・ホワイトバランスオート。

 さらに撮像素子をずらしながら連続して撮影した20枚の画像を合成し、1億6000万画素の画像を生成する「ピクセルシフトマルチショット」機能も搭載。撮影時には三脚でしっかりと固定し、合成にはPCの専用ソフトで処理が必要と手間はかかるが、より高解像度を求める人なら試してみるといいだろう。

「ピクセルシフトマルチショット」で撮影した1億6000万画素の画像。草木が揺れ不自然なピクセルが見えるのは御愛嬌。焦点距離16ミリ・絞りF8・シャッタースピード1/250 秒・ISO125・ホワイトバランスオート。

こちらは通常撮影したもの。

 高画素を活かした「デジタルテレコンバーター」も新搭載。画像をトリミングすることで1.4倍(2000万画素相当)と2倍(1000万画素相当)の望遠撮影ができる。JPEG画像にのみ適応されるので、同時記録したRAWにはトリミング前の画像が保存される。拡大補完するデジタルズームと違い、解像度は下がるが画質劣化は無いのがメリットだ。

以下「デジタルテレコンバーター」の画角の違い。標準ズームでも手軽に望遠撮影ができるのは便利だ。

「デジタルテレコンバーター」1.4倍

「デジタルテレコンバーター」2倍

低感度と高感度も画質は良好 手ブレ補正7段分がうれしい

 感度は低感度側が「X-H2S」のISO160(拡張でISO80)からISO125(拡張でISO64)と、低く設定できるようになった。わずか1/3EVではあるが、それでも屋外で大口径レンズを使用するときなど活躍しれくれそうだ。

 高感度側は常用でISO12800、拡張でISO51200と変わらない。画質をみるとISO3200を超えたあたりから画質劣化を感じ、ノイズ処理も強めで、ISO6400くらいでも解像感の低下が気になる。ただRAWの画像でみると、常用ISO12800までは粒の揃ったノイズなので処理がしやすく、解像感を重視するならRAW現像のほうが良い結果が得られる。

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