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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第199回

ミャンマーの独自SNSが示唆する暗い未来

2022年10月03日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 テレビなど、主要なメディアで大きく取り上げられることは減ってきたが、ミャンマーの情勢は悪化し続けている。

 国連児童基金(UNICEF)の発表によれば、2022年9月19日には、ミャンマー北西部のザガイン管区で学校を含む地域が空爆され、少なくとも子ども11人が死亡し、15人の行方がわからなくなった。

 注目したいのは、ミャンマーをめぐるFacebookをはじめとしたSNSの動向だ。

 Facebookは、国軍に抵抗を試みる人たちが情報を共有する貴重なプラットフォームである一方、国軍が政権を掌握する前には、少数民族ロヒンギャに対する迫害の引き金にもなった。

 SNSの正と負の両側面がむき出しになっている状況の中で、ミャンマー国軍は8月17日、Facebookを完全に遮断し、Facebookに代わる独自のSNSプラットフォームを開発する考えを示したという。

激しさを増す衝突

 ミャンマーで国軍によるクーデターが起きたのは、2021年2月のことだ。

 ミャンマー国軍はクーデター以降、抗議運動の参加者や各地の武装勢力との武力衝突や攻撃を繰り返してきた。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、9月12日現在で、約98万6500人がミャンマー国内で避難者となり、約4万7200人が国外に逃れているという。

 2021年2月以降の死者数は不明だが、複数の報道を総合すると、少なくとも数千人が戦闘や空爆などで死亡したとみられている。

 9月23日のニューヨーク・タイムズは、今回の学校への空爆前にも約380人の子どもたちが死亡したと報じている。

 抗議運動の参加者や、報道への弾圧も強まっている。

 7月末にミャンマー国軍に拘束されたドキュメンタリー作家の久保田徹さん(26)は、いまだに解放の見通しが立たない。

抵抗のツールはSNS

 力による国軍の支配に抵抗するうえで、もっとも有力なツールとなったのは、SNSだった。

 さまざまな統計情報を公開しているウェブサービスstatcounterに、ミャンマー国内のソーシャルメディアのシェアが掲載されている。

 同サイトによれば、同国ではFacebookが圧倒的に人気で、シェアは86.88%にのぼる。

 クーデター発生後間もなく、Facebookをはじめとしたソーシャルメディアを駆使して、抵抗の先頭に立ったのは、1990年代後半以降に生まれたZ世代と呼ばれる若者たちだった。

 『アジア動向年報』(2022年)に掲載された、長田紀之「2021年のミャンマー 軍クーデタの発生と複合危機の進行」は、Z世代による抵抗を次のように紹介している。

 「総人口の約4分の1を占めるこの世代は、民政移管後の自由な環境下で育ったが、思い描いていた将来像をクーデタで潰された。彼/彼女らは,同国初のデジタル・ネイティブ世代でもあり,情報収集や互いの連携のために携帯電話,SNS,インターネットを駆使し、奇抜な衣装や機知に富むメッセージの図像をネット上に拡散することで国際社会の注意を引く戦略も採られた」

 Facebook上の「Myanmar Protest」というアカウントを見ると、レオ・レオニの絵本『スイミー』のように、小魚が群れをなして、サメを食べようとする画像が掲載されていた。

国軍は、独自SNSの開発を打ち出す

 こうした動きに神経を尖らせた軍政側は、頻繁にインターネットを遮断したり、Facebookへのアクセスを制限したりといった対抗措置を取ってきた。

 こうした措置に対しては、VPN(バーチャルプライベートネットワーク)を用いる方法もあるが、今年1月にはVPN接続も禁止されている。

 8月に新しい措置として打ち出されたのは、ミャンマー国軍による独自SNSの開発だ。国軍に、こうした方針を裏付けるだけの技術力があるのかどうかは不明だ。

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