高級ブランドのメタバースやNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)に関連する動きが続いている。
GUCCI、PRADA、LOUIS VUITTON、Burberry……。
ニュースになったブランドを見ると、とても高級そうな名前が並んでいる。
各種の報道や公表資料から各社の狙いを推測すると、たしかにメタバースやNFTは、高級ブランドと相性が良さそうだ。
背景は、やはりコロナ禍の長期化とテレワークの広がりだろう。
リアルに人に会う機会が減れば、高級なブランド品の需要も減る。
リアルで売り上げを伸ばすのが難しければ、仮想空間で需要を創出したいというのが、各社に共通する考えではないか。
さらに、コロナ禍でオンライン通販がさらに普及したことで、ブランド品が本物かどうかを証明する手段へのニーズも高まっているはずだ。
ルイ・ヴィトンのゲームとNFT
LOUIS VUITTONがつくったスマホゲームがある。
ブランドの創業者ルイ・ヴィトンの生誕200年を記念して、2021年8月にリリースした「Louis: The Game」というアドベンチャーゲームだ。
プレイヤーは「ヴィヴィエンヌ」というキャラクターを操り、架空の世界を旅する。ヴィヴィエンヌの「着せ替え」ができる機能もある。
iPhoneやAndroidのアプリストアで無料でダウンロードできる。
いまのところ英語と中国語に対応していて、日本語は対応していないが、ゲーム内に広がる世界のデザインはさすがに美しい。
2022年4月15日には、このゲームに新たに2章を追加するメジャーアップデートも発表されている。
アップデート項目の一つに盛り込まれているのが、NFTの活用だ。ゲーム内にあるNFTアート10種類を、抽選でプレーヤーに贈るという。
このゲームのNFTアートには、アーティストのBeepleも参加している。このアーティストによるNFTアートが昨年3月、オークションで約75億円で落札されたことでも話題を呼んだ。
グッチのNFTアートカスタマイズサービス
より具体的な動きが目立つのは、GUCCIだ。
2021年2月には、デジタルアートやフィギュアなどの制作を手掛けるSUPERPLASTICと組み、NFT作品を発売している。両者による新しいブランドの名前は、SUPERGUCCIだ。
SUPERGUCCIが発売したNFTアートは、白い小動物のぬいぐるみのようなキャラクターで、花のパターンがついている。
NFTアートには、セラミック製のリアルのフィギュアもついてくるという仕掛けだ。
probably nothing... #superguccihttps://t.co/01lpziCTND
— SUPERPLASTIC (@superplastic) January 18, 2022
NFTアートのオークションサイトOpenSeaには、すでに多数のSUPERGUCCIの作品が出品されている。7000米ドル(約90万円)台で取引されている作品が多いようだ。
GUCCIは2022年3月末に、新しいNFT関連のサービスを発表している。
メタバース上で使う、プロフィール写真のカスタマイズサービスだ。
話は若干ややこしくなるが「Bored Ape Yacht Club」というNFTのキャラクターがある。
直訳すると「退屈した類人猿のヨットクラブ」とでもなるだろうか。NFT界隈で注目を集める類人猿のキャラクターだ。
GUCCIが始めたのは、このBored Apeのカスタマイズサービスだ。
Bored ApeのNFTアートを買った人がGUCCIにカスタマイズを依頼すると、たとえばBored ApeがGUCCIのテンガロンハットをかぶり、ピンクのアロハシャツを身に着けたりするというサービスだ。
カスタマイズされた類人猿のアートには、NFTの証明書がつくため、「自分だけ」のカスタマイズ作品ということになる。
そしてユーザーは、このNFTアートをメタバースやTwitterなどで自分のプロフィール写真として使うこともできる。
OpenSeaでは、カスタマイズ済みのBored Apeも売られている。価格を確認すると、数万円台のものもある。
手の届く価格でカスタマイズされた作品を手に入れられるのはいまのうちかもしれない。
仮想とリアルの融合
この連載の記事
- 第315回 暗号資産(仮想通貨)の税金、55%→20%になるか 与党が税制見直し検討も、財務省は前向きとは言えず
- 第314回 SNSの“ウソ”選挙結果に影響か 公選法改正議論が本格化へ
- 第313回 アマゾンに公取委が“ガサ入れ” 調査の進め方に大きな変化
- 第312回 豪州で16歳未満のSNS禁止 ザル法かもしれないが…
- 第311回 政府、次世代電池に1778億円 「全固体」実現性には疑問も
- 第310回 先端半導体、政府がさらに10兆円。大博打の勝算は
- 第309回 トランプ2.0で、AIブームに拍車?
- 第308回 自動運転:トヨタとNTTが本格協業、日本はゆっくりした動き
- 第307回 総選挙で“ベンチャー政党”が躍進 ネット戦略奏功
- 第306回 IT大手の原発投資相次ぐ AIで電力需要が爆増
- この連載の一覧へ