ロシア軍によるウクライナ侵攻が続く中、仮想通貨(暗号資産)が存在感を高めている。
ウクライナとロシアでは、それぞれの事情で、海外からの送金を受け取ることが難しくなっている状況が背景にある。
ウクライナでは、通信ネットワークが破壊され、銀行を通じて海外からの送金を受け取るのに障害が生じているという。
このため、仮想通貨やNFT(Non-fungible Token、非代替性トークン)を使って、ウクライナを支援する動きが活発になっている。
一方、ロシアでは、主要銀行が決済ネットワークSWIFT(国際銀行間通信協会)から締め出されたため、同国の富裕層が仮想通貨を使って、資金の移動を試みていると報じられている。
国境を越えて瞬時に資金を移動できる仮想通貨をめぐって、これまでにもプラスとマイナスの面が指摘されてきたが、ウクライナ戦争下でその正負の両面が浮き彫りになっている。
ロシアの富裕層、暗号資産で制裁逃れ?
日米欧各国は、ウクライナへの本格侵攻を受けて、銀行や政府機関だけでなく、個人に対しても資産を凍結する経済制裁に踏み切っている。
日本の財務省が公表している制裁対象者のリストには、プーチン大統領やラヴロフ外相だけでなく、プーチン政権と関係が深いとされる企業経営者らの名前が掲載されている。
資産凍結の対象になると、その人が保有する口座の送金、着金などの取引が許可制になり、事実上資産が動かせなくなる。
こうした措置に対して、少なくとも個人レベルでは、仮想通貨を使った制裁逃れと見られる動きが報じられている。
2022年3月11日のロイターによれば、UAE(アラブ首長国連邦)の仮想通貨取引所には、ロシアの富裕層とみられる依頼者から、ビットコインなどの仮想通貨の現金化についての問い合わせが続いているという。
この記事によれば、スイスの銀行に口座を保有するロシア人の富裕層が、仲介業者を通じて、UAEの仮想通貨取引所に対して、数十億米ドル規模の仮想通貨の現金化を試みているという。
スイスの銀行に保有する資産が凍結された場合、ロシアの富裕層はスイスから資金を動かせなくなる。
こうした措置に備え、仮想通貨で直接UAEの不動産を購入する動きもあるという。
日本の金融庁は3月14日に、国内の暗号資産交換業者(仮想通貨取引所)に対して、資産凍結対象者のアドレスであると判断できる場合は、暗号資産の移転を行わないよう要請している。
日本以外の米欧各国政府も仮想通貨取引所に対して、同様の要請を出しているが、こうした制裁は、必ず抜け道ができる。スイスの銀行とUAEの不動産をめぐる動きは、すでに抜け道が作り出されている可能性を示すものと言えるだろう。
透明性でどこまで対抗できるか
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