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ASCII Power Review 第220回

真鍮ダイヤルも心地いいです

ニコン「Zf」実写レビュー = クラシックカメラなのに最新機能満載だ!

2023年09月23日 10時00分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 ニコンからクラシカルなデザインのフルサイズミラーレス「Zf」が発表された。ボディ価格は約30万円で10月発売予定。

 2021年にAPS-Cミラーレス「Zfc」が発売されたときから、いつかはフルサイズも、とニコンファンには熱望されていた。デザインは銀塩時代の名機「FM/FE」シリーズを継承。同様のコンセプトとしては2013年のデジタル一眼レフ「Df」が始まりで、当時のフラッグシップ「D4」の撮像素子が搭載され、古くからのカメラマニアを中心に注目された。

 一方「Zfc」はお手頃な価格でカジュアルにレトロ感が楽しめるということで、当時を知らない若いユーザーも含めてヒット製品になった。

 そして今回登場する「Zf」。スペックから推測するとベースとなっているのは「Z6Ⅱ」と思われる。果たしてどんなカメラに仕上がっているのか興味深々だ。

ついにフルサイズセンサー搭載
ダイヤルには真鍮を使うコダワリ

 丸み帯びた今時のデザインとは違い、「Zf」はペンタ部の直線的な形状などが特徴的。メーカーロゴも現在の斜体ではなく昔ながらの直立体を採用している。ボディーカラーはブラックのみ。「Zfc」が当初シルバーのみで、後にブラックが登場したことから、「Zf」もいずれはシルバーボディーが登場する予感もする(個人の意見です)。

ニコン「Zf」実写レビュー

量販店価格はボディーのみ29万9200円。「Z40mmF2 SE」とのレンズキットは33万1100円。10月中発売予定で絶賛予約受付中だ。

 正面から見たサイズ感がAPS-Cの「Zfc」の134.5×93.5ミリより大きいのは当然だが、ベース機の「Z6Ⅱ」の134×100.5ミリよりもわずかに大きい。ただ、奥行は「Z6Ⅱ」の69.5ミリに対し49ミリとスリムなので、そのぶん小柄に感じる。

ニコン「Zf」実写レビュー

ボディーサイズは144×103×49ミリ。重量はメディアとバッテリー込みで710グラム。

ニコン「Zf」実写レビュー

手にするとスリムの感じるボディー。アナログのダイヤルが並びレトロ感がある。

 「Zfc」ではフラットだったボディー前面には、小振りながらグリップを備えている。とはいえ「Z6Ⅱ」のグリップに比べると心許ないので、ホールド感を重視するなら別売の外付グリップ「Z f-GR1」(1万8700円)の使用がオススメだ。

ニコン「Zf」実写レビュー

グリップの形状が「Df」を彷彿させ、ユーザーにとっては懐かしく感じる。

 上面や背面の操作系は「Zfc」と同等だが、シャッタースピードに露出補正、ISO感度のダイヤルには真鍮を採用し、触れてみると金属の質感が心地よい。しっかりとしたクリック感や塗装の美しさもあわせ高級感がある。

ニコン「Zf」実写レビュー

背面の操作系は「Zfc」と同等の配置。「Z6Ⅱ」では搭載している「サブセレクター」は省かれている。

ニコン「Zf」実写レビュー

真鍮を採用したダイヤル類や、光の反射が美しい光沢のある塗装が高級感を高めている。

 またシャッタースピードダイヤル下部に配置された「静止画/動画セレクター」にはB&Wモードが追加された。瞬時に切り替えできるので、これを機にモノクロ写真を楽しんでもみるのもいいかもしれない。

ニコン「Zf」実写レビュー

「静止画/動画セレクター」のスイッチひとつで、即座にモノクロ写真が楽しめる。

ニコン「Zf」実写レビュー

風鈴の色味に惹かれ撮影したが、モノクロも撮ってみると光の陰影が奥行を感じさせ、同じシーンでも異なった印象の写真になった。F2・1/500秒・ISO100・ホワイトバランスオート。(以下作例も使用レンズは「Z40mmF2 SE」)

 なおシャッターボタンにはネジ穴が切ってあるが、ソフトシャッター用らしく、昔ながらのケーブルレリーズは使用できない・・・ちょっと残念。

ニコン「Zf」実写レビュー

ダメもとで試しにシャッターボタンにケーブルレリーズを装着してみたが、やっぱりダメだった。

フルサイズミラーレスでは初
マイクロSDカードスロットを搭載

 EVFは369万ドット倍率0.8倍と「Z6Ⅱ」と同じ。クリアな光学系で相変わらず視認性は良い。

 背面液晶も3.2型210万ドットと同じだが、可動方式がチルト式から「Zfc」と同様のバリアングル式に変更された。

ニコン「Zf」実写レビュー

背面液晶の可動方式はバリアングル式に。カメラマニアにはチルト式支持者も多いが、可動域の面ではバリアングル式のほうが有利。

 側面端子は「Z6Ⅱ」には装備されていたアクセサリーターミナルが省かれ、リモート撮影用のコードやコントローラーは使用できない。そのためリモート撮影をするにはBluetooth接続のリモコン「ML-L7」(3530円)か、スマホアプリからの操作になる。

ニコン「Zf」実写レビュー

側面の端子類。上部にUSB-C、下部はヘットフォンとマイク、マイクロHDMIが配置。

 バッテリーは「Z6Ⅱ」と同じ「EN-EL15c」で、公称の撮影可能枚数は約410コマ。ユニークなのがメディアで、SD(UHS-Ⅱ)とマイクロSD(UHS-Ⅰ)のディアルスロットを採用。

 ボディーサイズを抑えつつ同時記録の安全性が保たれる。マイクロSDスロット搭載のノートPCも増える中、ぜひ今後スタンダードになって欲しい機能だ。

ニコン「Zf」実写レビュー

「Z9」以外のフルサイズ機はすべて共通のバッテリー。バッテリー室のカバーが少し安っぽい(実は「Df」もそうだった!)のが惜しい。

ニコン「Zf」実写レビュー

メディアスロットはバッテリーと同室。見た目は窮屈だが、マイクロSDの出し入れもスムーズにおこなえた。

最上位モデル「Z9」の最新機能も搭載
世界初の「フォーカスポイントVR」

 撮像素子は2450万画素と「Z6Ⅱ」と同じだが、「被写体検出AF」や「3-DトラッキングAF」、画質はJPEGのNORMALになるがプリチャプチャーに対応した秒30コマの高速連写など、フラッグシップモデル「Z9」の機能の一部が搭載されている。

 なにより個人的には従来の「Z」シリーズで不満だった、撮影後のプレビューの遅さやAF-Cで合焦表示できない点が解消されているのも大きい。

ニコン「Zf」実写レビュー

「Z9」から採用されている「被写体検出」機能。被写体を問わないオートが選べるのは便利。

 またニコンで初めて搭載されたのが「ピクセルシフト撮影」。撮像素子をずらして撮影した画像を合成し、解像感や画素数を向上させる他メーカーではお馴染み機能だ。三脚固定や専用ソフト(現状まだ対応していなので実際には試せていない)での処理が必要になる。

ニコン「Zf」実写レビュー

「ピクセルシフト撮影」の効果は撮影枚数で異なり、4枚と8枚ではRGB各色の情報を取得し解像感を向上、16枚と32枚ではさらに9600万画素の高解像度での記録が可能になる。

 ただ高画素機に搭載されることが多い機能なので、「Zf」という製品の性格を考えると少し不自然。ということは・・・・今後しかも近いうちに発表されるZシリーズの高画素機に搭載される機能を、一足早くお披露目したのでは推測してしまう。楽しみに待つことにしよう。

 実際に撮影した写真を見ると、画質も「Z6Ⅱ」と同等という印象。メリハリのある発色やコントラストの絵作りで、細部の解像感も高い。

ニコン「Zf」実写レビュー

色乗りがよくクリアな発色。拡大しても細部は精細に解像されている。F5.6・1/500秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

ニコン「Zf」実写レビュー

F2・1/1600秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

ニコン「Zf」実写レビュー

F2・1/200秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

ニコン「Zf」実写レビュー

F2・1/2500秒・ISO100・ホワイトバランスオート。

 高感度はISO6400まではノイズレスで、ISO25600でも画質劣化は少ない。常用の最高感度は「Z6Ⅱ」のISO51200からISO64000へ引き上げられているが、この1/3EVの違いでも劣化度には差が見える。実質高感度画質も「Z6Ⅱ」と同等と言えるだろう

ニコン「Zf」実写レビュー

感度別の撮影した写真の一部を拡大して比較。左上からISO3200・ISO6400・ISO12800・ISO24800・ISO51200・ISO64000・以下拡張感度ISO102400・ISO204800。ノイズ処理標準。

ニコン「Zf」実写レビュー

F2・1/200秒・ISO1600・ホワイトバランスオート。

 手ブレ補正の効果は約8段で、さらに測距点付近のブレを抑制する「フォーカスポイントVR」も搭載。ただ実際に試したところ試作機だったからか、もしくはレンズによるのか、はたまた自身の油断したせいか、「Z40mmF2 SE」の場合、遠景なら1/5秒程度、近景だと1/10秒くらいが安全と言った感じだった。

ニコン「Zf」実写レビュー

1/5秒で遠景を撮影。一応ブレてないようだ。F4・1/5秒・ISO3200・ホワイトバランスオート。

ニコン「Zf」実写レビュー

被写体までの距離は多分2メートルくらい。1/10秒。これ以上遅いとブレる確率が高い。F11・1/10秒・ISO12800・ホワイトバランスオート。

ニコン「Zf」実写レビュー

F5.6・1/30秒・ISO12800・ホワイトバランスオート。

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