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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第67回

日本の「空飛ぶクルマ」3年後に実現か

2020年03月23日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 政府が、空飛ぶクルマの検討を進めている。

 検討の場となっているのは、経済産業省と国土交通省が事務局を務める「空の移動革命に向けた官民協議会」という会議だ。

 この協議会では、電動で垂直に離着陸する無人機を「空飛ぶクルマ」と想定している。

 協議会が目指すのは、空飛ぶクルマが人や物の輸送手段として普及するために必要な制度の整備や技術開発について、民間企業と関係省庁が議論を交わすことだ。

 空飛ぶクルアが行き交う社会ははるか先の未来にも思えるが、そうでもない。

 協議会で示されたロードマップ(行程表)には、2023年に事業を始め、2030年代の本格普及が目標だと明記されている。

●日本発の空飛ぶクルマ

 空飛ぶクルマで高い注目を集めるスタートアップ企業が、日本にある。愛知県豊田市を拠点に開発を進める「SkyDrive」(スカイドライブ)社だ。

 開発中のコンセプトモデル「SD-XX」は2人乗りで、電気で動く。通常の四輪車の場合、車輪がついているところに、プロペラが設置されている。

 同社が示す空飛ぶクルマのある社会では、乗用車と同じように、駐車場に空飛ぶクルマが駐機されている。

 飛行が認められていないエリアは従来の車両と同じように道路を移動し、飛行が認められているエリアでは上空を飛ぶ、という未来図だ。

 すでに開発をめぐる競争は始まっている。現時点ではSkyDriveを含む日本、中国、ドイツなどの企業が競い合う構図になっているという。

●ビジネスの機会は広がる?

 すでにさまざまな企業が、空飛ぶクルマの実現を想定した検討を始めている。3月17日に開かれた5回目の官民協議会では、企業や自治体が実現を目指すビジネスモデルを発表した。

 三重県は、過疎化や高齢化が進む離島の課題解決に空飛ぶクルマを活用する考えだ。

 インターネットを通じて、医師が遠隔診療で処方箋を出し、無人機で薬を届けるといったモデルだ。

 64回目の本連載「時速100kmのドローンがルワンダの空を飛ぶ」でも紹介したが、東アフリカのルワンダでは、ドローンを使った血液や医薬品の配送網が実用段階に入っている。

 三重県は、空飛ぶクルマを活用しやすいビジネス環境の整備を進めていくという。

 ANA(全日本空輸)は、2025年に大阪万博が開かれる際に、空港と会場を結ぶ「エアタクシー」の提供を目指すとしている。

 想定する顧客層は、おもに富裕層。4人乗り以上のeVTOL(電動垂直離着陸機)で、関西空港や神戸空港から万博会場まで来場者を輸送するという。

 ただ、自律飛行を予定しているが、パイロットを同乗させる可能性もあるという。

●課題は膨大にあるが

 具体的なビジネスプランも登場しているが、eVTOLが行き交う社会の実現には、たくさんの課題をクリアする必要がある。

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