アフリカのルワンダで1994年に起きた大虐殺では、80〜100万人が犠牲になったとされる。
現代史に深い傷跡を残したルワンダ虐殺から26年が経過し、「ICT立国」を掲げる同国は、世界の注目を集めている。
米国や英国からは、テクノロジーで保健分野の社会課題の解決を目指す有力スタートアップがルワンダで事業展開を進め、日本の楽天やDMMなども本格進出を視野に種をまいている。
神戸市は、日本の若者たちの起業家精神を育むプログラム「KOBE STARTUP AFRICA」を2019年からルワンダで実施している。
2020年2月下旬〜3月上旬に開かれた2回目のプログラムに同行した。
●ルワンダの「ユニコーン」
ほとんど音もなく、ドローンが飛んできた。
大きな音がしたのは、空中にはられた一本のヒモにドローンをひっかける着陸のときだけだ。血液や医薬品を空輸するZipline社のドローンだ。
着陸の瞬間、プログラムの参加者14人から、歓声が上がった。
ドローンの名を聞くと、ついヘリコプターのような回転翼を思い浮かべるが、同社の機体は、固定翼だ。同社の説明によれば、電気を動力とするドローンは、時速約100キロで飛ぶ。
機体は、若干大ざっぱだが、大人が両腕を広げたくらいの大きさをイメージしていただきたい。
米国の有力スタートアップとして知られる同社は、2016年にルワンダの首都キガリの近郊に「配送センター」を建て、血液の空輸を始めた。
自律飛行するドローンは、ルワンダの地方にある医療機関の上空から、紙製のパラシュートをつけた箱を落とす。1日に平均で30回ほど空輸の要請があるという。
●規制緩和で企業誘致
サハラ砂漠の南にあるアフリカの国々は、いずれも血液や医薬品の配送に大きな課題を抱えている。
その中で同社が事業地としてルワンダを選択した背景には、ルワンダ政府の政策がある。
血液や医薬品の空輸となると、医療や航空分野のさまざまな規制が影響するが、ルワンダ政府は、先進的な事業に取り組む企業に対して規制を緩和することで進出を促している。
ルワンダがテック企業の誘致や育成に取り組む理由としては、同国の環境が挙げられる。

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