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個人のデータが、企業間で取引される流れが本格化しようとしている。
政府と産業界が構想してきたのは、個人のデータの管理を「情報銀行」が代行し、個人の希望に応じて「データ取引市場」で売買される枠組みだ。
IT企業や電機メーカー、金融機関、広告会社などが組織する「一般社団法人データ流通推進協議会」(DTA)の資料によれば、希少性の高いデータには高い値段がつき、そうでないデータにはそれなりの値段がつくようだ。
おおまかに日本IT団体連盟(IT連)が情報銀行を認定、DTAがデータ取引市場を認定し、認定を受けた企業間で、情報が流通する。
個人のデータが流通する以上、安全性が最優先されるべきだが、多くの課題を抱えているのが現状だ。
●パーソナルデータと個人情報は違う
まず、取引の対象となる「パーソナルデータ」と個人情報の違いを整理したい。
2017年の『情報通信白書』は、「パーソナルデータ」を次のように定義している。
「個人の属性情報、移動・行動・購買履歴、ウェアラブル機器から収集された個人情報を含む」
個人が特定できないようにした「匿名加工情報」も、パーソナルデータに含まれる。
一方で、個人情報は、住所や生年月日など、個人の特定につながる情報だ。個人情報もパーソナルデータという広い概念に含まれるが、個人情報に関しては「個人情報保護法」で保護されている。
ネットのサービスを利用するときに住所や生年月日などの個人情報を入力することがあるが、これがそのまま取引されるわけではない。
個人の購買履歴や位置情報など、さまざまなデータが企業に貯まるが、個人は、こうしたデータを情報銀行に預けて管理してもらう。
その上で、個人が特定できないよう「40代男性の直近1ヵ月の位置情報」など匿名化してデータ取引市場で売買する構想だ。
●市場を通じた「活発な取引」を想定
情報銀行と取引市場の連携をめぐるDTAの資料によれば、情報銀行が取引市場を活用することで、データを提供する先と、データを収集する先の拡大につなげる効果が期待されているようだ。
つまり、市場を通じてより多くのパーソナルデータを集め、市場を通じてより多くの顧客に売るという構想だ。
「自分の情報はどんどん使っていいよ」という個人にとっては、さまざまな提供先にデータを提供して、対価を得たり、優先的にサービスを受けたりといったメリットは得られる。
同じ資料で課題についても紹介している。
特に懸念されるのは、情報銀行から市場を通じてデータを受け取った企業が、別の企業(第三者)に勝手に情報を流すなどの不正をどう防ぐかだろう。

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